旅行業務取扱管理者の資格を取得した後、または取得を目指しながら「旅行関係の副業を始めたい」「フリーランスとして旅行プランニングで収入を得たい」と考える方は少なくありません。しかし旅行業には旅行業法による登録制度があり、副業・フリーランスとして活動する際にどこまで登録が必要かを正確に理解することが重要です。本記事では旅行業界での副業・フリーランス活動の範囲と旅行業法の規制、旅行業務取扱管理者資格の副業での活かし方を解説します。

旅行業界での副業・フリーランスとはどのような働き方か
副業として旅行関連の仕事をするパターン
旅行業界での副業には、大きく「旅行業の登録が必要な業務」と「登録なしで行える業務」の2種類があります。前者には旅行者を代理して運送・宿泊の手配を行い対価を得る業務(旅行業法第2条第1項各号に定める業務)が含まれます。後者には旅行情報のメディア発信、旅行ライター、旅行相談員としての情報提供などが含まれます。
副業として旅行関連の活動を始める前に、自分が行おうとしている業務が「旅行業」の定義に該当するかどうかを確認することが最初のステップです。旅行業法第2条第1項は、旅行者のための運送・宿泊等のサービスの手配を「報酬を得て」行うことを旅行業と定義しています。
旅行業務取扱管理者資格保持者が副業で求められる場面
旅行業務取扱管理者の資格を持つ方が副業で求められる場面として代表的なのが、旅行業者からの管理者選任に関わる業務です。旅行業法第11条の2第1項は、旅行業者等が各営業所に1名以上の旅行業務取扱管理者を選任し、管理・監督業務を行わせる義務を定めています。
小規模な旅行会社や季節的に営業規模が変動する旅行業者では、資格保持者との契約ニーズが生じる場合があります。ただし選任の要件は常勤が原則とされており、勤務形態については登録先の都道府県知事(または観光庁長官)の運用に従う必要があります。具体的な条件は申請先窓口でご確認ください。
旅行業法が副業に関わる基本的な仕組み
旅行業法は旅行業を営む「事業者」の登録義務を定める法律です(法第3条)。個人として副業で旅行業を行う場合でも、報酬を得て旅行手配を継続的に業として行えば登録が必要となります。登録を行わずに旅行業に該当する行為を業として継続した場合、法第73条(無登録営業の禁止)違反となります。
一方、旅行業法が定める選任義務の名宛人はあくまで事業者(旅行業者等)です(法第11条の2第1項)。旅行業法には、資格を持たない者個人の業務を禁じる規定や処罰する規定は存在しません。副業として活動する際は、事業者としての登録が必要かどうかを判断することが重要です。
旅行業法が副業・フリーランスに設ける制約と登録要件
旅行業の登録が必要な業務と不要な業務
旅行業法第2条第1項は、登録が必要な行為として旅行者に対する運送・宿泊等のサービスの手配、旅行に関するサービスの受付業務、旅行者への便宜の提供(旅行相談)などを列挙しています。これらを「報酬を得て」「業として」行う場合は旅行業の登録が必要です。
これに対して、旅行に関する情報をブログやSNSで発信して広告収入を得ること、旅行の体験談を書籍やメディアに寄稿すること、旅行に関する知識を講座やセミナーで教えることは、旅行者の運送・宿泊等の手配を行うものではないため、旅行業の登録は一般的に不要とされています。ただし個々の活動内容によって判断が変わるため、不明な場合は観光庁または都道府県の旅行業担当窓口に確認することを推奨します。
旅行業者代理業・旅行サービス手配業という選択肢
独立した旅行業の登録ではなく、既存の旅行業者の代理業として活動する形態が「旅行業者代理業」です(法第2条第3項)。旅行業者代理業者は代理する旅行業者が1社のみという制限がありますが(法第6条第1項第11号)、登録要件は旅行業本体より軽くなっています。
また2018年の旅行業法改正(平成29年法律第50号、2018年1月4日施行)で創設された旅行サービス手配業(ランドオペレーター)の登録制度も選択肢のひとつです。旅行サービス手配業は旅行業者から依頼を受けて国内の宿泊・輸送等を手配する業者を対象とした登録制度(法第2条第6項)であり、個人や小規模事業者でも活用できます。
無登録で旅行業に該当する行為を行うリスク
旅行業の無登録営業は旅行業法第73条が禁じており、100万円以下の罰金が科される可能性があります(同第74条第1号)。副業として旅行の手配を有償で請け負う場合、その行為が「業として」継続的に行われるものであれば登録義務が生じます。
「知人の旅行を有償で手配する」「グループを対象にツアーを企画して費用を集める」といった行為であっても、継続的に対価を得て旅行の手配を行う実態があれば旅行業に該当する可能性があります。副業として旅行手配を行う前に、旅行業の定義に照らして事前確認することが重要です。
旅行業務取扱管理者資格が副業・フリーランスで活かせる職種
旅行ライター・旅行コンテンツ制作
旅行業務取扱管理者の試験対策で身に付く旅行業法・約款・国内外地理・運賃計算の知識は、旅行メディアやウェブサイトでのライター・コンテンツ制作業務で活かせます。旅行業の登録が不要な情報発信活動であり、副業のハードルが低い分野です。
旅行業法の専門知識を持つライターは旅行会社のオウンドメディア、観光情報サイト、旅行系の教育コンテンツなど法律・制度面の正確な記事を書けるため、専門性を武器にした差別化が可能です。旅行業の登録は不要ですが、旅行業務取扱管理者試験の合格実績は専門性の証明になります。
旅行企業の研修・教育サポート
旅行業務取扱管理者試験の出題範囲は旅行業法・約款・国内外の旅行実務にわたります。旅行会社の新入社員研修や試験対策講座の講師・サポート業務は、旅行業の登録を必要としない副業のひとつです。
旅行業者は法第11条の2第7項に基づく定期研修の実施義務があります(2018年改正で追加)。研修の実施・サポートを外部に委託するニーズに対応できる専門家として活動することも考えられます。旅行業協会が実施する研修(実務科目免除に使える登録研修機関の研修)を担当するには、各旅行業協会の要件を別途確認する必要があります。
旅行会社との非常勤・スポット契約
旅行業務取扱管理者資格保持者が旅行業者と契約して関わるニーズは一定程度存在します。ただし営業所への管理者選任は常勤が原則であるため、勤務形態によっては登録行政庁の確認が必要です。実際の雇用・契約条件については旅行業者および所管の都道府県窓口に確認することを前提として、活動の可能性を検討してください。
旅行業登録の種別と副業・フリーランス開業への適用(比較表)
| 種別 | 取り扱い可能な旅行 | 申請先 | 営業保証金(最低額) | 基準資産額 |
|---|---|---|---|---|
| 地域限定旅行業 | 拠点区域内の本邦内旅行のみ | 都道府県知事 | 15万円 | 100万円 |
| 第3種旅行業 | 本邦内外(募集型企画旅行の海外は不可) | 都道府県知事 | 300万円 | 300万円 |
| 第2種旅行業 | 本邦内外(募集型企画旅行の国内まで) | 都道府県知事 | 1,100万円 | 700万円 |
| 第1種旅行業 | 全て(海外の募集型企画旅行も可) | 観光庁長官 | 7,000万円 | 3,000万円 |
| 旅行業者代理業 | 代理する旅行業者の業務範囲 | 都道府県知事 | 不要(代理元が負担) | 規定なし |
表の数値は2026年9月7日時点の確定値です(営業保証金:旅行業法施行規則別表第一、基準資産額:同施行規則第3条)。営業保証金は前事業年度の旅行者との取引額が増加すると逓増します。上表は取引額400万円未満の場合の最低額です。旅行業協会(JATAまたはANTA)に加入して弁済業務保証金分担金を納付する場合、納付額は営業保証金の5分の1となります(地域限定の場合:3万円)。
フリーランスとして旅行業を開業する場合の実務ポイント
地域限定旅行業が副業・小規模開業に向いている理由
最も小規模な登録種別は「地域限定旅行業」です。拠点区域(営業所の所在する市町村およびその隣接市町村など。施行規則第1条の3第1項第3号)内の本邦内旅行のみを取り扱う制約がある代わりに、営業保証金・基準資産額の要件が最も低く設定されています。
地域の着地型観光ツアーを副業・フリーランスとして展開したい場合、地域限定旅行業の登録は現実的な選択肢です。ただし地域限定旅行業の試験は観光庁が直接実施(試験事務を旅行業協会に行わせる形式ではない)しており、令和8年度は2026年9月27日(日)13時30分~15時30分に開催されました(受験手数料5,500円・収入印紙で納付、観光庁)。
旅行業務取扱管理者の選任と管理監督業務
旅行業を登録した場合、事業者は各営業所に1名以上の旅行業務取扱管理者を選任する義務があります(法第11条の2第1項)。個人で地域限定旅行業を開業し、拠点区域内の本邦内旅行のみを取り扱う場合は、地域限定・国内・総合いずれの資格保持者でも選任できます(法第11条の2第6項第1号)。
選任後は、旅行者への取引条件の説明・書面交付の確認、苦情の解決、従業員への業務指導などの管理監督業務を行う責任が生じます(法第11条の2第3項各号)。副業として小規模に開業する場合でも、これらの実務が発生する点を念頭に置く必要があります。
登録申請から開業までの流れと確認事項
旅行業の登録申請から実際に営業を開始できるまでには、登録行政庁による審査期間が必要です。書類を不備なく提出した場合でも一定の審査期間があります(具体的な期間は申請先の都道府県窓口にご確認ください)。副業・フリーランスとして旅行業開業を目指す方は、資格取得後に申請書類の準備を計画的に進めることが重要です。
登録申請に必要な主な書類には、登録申請書のほか、財産的基礎(基準資産額)を証する書類、管理者選任誓約書、事業計画書などが含まれます(正確な必要書類は申請先窓口で確認してください)。旅行業法の登録手続きの流れを試験勉強の段階から理解しておくと、スムーズな開業準備につながります。
旅行業務取扱管理者試験の受験と副業・開業のタイミング
令和8年度(2026年度)の試験日程と令和9年度への準備
副業・フリーランスとして旅行業界に参入するために資格取得を目指す場合、試験スケジュールに合わせた準備計画が重要です。令和8年度の国内旅行業務取扱管理者試験はCBT方式で、2026年9月3日(木)~9月25日(金)の期間内から受験日時を選択する形式です(受験手数料8,000円・システム利用料660円、全国旅行業協会)。総合旅行業務取扱管理者試験は2026年10月25日(日)10時30分開始です(受験手数料13,000円・システム利用料660円、日本旅行業協会)。
令和8年度の試験はすでに実施済みであるため、これから資格取得を目指す方は令和9年度(2027年度)に向けた準備を今から始めることになります。通信講座を活用すれば、本業の時間を圧迫せずに自分のペースで学習を進めながら翌年度の受験に備えることができます。
科目免除を活用した効率的な学習計画
すでに国内旅行業務取扱管理者試験に合格している方は、総合旅行業務取扱管理者試験で「旅行業法及びこれに基づく命令」と「国内旅行実務」の2科目が免除されます(施行規則第20条第1号)。ただし免除は申請が必要であり、申請しなければ全科目受験となります(施行規則第13条第2項)。免除申請には合格を証する書類の提出が必要です。
副業・フリーランスとして旅行業界への参入を目指す方にとって、国内資格を先に取得してから総合資格にステップアップする戦略は、学習コストを分散できる現実的な選択肢です。どちらの資格から始めるかは、将来的に取り扱いたい旅行の範囲(国内のみか海外を含むか)を踏まえて選ぶとよいでしょう。
副業・フリーランスで旅行業界を目指すためのチェックリスト
- 自分が行おうとしている活動が旅行業法第2条第1項の「旅行業」の定義に該当するか確認した
- 旅行業の登録が必要な場合、地域限定・第3種・旅行業者代理業など適切な種別を検討した
- 基準資産額(地域限定:100万円など)と営業保証金または弁済業務保証金分担金の資金確保の見込みを立てた
- 旅行業務取扱管理者資格(国内・総合・地域限定)の取得状況と、登録種別に必要な管理者区分が一致しているか確認した
- 登録申請先(観光庁長官または都道府県知事)の申請窓口・書類要件を事前に確認した
- 本業がある場合、就業規則の副業禁止規定の有無を確認した
- 旅行業登録なしで行える活動(ライター・講師・情報発信等)から先行して実績を作ることを検討した

よくある質問(FAQ)
Q1. 旅行業務取扱管理者資格を持っていれば、個人で旅行を手配して副業収入を得られますか?
資格だけでは足りません。旅行者から報酬を得て旅行の手配を業として行うには、事業者として旅行業の登録が必要です(法第3条)。旅行業務取扱管理者の資格は、登録した事業者の営業所に管理者として選任されるために必要な資格です。登録なしで有償の旅行手配を業として行うことは旅行業法第73条違反となります。
Q2. 旅行ライターとして旅行メディアに記事を書くのに旅行業の登録は必要ですか?
旅行者の運送・宿泊等の手配を行うものではないため、旅行業の登録は必要ありません。旅行ライターや旅行コンテンツの制作は旅行業法上の「旅行業」には該当しません。旅行業務取扱管理者の資格で身に付いた専門知識は、記事の正確性・信頼性を高める武器になります。
Q3. 地域限定旅行業の営業保証金はいくらですか?
前年度の旅行者との取引額が400万円未満の場合、最低額は15万円です(旅行業法施行規則別表第一。2026年9月7日時点)。旅行業協会に加入して弁済業務保証金分担金を納付する場合は3万円(15万円の5分の1)です。取引額が増加すると逓増します。最新の金額は旅行業の登録申請先(都道府県の旅行業担当窓口)にご確認ください。
Q4. 旅行業者代理業は個人の副業として利用できますか?
旅行業者代理業の登録は個人(自然人)でも可能です。代理できる旅行業者が1社のみという制約がありますが(法第6条第1項第11号)、営業保証金の供託が不要(代理する旅行業者の営業保証金が適用されます)なため初期コストを抑えられます。副業として特定の旅行業者の代理店として活動したい場合の選択肢です。ただし具体的な要件は申請先の都道府県窓口でご確認ください。
Q5. 旅行サービス手配業(ランドオペレーター)の登録は旅行業の登録と違いますか?
別の制度です。旅行サービス手配業は旅行業者から依頼を受けて国内の運送・宿泊等のサービスを手配することを業とする事業者を対象とした登録制度(法第2条第6項)で、2018年の旅行業法改正で創設されました。旅行業者を相手方とするBtoB型の業態であり、直接消費者に旅行を販売する旅行業とは役割が異なります。旅行サービス手配業にも旅行業務取扱管理者の選任が必要です。
Q6. 副業で旅行業を開業する場合、旅行業務取扱管理者試験のどの区分を取るべきですか?
取り扱いたい旅行の範囲に応じて選ぶのが基本です。地域限定旅行業(拠点区域内の国内旅行のみ)を開業する場合は地域限定・国内・総合いずれの資格でも管理者に選任できます(法第11条の2第6項第1号)。本邦内全域を対象に国内旅行を扱う場合は国内または総合が必要(同第2号)、海外旅行を扱う場合は総合が必要(同第3号)です。まず国内資格を取得し、事業拡大に合わせて総合資格にステップアップするという段階的な戦略も有効です。
PR
2026年度試験 観光・旅行教科書 旅行業務取扱管理者【総合・国内】テキスト&問題集 第6版
旅行業法・約款・国内外の旅行実務を1冊で体系的に学べる定番テキスト。副業・フリーランスとして旅行業に参入する前に必要な法律知識をこの1冊でカバーできます。
PR
ユーキャンの国内・総合旅行業務取扱管理者 速習レッスン 2026年版
国内・総合の両資格に対応した速習テキスト。副業で旅行業界参入を目指す方が効率よく合格レベルに達するための最短学習をサポートします。

