スポーツツーリズムとは、スポーツの観戦・参加・関連施設の訪問を目的とした旅行形態です。国内スポーツイベントの増加とインバウンド観光の拡大を背景に、旅行業界での需要が高まっています。スポーツ観戦ツアーや大会参加ツアーを催行するには、旅行業法に基づく旅行業登録と各営業所への旅行業務取扱管理者の選任が必要であるため、資格保有者の需要も拡大しています。本記事では、スポーツツーリズム分野でのキャリアパス、旅行業務取扱管理者試験との接点、就職・転職を視野に入れた学習方法を体系的に解説します。

スポーツツーリズムとは?旅行業界が注目する観光の新形態
スポーツツーリズムの定義と3つの形態
スポーツツーリズムは、スポーツを主な目的または動機として行う旅行の総称であり、大きく「観戦型」「参加型」「施設訪問型」の3種類に分類されます。観戦型はプロ野球・Jリーグ・バスケットボール・ラグビーなどの試合観戦を目的とした旅行で、スタジアムへの入場と宿泊・交通を組み合わせたパッケージが主な商品となります。参加型はマラソン・トライアスロン・スキー・サーフィンなどのスポーツ大会や体験に実際に参加することを目的とした旅行であり、大会エントリー支援・遠征宿泊手配・送迎バス手配を一体提供するサービスが求められます。施設訪問型はスポーツ博物館・スタジアムツアー・合宿施設の見学など、スポーツ関連の観光資源を訪れる形態です。旅行業者はこれらを組み合わせた企画旅行や手配旅行として販売します。
旅行業法上のスポーツツーリズムの位置づけ
旅行業者がスポーツツアーを事業として販売するには、旅行業法に基づく旅行業登録が必要です。旅行業者が主体的に旅程を作成し、宿泊・交通・観戦チケットを組み合わせて販売する場合は「企画旅行(募集型または受注型)」として扱われ、標準旅行業約款が適用されます。旅行者の依頼を受けて交通・宿泊の手配のみを行う場合は「手配旅行」となり、旅行業者の責任範囲が異なります。スポーツイベントの現地手配を専門に担う事業者が旅行サービス手配業(ランドオペレーター)として旅行業法第6条の2に基づく登録を行うケースもあるため、取り扱う業務の範囲を旅行業法の定義に照らして整理することが重要です。
スポーツ庁の推進施策と旅行業界への影響
スポーツ庁は「スポーツツーリズム推進連絡会議」を設置し、スポーツを核にした地域活性化・インバウンド観光振興を国策として推進しています。政府の観光立国推進基本計画においてスポーツツーリズムは重点テーマの一つに位置づけられており、旅行会社にとって新たな市場機会となっています。地方自治体・DMO(観光地域づくり法人)との連携による着地型スポーツツーリズムも拡大しており、地域限定旅行業の活用も注目されています。訪日外国人向けのスポーツ体験プログラム・武道体験ツアー・Jリーグ観戦ツアーなど、インバウンド需要を取り込む新たなスポーツツアー商品の開発が活発になっています。
スポーツツーリズム分野の主な職種とキャリアパス
スポーツ観戦ツアー企画・手配スタッフ
総合旅行会社や中規模旅行会社のスポーツ・エンターテイメント部門では、プロ野球・Jリーグ・バスケットボール・ラグビーの観戦ツアーを企画・販売するスタッフを配置しています。球団・チームとの交渉、宿泊施設の一括手配、バスチャーターの手配、オプショナルツアーの組み込みなど、多岐にわたる業務が発生します。旅行業務取扱管理者(国内または総合)の資格保有者は、営業所の選任管理者候補として採用・昇進で優遇される傾向があります。未経験での入社の場合は、旅行会社のカウンタースタッフや手配スタッフとして経験を積んだうえでスポーツ部門へ異動するルートが一般的です。スポーツイベントは観客動員が多い繁忙期に業務量が集中するため、繁忙期管理のスキルも求められます。
マラソン・スポーツ大会参加ツアーの専門スタッフ
マラソン大会やトライアスロン大会への遠征を専門に扱う旅行会社では、大会エントリー支援・宿泊手配・送迎バス手配を一体提供するサービスを展開しています。東京マラソン・大阪マラソン・北海道マラソンなど主要大会では、旅行会社が宿泊・交通をパッケージ化したツアーを販売しており、専門知識を持つスタッフの需要が高まっています。海外のマラソン大会(ホノルルマラソン・ボストンマラソン等)への参加ツアーを扱う場合は、総合旅行業務取扱管理者資格が必要です。スタッフ自身がランナーやトライアスリートである場合、商品知識と顧客対応の両面で強みになります。チームスポーツの合宿手配・武道団体のツアー手配を専門とする会社では、宿泊施設の確保だけでなく練習会場の手配まで担当するため、地域の観光資源に関する知識も必要です。
プロスポーツチーム・スポーツ施設での旅行業務
Jリーグクラブやプロ野球球団が直接または子会社を通じてアウェー観戦ツアーやファンクラブ旅行を企画・催行するケースが増えています。チームが旅行業者として旅行業登録を行う場合、旅行業務取扱管理者の選任が法的要件となります。スキー場・ゴルフ場・スポーツ複合施設の運営会社が第3種旅行業または地域限定旅行業を取得し、施設利用と宿泊・交通を組み合わせたパッケージを販売する動きも見られます。施設スタッフとして就職したうえで旅行業務取扱管理者資格を取得し、旅行部門の立ち上げを担うキャリアパスも存在します。DMOが着地型スポーツツーリズムを地域の観光プログラムとして整備する場合も、旅行業務取扱管理者の知識を持つスタッフが役立ちます。
旅行業務取扱管理者資格がスポーツツーリズムで評価される理由
選任管理者としての法的役割
旅行業法は各営業所に旅行業務取扱管理者を1名以上選任することを義務づけています。選任管理者は旅行者への書面交付の確認、取引条件の説明管理、苦情処理対応、外務員証の管理などを担当します。スポーツイベントでは天候・試合・大会の中止や会場変更が発生しやすく、変更補償金の要否や旅行業者による解除権の行使に関する判断が求められます。旅行業務取扱管理者の知識を持つスタッフが在籍することで、こうした突発的な事態への対応を適切かつ迅速に行えます。資格保有者は法的コンプライアンスの観点からも企業に不可欠な存在として評価されます。
資格保有者が評価される就職・転職先
スポーツツーリズム分野で旅行業務取扱管理者資格が評価される主な就職・転職先を整理すると以下のとおりです。旅行業の登録を持つ企業では選任管理者の確保が法的要件であるため、資格保有者は採用・配置で優遇されます。
| 就職・転職先の種類 | 求める資格区分 | 主な業務内容 |
|---|---|---|
| 総合旅行会社スポーツ部門 | 総合または国内 | 国内外スポーツ観戦・参加ツアーの企画・販売 |
| スポーツ専門旅行会社 | 国内(海外対応なら総合) | マラソン・大会参加ツアーの企画・手配 |
| プロスポーツチーム関連会社 | 国内または地域限定 | ファンクラブ旅行・アウェー遠征ツアーの手配 |
| スキー場・ゴルフ場運営会社 | 地域限定または第3種旅行業 | 施設利用と宿泊・交通のパッケージ販売 |
| DMO・観光協会 | 国内(行政でも評価される) | 着地型スポーツツーリズムの企画・推進 |
| ランドオペレーター | 取り扱い業務に応じて取得 | 海外スポーツイベントの現地手配 |
スポーツツーリズムの実務で必要な旅行業法の知識
スポーツ観戦・参加ツアーの実務では、募集型企画旅行と受注型企画旅行の区別が重要です。チームや法人からの依頼を受けて旅程を設計する場合は受注型企画旅行となることが多く、旅行業者が旅程管理責任を負います。旅行日程の変更が生じた場合の変更補償金の対象・金額、旅行業者による解除権の行使要件なども実務で頻繁に問題になります。また、旅行業法第12条に基づく書面交付義務(旅行日程・旅行代金・取消料規定の明示)は、スポーツツアーでも厳密に遵守する必要があります。旅行業務取扱管理者試験で学ぶ「旅行業約款」の知識は、こうした実務場面に直接役立ちます。
旅行業務取扱管理者試験とスポーツツーリズムの出題接点
国内旅行実務:JR運賃・団体割引と遠征費用の計算
旅行業務取扱管理者試験の「国内旅行実務」では、JR旅客運賃の計算が重要な出題テーマです。スポーツ遠征ツアーでは団体旅客の利用が多く、JR団体割引(一般団体・学生団体等)の適用条件・割引率の計算が実務に直結します。試験では旅客運賃の基本計算に加え、特急料金・グリーン料金・指定席料金の加算方法も問われます。宿泊施設の料金計算(特別消費税・サービス料の取り扱い)も頻出であり、スポーツイベント繁忙期に旅行者へ正確な旅行代金を案内するうえで欠かせない知識です。貸切バスを使う遠征ツアーでは道路運送法の理解も必要になります。
宿泊約款と繁忙期キャンセルトラブルへの対応
スポーツイベントの開催期間中は宿泊施設の需要が集中し、直前キャンセルによる取消料トラブルが発生しやすくなります。旅行業務取扱管理者試験「約款」科目では、標準旅行業約款の取消料規定(旅行開始日の何日前に解除した場合に何%の取消料が発生するか)が出題されます。宿泊施設約款に基づく宿泊拒否事由・料金構成・旅行業者からの手配取り消しに関する規定も学習範囲に含まれます。スポーツイベントの中止・延期・会場変更があった場合の旅行業者による解除権(標準旅行業約款第16条相当)の行使要件を理解しておくことも実務上重要です。試験で学ぶ約款知識は、旅行者へのキャンセルポリシーの正確な説明に直接応用できます。
特別補償規程とスポーツ体験中の事故への対応
企画旅行に参加した旅行者が旅程中に身体的損害を受けた場合、標準旅行業約款の別紙「特別補償規程」が適用されます。旅行業務取扱管理者試験では特別補償規程の補償項目・補償金額・免責事由が頻出テーマです。スキーやマリンスポーツ、スタジアムへの移動中に起きた転倒など、スポーツ体験型ツアーでは一般の観光ツアーよりも事故リスクが高まる場面があります。特別補償が適用されるのは「旅行中」の事故であり、ホテルのチェックイン時から旅行終了時まであることを理解しておく必要があります。試験勉強を通じて習得した特別補償の知識は、スポーツツアー催行時のリスク管理と旅行者への説明責任の両面で直接役立ちます。
スポーツツーリズムへの転職・就職準備チェックリスト
資格取得前に揃えるスキルと経験
スポーツツーリズム分野での就職・転職を目指す場合、旅行業務取扱管理者資格の取得と並行して以下のスキルや経験を積んでおくと選考で有利になります。
- 旅行会社・ホテル・交通機関でのアルバイト・インターンシップ経験がある
- スポーツイベントの観客・参加者として遠征経験が豊富にある
- 英語またはその他の外国語でコミュニケーションができる(インバウンドスポーツツアー対応)
- SNSやデジタルマーケティングの基礎知識がある(スポーツツアーの集客に活用)
- スポーツイベントのボランティア・大会スタッフ経験がある
- 旅行業務取扱管理者試験の国内または総合区分に合格している
試験合格後のキャリアアップステップ
旅行業務取扱管理者資格を取得した後、スポーツツーリズム分野でキャリアを築くための段階的なステップは以下のとおりです。資格取得と並行して実務経験を積むことが、スポーツツーリズムの専門家としての市場価値を高めます。
- 国内旅行業務取扱管理者取得 → 国内スポーツツアー企画・手配スタッフとして就職
- 国内実務経験を積みながら科目免除制度を活用して総合試験にステップアップ
- 総合旅行業務取扱管理者取得 → 海外スポーツイベントツアー担当または部門リーダーへ
- 旅程管理主任者(添乗員資格)を取得してスポーツ遠征ツアーへの同行業務も担当
- 管理職・選任管理者として営業所の運営を担う
- 独立して着地型スポーツツーリズムを専門とする旅行会社を設立(第3種または地域限定旅行業登録)
試験区分の選び方と通信講座活用ポイント
国内か総合か:目指す職種で選ぶ試験区分
スポーツツーリズムを扱う旅行会社への就職を考える場合、国内ツアーを中心とする企業では国内旅行業務取扱管理者資格、海外スポーツイベント(海外マラソン・海外観戦ツアー等)も扱う場合は総合旅行業務取扱管理者資格が必要です。まず国内旅行業務取扱管理者試験に合格し、科目免除制度を活用して総合試験にステップアップするルートが多くの受験者に選ばれています。令和8年度の試験日程(2026年8月時点)は、国内が2026年9月3日(木)から25日(金)の期間から受験者が日時を選択するCBT方式(全国47都道府県のテストセンターで受験)、総合が2026年10月25日(日)のマークシート方式・指定会場試験です。令和7年度の合格率は国内が34.1%(全科目・ANTA実施結果)、総合が26.1%(JATA実施結果)でした。
スポーツシーズンと試験日程の両立
スポーツツーリズム関連の職場は夏季から秋季にかけて繁忙期を迎えることが多く、旅行業務取扱管理者試験の受験準備と業務の両立が課題となります。国内試験はCBT方式のため、テストセンターの予約可能日から自分の都合に合わせて受験日を選択できます。遠征先の都市でも全国47都道府県のテストセンターで受験できるため、繁忙期でも学習・受験スケジュールを調整しやすい利点があります。国内試験の受験手数料は8,000円(非課税)+システム利用料660円(税込)、総合試験は13,000円(非課税)+システム利用料660円(税込)です(2026年8月時点・令和8年度全国旅行業協会および日本旅行業協会公表の受験案内)。通信講座を活用することで、移動時間・業務の合間にスマートフォンで学習を進める方法が有効です。
通信講座選びで確認すべきポイント
スポーツツーリズム分野へのキャリア転換を考える社会人が通信講座を選ぶ際は、以下のポイントを確認することをお勧めします。
- 国内・総合どちらの試験区分にも対応しているか
- 科目免除制度(国内合格後に総合にステップアップする場合)への対応があるか
- スマートフォン・タブレットで学習できるeラーニング機能が充実しているか
- 合格保証・受講期間延長制度があり、繁忙期が重なっても安心して継続できるか
- 質問サポートが迅速で、試験直前の疑問を解消しやすいか
- 受講費用に教育訓練給付金制度(厚生労働省指定講座)が活用できるか
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旅行業法・標準旅行業約款・国内実務・海外実務を1冊で効率よく学べる定番テキストです。スポーツツーリズム分野への転職・就職を検討する方が試験勉強の入口として活用しやすく、総合・国内どちらの試験区分にも対応しています。
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ユーキャンの総合旅行業務取扱管理者 過去問題集 2025年版
総合旅行業務取扱管理者試験の過去問を収録した演習書です。海外スポーツイベントのツアーも担当できる総合資格の取得を目指す方に、出題傾向の把握と実践力の強化に役立ちます。
旅行業務取扱管理者試験の学習を通信講座でスタートしたい方は、旅行業務取扱管理者通信講座のすすめもご覧ください。

よくある質問(FAQ)
スポーツツーリズム専門の旅行会社に就職するために旅行業務取扱管理者資格は必須ですか?
旅行業者への就職時に資格は必須ではありませんが、旅行業法が各営業所に旅行業務取扱管理者の選任を義務づけているため、資格保有者は採用・昇進で優遇される傾向があります。選任管理者の候補として即戦力になれる点が、資格を持つ応募者の大きな強みです。
国内旅行業務取扱管理者と総合旅行業務取扱管理者のどちらを先に取得すれば良いですか?
国内ツアーを中心に扱うスポーツ旅行会社に就職したい場合は、まず国内旅行業務取扱管理者から取得するのが一般的です。国内試験合格後は科目免除制度を活用して総合試験にステップアップできます。海外スポーツイベントも担当したい場合は、段階的に総合を目指すロードマップが現実的です。
令和8年度の国内旅行業務取扱管理者試験の受験手数料はいくらですか?
令和8年度の国内旅行業務取扱管理者試験の受験手数料は8,000円(非課税)で、これに加えてシステム利用料660円(税込)が必要です(2026年8月時点・全国旅行業協会公表の令和8年度受験案内)。CBT方式のため、全国47都道府県のテストセンターで受験日・時刻を選択して受験します。
スポーツ施設(スキー場・ゴルフ場)が旅行商品を販売するには旅行業登録が必要ですか?
施設利用と宿泊・交通を組み合わせたパッケージを旅行業者として販売する場合、旅行業法に基づく旅行業登録(第1種~第3種または地域限定旅行業)が必要です。各営業所に旅行業務取扱管理者を選任することも義務づけられています。具体的な登録区分は業務範囲によって異なるため、都道府県の観光担当部署または国土交通省の窓口に確認することをお勧めします。
Jリーグや野球チームがファンツアーを催行するには旅行業の登録が必要ですか?
プロスポーツチームが宿泊・交通を組み込んだツアーを有償で販売・催行する場合、旅行業法上の旅行業登録が必要になるケースがあります。チームが旅行会社と提携してツアーを販売する形態と、チーム自身が旅行業者として登録する形態があります。後者の場合、各営業所への旅行業務取扱管理者の選任が法的要件となります。
旅行業務取扱管理者試験の令和7年度合格率はどのくらいでしたか?
令和7年度の合格率は、総合旅行業務取扱管理者が26.1%(受験者4,519名・合格者1,179名)、国内旅行業務取扱管理者が34.1%(全科目受験者9,759名・合格者3,330名)でした(JATA・ANTA各実施結果公表値)。試験区分・受験年度によって合格率は変動するため、最新情報は各試験実施機関の公式サイトでご確認ください。

