
旅行業界の福利厚生が充実している理由
旅行会社に就職・転職を検討するとき、「旅行割引が使えて旅が安くなる」という漠然したイメージを持つ人は多いでしょう。しかし旅行業界の福利厚生は、それだけにとどまりません。業界特有の仕入れルートや取引関係から生まれる独自の特典が多数存在し、他業界にはない魅力があります。
本記事では、旅行業界の福利厚生を体系的に整理し、旅行割引・招待旅行(ファムトリップ)・宿泊割引・航空券特典といった業界固有の待遇から、大手と中小の違い、旅行業務取扱管理者資格との関係まで徹底解説します。旅行業界への就職・転職を考えている方は、ぜひ最後までお読みください。
旅行業界の福利厚生一覧:7つのカテゴリ
旅行会社の福利厚生は大きく次の7カテゴリに分類できます。
①社員旅行割引(自社商品の割引)
旅行会社に勤務する従業員は、自社が販売する旅行商品をかなり割引された価格で購入できるケースがほとんどです。割引率は会社・商品によって異なりますが、パッケージツアーを定価の30~70%引きで利用できることもあります。ただし空席がある場合に限られるため、繁忙期(GW・お盆・年末年始)は適用されにくい点に注意が必要です。
②招待旅行(ファムトリップ・研修旅行)
旅行業界特有の福利厚生として最も知られるのが、ファミリアリゼーション・トリップ(ファムトリップ)です。ホテル・航空会社・観光局などの取引先が旅行会社スタッフを招待し、現地視察・商品研修を兼ねた旅行です。
ファムトリップは「仕事の一環」ですが、実際には旅費・宿泊費・食事代が招待側の負担になるため、実質的に無料で海外・国内の人気観光地を訪問できます。大手旅行会社のカウンタースタッフやツアープランナーは、年に数回このような招待旅行に参加できるケースがあります。
③航空券・宿泊の優待料金
旅行会社は航空会社・ホテルとの取引関係から、社員向けのIDチケット(航空会社割引)やスタッフレート(ホテル優待料金)を利用できる場合があります。特に航空会社との取引が深い大手旅行会社では、通常運賃の数十パーセント割引で航空券を入手できることもあります。
また、旅館・ホテルチェーンとの提携が強い会社では、提携施設への宿泊を社員価格で利用できる制度を設けているところもあります。
④資格取得支援・受験費用補助
旅行業界では、旅行業務取扱管理者などの国家資格取得を奨励している会社がほとんどです。具体的な支援内容としては次のようなものがあります。
- 受験料の全額または一部補助
- 通信講座受講費用の補助(年間数万円まで)
- 社内勉強会・模擬試験の実施
- 合格時の一時金(お祝い金:1万~5万円程度)
- 合格後の資格手当支給(月額2,000円~5,000円程度)
特に営業所を複数持つ旅行会社では、各営業所に旅行業務取扱管理者を選任する義務があるため(旅行業法第11条の2)、資格取得支援に積極的な傾向があります。
⑤旅行積立・社員旅行制度
毎月一定額を積み立て、旅行会社の商品に充当できる「旅行積立制度」を設けている会社もあります。会社が一定額を上乗せしてくれるケースもあり、実質的な旅行費用補助として機能します。また年1~2回の社員旅行を実施し、費用の大半を会社が負担する制度も旅行会社には多く残っています。
⑥旅行業界特有の人脈・情報ネットワーク
直接的な金銭的恩恵ではありませんが、旅行業界で働くことで得られるホテル・航空会社・観光施設とのネットワークは大きな財産です。個人旅行の際にもスムーズな手配ができたり、業界内のコネクションが私生活の旅行クオリティを高める効果があります。
⑦一般的な法定福利厚生・法定外福利厚生
旅行業界特有の福利厚生のほか、一般企業と同様の福利厚生も整備されています。
- 社会保険(健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険)
- 有給休暇・育児休業・介護休業
- 住宅手当・家族手当・通勤手当
- 慶弔見舞金制度
- 確定拠出年金(企業型DC)・退職金制度
ただし、後述するように大手と中小では整備状況に大きな差があります。
大手旅行会社と中小・地域旅行会社の福利厚生の差
旅行業界の福利厚生は、会社の規模によって大きく異なります。
大手旅行会社(JTB・HIS・日本旅行など)の福利厚生
大手旅行会社は取引先との関係が強く、ファムトリップの機会や航空券優待の恩恵を受けやすい傾向があります。また以下のような充実した制度が整っています。
- 確定拠出年金(企業型DC)の会社拠出あり
- グループ内宿泊施設・レジャー施設の優待利用
- 提携企業(レンタカー・テーマパーク・保険会社など)の割引制度
- 育児・介護支援制度の充実
- カフェテリアプランなどの選択型福利厚生
特にJTBはグループ内にホテルや施設を持つため、グループ全体の優待を活用できる点が強みです。
中小・地域旅行会社の福利厚生
中小規模の旅行会社では、大手ほど制度が整っていないことが多いです。ただし、地域密着型の会社では地元のホテルや観光施設との関係が深く、地域特有の優待が充実しているケースもあります。
また、中小旅行会社でも旅行業務取扱管理者の選任義務があることから、資格手当や受験費用補助は設けている会社が多い傾向があります。
OTA・インターネット専業旅行会社の福利厚生
楽天トラベルやじゃらん(リクルート)、一休などのOTA(オンライン旅行代理店)は、IT企業としての福利厚生と旅行業界の特典が組み合わさった独自の制度を持っています。
- フレックスタイム・リモートワーク制度が充実
- グループサービス(楽天市場・リクルートポンテポルテなど)の社員割引
- 旅行サービスの社員優待
ファムトリップ(招待旅行)の実態と対象者
ファムトリップは旅行業界で働く大きな魅力のひとつですが、全員が参加できるわけではありません。実態を正確に把握しておきましょう。
ファムトリップの種類
ファムトリップには主に次の種類があります。
| 種類 | 主催 | 目的 |
|---|---|---|
| 観光局主催ファムトリップ | 各国観光局 | 現地視察・旅行商品知識の向上 |
| ホテルチェーン主催 | ホテルグループ | 施設紹介・販売強化 |
| 航空会社主催 | 航空会社 | 新路線・サービスのPR |
| クルーズ会社主催 | クルーズライン | 船内設備の体験・販売強化 |
| 社内研修旅行 | 旅行会社(自社) | 商品品質確認・スタッフ育成 |
ファムトリップに参加できる人の条件
ファムトリップへの参加は、一般的に以下のような条件に基づき選考されます。
- 担当エリアや商品のスタッフが優先される(例:ヨーロッパ担当なら欧州ファムが多い)
- 取引額や販売実績が多い担当者が優先されるケースもある
- 経験年数・職位によって上位職から参加する場合もある
- 参加後に社内研修レポートの提出が義務づけられることが多い
ファムトリップはあくまでも業務上の研修が目的であり、参加した先のレポート作成や社内共有が求められることを念頭に置きましょう。
旅行業界で働くメリットとデメリット
福利厚生の充実を踏まえた上で、旅行業界全体の働くメリット・デメリットを整理します。
メリット
1. 旅行が好きな人に最適な環境
「好きなことを仕事にできる」という満足度は他業界には代えがたい価値です。仕事で培った知識が直接プライベートの旅行にも活かせ、コスト・クオリティの両面で旅行を楽しめるようになります。
2. 旅行業務取扱管理者資格が武器になる
旅行業法では、旅行会社の各営業所に旅行業務取扱管理者を選任することが義務づけられています(旅行業法第11条の2)。資格保持者は選任管理者として職場で重宝され、資格手当の支給・昇進への有利な影響が期待できます。
3. 国内外の多様な知識・スキルが身につく
旅行業界では、地理・文化・語学・交通機関・宿泊・出入国管理・航空運賃計算など幅広い知識が必要です。これらのスキルは転職市場でも一定の評価を受け、ホテル業界・航空業界・観光行政などへのキャリアチェンジにも活かせます。
4. 顧客の喜びが直接感じられるやりがい
旅行という非日常体験を提供する旅行業は、顧客から「ありがとう」と言われやすい仕事です。旅行後に送られてくる感謝のメッセージや口コミは、大きな仕事のやりがいにつながります。
デメリット
1. 年収水準は他業種より低め
旅行業界の平均年収は、製造業や金融業と比較して低い水準にとどまる傾向があります。厚生労働省の賃金構造基本統計調査によれば、旅行業を含む「旅行業・旅行サービス業」の平均年収は全産業平均を下回るケースが多いです。好きな業界で働く「精神的報酬」と引き換えに、給与面での妥協が求められる場面もあります。
2. 繁忙期の休暇が取りにくい
GW・夏休み・年末年始など、一般の人が旅行する繁忙期は最も忙しい時期です。旅行業界で働く以上、他の人が休む時期に働くという逆転現象は避けられません。旅行割引の特典を活かしたくても、繁忙期は使いにくいという矛盾が生じます。
3. OTA台頭による業界変化が激しい
インターネット予約の普及により、従来型の店頭販売旅行会社は厳しい競争にさらされています。AIや自動化の進展で業務内容も変わりつつあり、変化への適応力が求められる時代になっています。
旅行業務取扱管理者資格と福利厚生の関係
旅行業界で働く際、旅行業務取扱管理者資格の取得は福利厚生面でも直結する重要な要素です。
資格取得で受けられる待遇改善
旅行業務取扱管理者(国内・総合)を取得すると、多くの旅行会社で以下のような待遇改善が期待できます。
| 区分 | 待遇改善の内容 |
|---|---|
| 国内旅行業務取扱管理者 | 資格手当:月2,000円~3,000円程度、営業所選任管理者への登用可能 |
| 総合旅行業務取扱管理者 | 資格手当:月3,000円~5,000円程度、海外旅行部門・管理職への昇進要件 |
| 地域限定旅行業務取扱管理者 | 地域限定旅行会社・着地型観光事業者での管理者選任 |
入社前に資格を取得するメリット
旅行業界への就職・転職を検討している段階で旅行業務取扱管理者(国内)に合格しておくと、以下のメリットがあります。
- 採用選考での差別化:同じ未経験者でも、資格保持者は意欲・知識の面で高評価を受けやすい
- 入社時の資格手当が即適用:入社直後から手当の支給対象になる
- 配属先の選択肢が広がる:国内旅行・海外旅行どちらの部門にも応募しやすくなる
- 早期の選任管理者登用:管理者不在の営業所に配属される機会が生まれ、早期にキャリアアップできる
総合旅行業務取扱管理者のキャリアインパクト
国内から総合へステップアップすると、海外旅行全般(航空券・宿泊・海外ツアー)を取り扱える範囲が広がります。大手旅行会社では総合資格保持者を管理職候補として位置づけることも多く、長期的なキャリア形成において総合取得は大きな武器になります。
旅行業界への就職前に確認すべき福利厚生チェックポイント
旅行会社への応募前・内定後に以下の項目を確認しましょう。
採用担当者・求人票で確認すべき事項
- 社員旅行割引の割引率と適用条件(繁忙期の可否・家族利用の可否)
- ファムトリップの年間実施件数と参加資格
- 資格手当の月額と対象資格
- 受験費用補助・通信講座費用補助の有無と上限額
- 退職金制度の有無(中小旅行会社では退職金がない場合もある)
- 住宅手当の有無と支給条件
- 育児休業・時短勤務の取得実績(制度があっても実態が伴わない場合がある)
口コミサイト・SNSで確認する方法
OpenworkやGlassdoorなどの口コミサイトでは、現役・元社員のリアルな声を確認できます。「福利厚生」「働き方」「残業」などのキーワードで検索し、求人票の内容と照合することをおすすめします。

まとめ:旅行業界の福利厚生を最大限に活かすために
旅行業界の福利厚生は、旅行割引・ファムトリップ・資格手当など業界特有の魅力が多い一方、年収水準の低さや繁忙期の休暇取得困難というトレードオフも存在します。
入社前に福利厚生の詳細を確認し、自分のライフスタイルと合致するかを見極めることが重要です。特に旅行業務取扱管理者資格は、就職活動・入社後のキャリアアップ・選任管理者登用の三つの場面で直接的な恩恵をもたらします。旅行業界を目指す方は、就職活動と並行して資格の取得準備を進めることを強くおすすめします。
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