旅行会社への就職・転職を検討するとき、「旅行会社といえば店頭カウンターで旅行プランを提案する仕事」というイメージを持つ方が多いでしょう。しかし実際の旅行会社には、商品企画・仕入れ・添乗・法人営業・デジタル販売など多彩な職種と部署が存在します。旅行業務取扱管理者の国家資格はいずれの部署でも必須または優遇とされており、どの職種を目指すかによって求められる知識とキャリアパスが変わります。本記事では旅行会社の主要職種・部署ごとの仕事内容、必要なスキル・資格、昇進・キャリアアップの方向性を体系的に解説し、旅行業務取扱管理者資格がそれぞれの職種でどのように活かせるかを具体的に説明します。
旅行会社の職種・部署の全体像
旅行会社の主な部門と職種の分類
旅行会社の組織は大きく①販売部門(カウンターセールス・コールセンター)、②商品企画・仕入れ部門、③添乗・旅程管理部門、④法人営業部門(MICE・団体旅行)、⑤デジタル・WEB部門、⑥管理・サポート部門に分かれます。大手総合旅行会社(第1種旅行業者)ではこれらの部門が独立した組織として機能しますが、中小規模の旅行会社(第2種・第3種旅行業者)では一人の担当者が複数の役割を兼務するケースが大半です。旅行業務取扱管理者の資格は特に販売部門・商品企画部門・法人営業部門で重視されており、各営業所の「選任管理者」として法律上の責任を担う立場にもなります。
各職種と旅行業務取扱管理者の関連まとめ
旅行業法では旅行業者が各営業所に旅行業務取扱管理者を1名以上選任することが義務付けられているため、管理者資格を持つ人材は全部門で需要があります。以下の表に旅行会社の主要職種と旅行業務取扱管理者資格の活用度をまとめます。資格が「必須」の職種は選任管理者として登録される場合、「優遇」の職種は昇進・資格手当の対象になる場合です。
| 職種・部署 | 主な業務 | 管理者資格の活用度 | 推奨される区分 |
|---|---|---|---|
| カウンターセールス(個人向け) | 旅行提案・予約・契約締結 | 必須(選任管理者候補) | 国内または総合 |
| 商品企画・仕入れ | 旅行商品の企画・サプライヤー交渉 | 優遇(業務知識に直結) | 総合が有利 |
| 添乗員(ツアーコンダクター) | 旅程管理・旅行者のサポート | 優遇(旅程管理主任者と組み合わせ) | 国内または総合 |
| 法人営業(MICE・団体旅行) | 企業・団体への旅行提案・契約交渉 | 必須(選任管理者候補) | 総合が有利 |
| コールセンター・WEB予約 | 電話・オンラインでの旅行受付 | 優遇(資格手当の対象) | 国内または総合 |
| 管理・バックオフィス | 経理・人事・法務・コンプライアンス | 参考(旅行法規の理解) | 国内以上 |
カウンターセールスの仕事内容と必要スキル
カウンターセールスの業務内容
カウンターセールスは旅行会社の店頭(または電話・チャット)で個人・家族・グループからの旅行相談に応じ、最適な旅行プランを提案・販売する職種です。主な業務は①航空券・宿泊・パッケージツアーの案内と予約手配、②標準旅行業約款に基づく取引条件の説明と契約書の作成・交付、③パスポート・ビザ申請のアドバイス、④変更・取消時の手続きと取消料の説明、⑤クレーム対応です。旅行業法では旅行者に対して契約締結前に旅行地・旅行日程・旅行代金・取消料等の重要事項を書面で説明する義務があり、この業務を適切に遂行するには旅行業法・約款の深い理解が不可欠です。カウンターセールスを担当するスタッフが旅行業務取扱管理者の資格を取得することで、選任管理者として営業所の管理業務を任される可能性が高まり、昇進・資格手当の支給につながります。
カウンターセールスに求められるスキルとキャリアパス
カウンターセールスに求められる主なスキルは、①旅行業法・標準旅行業約款の知識(取消料の説明・契約書の作成)、②国内外の観光地・交通機関・宿泊施設に関する幅広い商品知識、③ヒアリング力と提案力(顧客のニーズを引き出してプランに落とし込む能力)、④GDS(amadeus・Sabre等)やオンライン予約システムの操作スキルです。キャリアパスは、一般スタッフ→選任管理者(旅行業務取扱管理者として選任)→支店長・エリアマネージャー→本部(商品企画・法人営業・マーケティング部門への異動)という流れが一般的です。旅行業務取扱管理者の資格(特に総合区分)を持つカウンターセールスのスタッフは社内での評価が高く、早期昇進・他部門への異動チャンスを得やすい傾向があります。
商品企画・仕入れ部門の仕事内容
商品企画部門の業務内容
商品企画部門は旅行会社が販売するパッケージツアーや個人旅行商品を開発する部署です。主な業務は①旅行テーマ・目的地の選定と旅程の企画(募集型企画旅行の「旅行業者主催」としての旅行計画作成)、②観光地・ホテル・航空会社との料金交渉と仕入れ契約、③パンフレット・WEBページの制作・監修、④価格設定と利益管理、⑤旅行商品の法令適合チェックです。旅行業法第2条が定める「旅行業者の業務」のうち、募集型企画旅行の企画・実施は旅行業者にとって最も重要な収益源であり、企画担当者は旅行業法・約款・航空運賃計算・宿泊施設の料金体系などの専門知識が必要です。総合旅行業務取扱管理者の資格保持者は、海外旅行の企画・手配実務の知識が網羅されているため、企画部門での評価が特に高くなります。
仕入れ・手配担当の業務内容
仕入れ・手配担当(ホールセラー)は航空会社・ホテル・観光バス会社・レストラン等のサプライヤーから座席・客室・設備を仕入れ、旅行商品の原価を管理する職種です。主な業務は①サプライヤーとの仕入れ交渉・契約、②航空運賃(IATA運賃・特別割引運賃等)の理解と最適仕入れ、③ホテルの料金種別(ネット料金・コミッション料金)の管理、④旅行商品の原価計算と価格設定への貢献です。旅行業務取扱管理者試験で学ぶ「国際航空運賃の計算方法(NUC・MPM・TPM等)」「宿泊料金の仕組み」「旅行業者の仕入れ業務」はまさにこの職種の実務知識に直結します。仕入れ担当が旅行業務取扱管理者(特に総合区分)を持っていることは、交渉の場でも専門知識を持つプロとしての信頼性を高めます。
添乗員(ツアーコンダクター)の仕事内容
添乗員の業務内容と必要な資格
添乗員(ツアーコンダクター)は旅行者に同行して旅程全体をマネジメントし、安全・円滑な旅行の遂行をサポートする職種です。主な業務は①出発前の最終確認(参加者への連絡・集合場所の案内)、②交通機関・ホテル・観光施設との調整、③旅行中の緊急対応(体調不良・天候変化・フライトキャンセル等)、④旅行後の精算・報告書作成です。添乗員として旅行に同行するためには、観光庁長官が登録した機関の旅程管理研修を修了して旅程管理主任者の資格を取得することが必要です(実際に旅行に同行するための実務要件もあります)。旅行業務取扱管理者の資格は旅程管理主任者の資格とは別物ですが、試験で学ぶ「標準旅行業約款の旅程管理・旅程保証・特別補償規程」「運輸機関の約款」等の知識は添乗業務に直結するため、旅行業務取扱管理者資格保持者の添乗員は実務能力が高いと評価される傾向があります。
国内添乗と海外添乗の違い
添乗員には国内旅行に同行する国内添乗と海外旅行に同行する海外添乗(海外ツアーコンダクター)の2種類があります。国内添乗は主にJR・バス・宿泊施設の手配や旅程変更の対応が中心で、旅程管理主任者(国内)の資格が必要です。海外添乗は海外の交通機関・現地ランドオペレーター・ホテルとの調整、出入国手続きのサポート、現地でのトラブル対応が加わり、旅程管理主任者(総合)の資格が必要です。旅行業務取扱管理者試験でいえば、海外添乗員は「海外旅行実務」科目の知識(出入国管理・検疫・外国の法律等)が実務でも役立ち、総合旅行業務取扱管理者の合格者は海外添乗のキャリアにも直結する知識を持っていると評価されます。添乗員としての経験を積んでから商品企画や営業管理職へのキャリアアップを目指す人も多くいます。
法人営業(MICE・団体旅行)部門の仕事内容
法人営業の業務内容
法人営業部門は企業・官公庁・学校・団体に対して社員旅行・修学旅行・研修旅行・インセンティブツアー・国際会議(MICE)等の旅行を提案・受注する職種です。主な業務は①企業担当者へのニーズヒアリングと旅行プランの提案書作成、②見積書の作成と価格交渉・契約締結、③手配業者(ホテル・交通機関・会場等)の調整、④旅行当日のオペレーション管理です。法人営業では標準旅行業約款のうち「受注型企画旅行契約」の知識が特に重要で、企業担当者に対して旅行業法に基づく取引条件の説明と書面交付を適切に行う必要があります。法人営業担当者が旅行業務取扱管理者(特に総合区分)を持っていることは、クライアント企業からの信頼向上につながり、大型案件の受注に有利に働くケースが多くあります。
MICEとは何か・旅行業務取扱管理者との関連
MICE(マイス)とはMeetings(会議・研修)、Incentives(報奨旅行)、Conferences(国際会議・学術会議)、Exhibitions(展示会・イベント)の頭文字を取った造語で、ビジネス目的の集客・旅行全般を指します。旅行業界においてMICEは単価・規模ともに個人旅行より大きく、旅行会社のBtoB部門の主力事業になっています。法人営業担当者にはMICEの各分野の知識と、旅行業法上の「受注型企画旅行契約」の手続き知識が求められます。旅行業務取扱管理者の試験科目「旅行業法(受注型企画旅行の定義・手続き)」「約款(受注型企画旅行契約の内容)」はMICEの実務に直接対応しており、資格学習がそのまま法人営業の基礎力になります。
デジタル・WEB部門とコールセンターの仕事内容
デジタル販売・WEB担当の業務内容
デジタル・WEB部門は旅行会社の自社サイト・予約エンジン・SNSを通じた旅行商品の販売と顧客対応を担当する部署です。主な業務は①旅行商品のWEBページ制作・更新、②SEO対策とオンライン広告の運用、③オンライン予約システムの管理・改善、④SNSを活用したプロモーションです。旅行業法では電子書面・電子契約による取引条件の説明・書面交付が可能になっており(2023年の法改正対応)、デジタル部門のスタッフも旅行業法の知識が求められるようになっています。旅行業務取扱管理者の資格保持者がデジタル部門に配属される場合、旅行法規に準拠したサービス設計と監修ができる強みを発揮できます。
コールセンター・予約受付部門の業務内容
コールセンター・予約受付部門は電話・メール・チャット等のリモートチャンネルを通じて旅行の問い合わせ・予約受付・変更・キャンセルの対応を行う職種です。実質的にはカウンターセールスと同様の業務を非対面で行うため、旅行業法・約款の理解、予約システムの習熟、丁寧な電話対応力が求められます。コールセンター部門でも各拠点(業務センター)を「営業所」として旅行業の登録要件を満たす必要がある場合には旅行業務取扱管理者の選任が義務付けられます。この選任管理者を社内で確保するため、コールセンタースタッフが旅行業務取扱管理者を取得することは昇進・資格手当の面で直接の利益になります。
旅行業務取扱管理者資格と各職種のキャリア戦略
国内管理者と総合管理者のどちらを取得すべきか
旅行会社での職種によって、取得すべき旅行業務取扱管理者の区分(国内・総合)は異なります。国内旅行を主に扱う旅行会社(第2種・第3種旅行業者)でカウンターセールスや営業を担当する場合は国内旅行業務取扱管理者で十分です。一方、総合旅行会社(第1種旅行業者)への勤務、海外旅行を取り扱う部署、商品企画・法人営業・添乗を目指す場合は総合旅行業務取扱管理者が有利です。第1種旅行業者の営業所では総合管理者しか選任管理者になれないため、大手旅行会社では総合管理者の取得が実質的に昇進の条件となるケースがほとんどです。また、総合管理者は海外旅行の実務知識が網羅されているため、どの職種においても実務的な強みを発揮できます。
キャリアアップに活かす資格の組み合わせ
旅行業務取扱管理者資格を軸に、以下の関連資格を組み合わせることでキャリアの幅が広がります。①旅程管理主任者(国内・総合):添乗員として旅行に同行するために必要な資格で、旅行業務取扱管理者とセットで取得することが推奨されます。②観光英語検定・英語資格(TOEIC・英検):海外旅行部門・法人営業(インバウンドMICE)・海外添乗で有利になります。③通関士・貿易実務検定:出入国管理・関税法の理解を深め、カウンターセールスの専門知識を強化します。④中小企業診断士・MBA:旅行会社の管理職・マーケティング部門・新規事業開発部門への転身に有利です。旅行業務取扱管理者試験の学習内容は旅行業務の実務と深く連動しているため、資格取得によって得た知識を日常業務に活かしながら上位資格の学習を進めることが効率的です。
| 職種・キャリア目標 | 推奨する資格の組み合わせ | 取得の優先順 |
|---|---|---|
| カウンターセールス→選任管理者→支店長 | 国内または総合旅行業務取扱管理者 | 旅行業務取扱管理者を最優先 |
| 添乗員→海外添乗→商品企画 | 旅程管理主任者(総合)+総合旅行業務取扱管理者 | 旅程管理主任者→総合管理者の順 |
| 法人営業(MICE)→営業マネージャー | 総合旅行業務取扱管理者+TOEIC | 総合管理者→英語力強化の順 |
| 商品企画・仕入れ→部門管理職 | 総合旅行業務取扱管理者+観光英語検定 | 総合管理者が第一優先 |
| 旅行業を独立開業(第3種) | 国内または総合旅行業務取扱管理者 | 開業前に必ず取得が必要 |
よくある質問(FAQ)
カウンターセールスと添乗員のどちらが旅行業務取扱管理者の資格を活かしやすいですか
両方の職種で資格は有効に活かせますが、カウンターセールスの方が法律上の活用場面が多いです。カウンターセールスでは旅行業法に基づく取引条件の説明・書面交付・契約締結・クレーム対応などの業務に資格知識が直接必要となり、選任管理者として法律上の地位を得ることができます。添乗員の場合は旅程管理主任者の資格が第一に必要であり、旅行業務取扱管理者はあくまで実務知識の基礎を強化するものとして機能します。ただし、添乗員から商品企画や法人営業にキャリアチェンジする際には旅行業務取扱管理者(特に総合)の資格が大きな武器になります。
旅行業務取扱管理者の資格は旅行会社以外でも活かせますか
旅行業務取扱管理者の資格は旅行業の登録を受けた事業者の選任管理者として機能しますが、旅行業以外でも役立つ場面があります。ホテル・旅館:宿泊施設が旅行業登録(第3種・地域限定等)を持ち着地型旅行商品を販売する場合に管理者として活躍できます。航空会社・鉄道会社:旅行業務取扱管理者の業務知識(運賃計算・約款)は航空・鉄道会社の旅客サービス部門でも評価されます。自治体・観光協会(DMO):地域限定旅行業の普及に伴い、地域観光コンテンツを販売する自治体・観光協会での旅行業務取扱管理者の需要が高まっています。企業の総務・人事部門:社員旅行・海外研修の企画・手配を社内で行う企業では旅行業務の知識が評価されることがあります。資格は「旅行業者の選任管理者」という直接の活用以外にも、旅行業務全般の専門知識を証明するものとして広く評価されます。
旅行会社の求人で「旅行業務取扱管理者優遇」と書かれている場合、取得済みと未取得でどのくらい待遇が違いますか
旅行会社によって異なりますが、旅行業務取扱管理者の資格手当として月額3,000円~10,000円程度の手当を支給する企業が多く見られます。また、選任管理者として正式に登録される場合はさらに管理者手当が加算されるケースもあります。入社時点で資格を持っている場合は給与の優遇・初任給の上積み・早期の昇格対象となることがあります。求人票に「優遇」と記載されている場合は選考時に有利に働くほか、配属・部署の選択肢が広がります。旅行会社への就職・転職を検討している方は、応募前に資格取得を目指すことで内定率と入社後の待遇の両面でメリットが得られます。
未経験から旅行会社に就職する場合、どの職種から始めるのが最も一般的ですか
未経験者が旅行会社に就職する場合、最も一般的な入口はカウンターセールス(店舗販売スタッフ)です。旅行の知識と接客スキルを現場で身につけながら、働きながら旅行業務取扱管理者の資格取得を目指す流れが業界全体で定着しています。多くの旅行会社が資格取得支援制度(受験料補助・合格奨励金・勉強時間の確保)を整えており、入社後1~3年以内に資格取得を目指すことが一般的なキャリアパスとなっています。カウンターセールスで接客・手配の基礎を身につけた後、商品企画・法人営業・海外添乗など自分の興味のある専門分野へ異動・転向するというルートが、旅行業界でのキャリア形成の王道です。

