旅行業界は、カウンターセールス・企画・添乗員・法人営業など職種が豊富で、正社員からパート・契約社員まで雇用形態も多様です。女性の就業比率が高く、産休・育休制度が整った職場も増えています。旅行業務取扱管理者資格は採用・昇格の場面で確実な強みとなり、育児との両立を経た復職後にもキャリアを加速させる国家資格です。本記事では、旅行会社で働く女性のキャリアパスと資格取得戦略を徹底解説します。

旅行業界における女性の就業状況
女性比率が高い理由
旅行業界、とくに旅行会社の店舗・カウンター部門では、従来から女性スタッフの比率が高い傾向があります。顧客対応・接客スキルが重視される業種であること、語学力や旅行経験を直接活かせる職場環境であることが、女性にとって参入しやすい背景のひとつです。観光庁の観光産業実態調査(2024年版)によると、旅行業・観光関連業における女性雇用者比率は約60パーセント前後と、多くのサービス業と同様に高水準を維持しています。
一方、管理職・営業所長クラスになると女性比率が下がる傾向は旅行業界も例外ではありません。しかし近年は大手旅行会社を中心に女性管理職比率の引き上げを目標に掲げる企業が増え、旅行業務取扱管理者資格を保有する女性スタッフが昇格・選任されるケースが増加しています。国家資格という客観的な証明があることで、能力評価の基準が明確になり、昇格の機会が広がりやすくなっています。
雇用形態の多様性と働き方の変化
旅行業界は正社員・契約社員・パートタイム・派遣社員と多様な働き方が共存しています。育児との両立を考える女性にとって、時短勤務やフレックスタイム制を導入する旅行会社の増加は大きなメリットです。また、旅行業務取扱管理者試験に合格して資格者になると、営業所ごとの選任管理者候補として正社員転換・待遇改善の交渉材料になる場合があります。雇用形態に関わらず、国家資格の取得は職場における自身の価値を明確に示す手段として有効です。
コロナ禍以降、旅行会社でもリモートワーク・テレワーク導入が進んだことで、本社の企画・マーケティング部門を中心に自宅勤務と出社のハイブリッド型が広がっています。育児中の女性にとって通勤負担が軽減されたことは、キャリア継続の選択肢を広げる変化といえます。
旅行会社の主な職種と女性の活躍領域
カウンターセールス・窓口スタッフ
旅行会社で最も採用人数が多い職種のひとつが、店舗窓口でのカウンターセールスです。国内旅行・海外旅行・航空券手配などの相談・販売業務を担い、顧客との長期的な関係構築がキャリア形成の基盤になります。国内旅行業務取扱管理者または総合旅行業務取扱管理者の資格を取得することで、担当できる旅行の範囲が広がり、高単価商品の提案やインバウンド対応へのシフトアップが現実的な選択肢になります。
カウンター業務は顧客の都合に合わせた土日出勤が多い反面、シフト制を採用する会社では育児中でも勤務日・時間の調整がしやすい利点があります。時短勤務でカウンター業務を継続しながら資格を取得し、段階的にリーダー・スーパーバイザーへ昇格する道筋は、多くの女性スタッフが歩んでいるキャリアパスのひとつです。
企画・商品開発職
旅行商品の企画・パッケージング・仕入れを担う企画職は、旅行業の中でも専門性が高い部門です。総合旅行業務取扱管理者の知識は、募集型企画旅行の設計・約款の理解・海外仕入れ交渉の場面で直接活きます。企画職は比較的デスクワーク中心であるため、育休復帰後の時短勤務でも成果を出しやすく、専門知識の蓄積がキャリアアップに直結します。
企画職へのキャリアチェンジを目指す場合、カウンター経験2年以上に加えて旅行業務取扱管理者資格(国内または総合)を保有しているかどうかが、社内選考の実質的な基準になるケースが多くあります。資格取得を企画職志望の出発点と位置づけることが重要です。
ランドオペレーター・旅行手配担当
旅行サービス手配業(旅行業法第2条第6項で定義される業態)の業務担当者は、宿泊・交通・現地ガイドなどの手配実務を専門に行います。旅行業務取扱管理者試験で学ぶ契約類型・約款・運賃計算の知識はこの業務でも直接役立ちます。旅行業実務に精通した女性スタッフは、顧客との細やかなコミュニケーションが求められる手配業務において高い評価を得る傾向があります。
旅行業務取扱管理者資格が女性のキャリアに与えるメリット
採用・昇格で差がつく具体的な場面
旅行業者等(旅行業法上の旅行業者・旅行業者代理業者)は、旅行業法第11条の2第1項に基づき、各営業所に1人以上の旅行業務取扱管理者を選任して管理・監督業務を行わせる義務があります。選任義務の名宛人は事業者であり、資格保有者は採用や異動・昇格の場面で優先されることが多くなります。
特に中小規模の旅行会社では、各営業所に選任できる有資格者の確保が経営課題になっているため、資格を持つ女性スタッフが正社員登用や役職者への登用で評価される実例は少なくありません。資格を持たないスタッフと有資格スタッフでは、昇格候補としての優先度が明確に異なります。
国内から総合へのステップアップ戦略
まず国内旅行業務取扱管理者を取得し、翌年以降に総合旅行業務取扱管理者を目指す「ステップアップ受験」は、多くの女性受験者が選ぶ現実的な学習ルートです。国内試験に合格すると、総合試験では「国内旅行実務」が免除されるため(科目免除制度)、学習量を大幅に削減できます。
令和8年度の試験日程は、国内がCBT方式で令和8年9月3日(木)~25日(金)の期間から受験者が日時を選択、総合がマークシート方式で令和8年10月25日(日)です(2026年9月時点・観光庁・JATA・ANTA公式情報に基づく)。受験手数料は国内8,000円(非課税)+システム利用料660円(税込)、総合13,000円(非課税)+システム利用料660円(税込)です。国内合格者がその年のうちに総合にも挑戦できる日程であることが、ステップアップ受験の大きな利点です。
産休・育休後の復職とキャリア継続のポイント
復職タイミングと資格取得の組み合わせ
育休中は時間の確保が難しい一方、資格試験勉強をまとめて進める機会でもあります。育休中に国内旅行業務取扱管理者の学習を始め、復職後の最初の試験期間(令和8年度なら9月のCBT期間)に受験するスケジュールは、多くの受験者が実践しているパターンです。通信講座を活用すれば、自宅での学習・スマートフォンでの映像視聴が可能なため、育児の合間の隙間時間を活かせます。
復職後に資格を取得しておくことで、会社側から「有資格者として活用したい」という認識が生まれ、業務の幅や評価が変わるケースがあります。出産・育児によるキャリアの中断を、資格取得というプラスの実績で補完する戦略として有効です。令和7年度の国内試験合格率は34.1%(全科目・全国旅行業協会公表)であり、計画的な学習で十分に合格圏内に入れる難易度です。
育休中の学習計画チェックリスト
- 通信講座または市販テキストで学習教材を選定する
- 1日30分~1時間の学習時間を育児スケジュールに組み込む
- 旅行業法・標準旅行業約款の基礎から学習を開始する
- CBT試験のテストセンター所在地(全国47都道府県)を事前に確認する
- 復職前に試験申込の締切日・受験票の受け取り方法を把握する
- 科目免除制度を活用して翌年の総合試験受験も計画に入れる
時短勤務中でも選任管理者になれるか
旅行業法には選任管理者の勤務形態(フルタイム・時短勤務)を区別する規定はありません。ただし選任管理者は「管理・監督業務を行わせる」ことが必要(法第11条の2第1項)であり、実務上、選任される管理者は当該営業所の業務時間帯をカバーできる勤務状況であることが求められます。時短勤務であっても、営業所の主要業務時間に在籍できる体制であれば選任の実務的な障壁にはなりにくいですが、具体的な運用については各事業者が観光庁・都道府県の登録行政庁と確認する必要があります。
管理職・店長へのキャリアロードマップ
営業所長・エリアマネージャーへの道筋
旅行会社の営業所長(店長)は、その営業所の取扱業務範囲に応じた旅行業務取扱管理者を選任する義務を持つ事業者側の立場です。営業所長自身が有資格者であれば、選任管理者を兼任することが可能で、少人数の店舗では実質的に必須の条件になります。管理職を目指す女性スタッフにとって、総合旅行業務取扱管理者の資格は「海外を含む旅行を取り扱う営業所の管理者になれる」という点で特に有効です(法第11条の2第6項第3号)。
なお、選任できる管理者の区分は登録種別(第1種・第2種・第3種・地域限定)ではなく、その営業所が取り扱う旅行の範囲によって決まります。例えば、第1種旅行業者でも本邦内旅行のみを取り扱う営業所であれば国内旅行業務取扱管理者を選任できます。この点は試験でも頻出論点であり、実務でも正確に理解しておく必要があります。
旅行業務取扱管理者が担う管理・監督業務の主要項目
選任された管理者が担う管理・監督業務の主要項目を理解しておくことは、管理職候補としての準備に直結します。これらの業務をこなせる実力を示すことが、昇格・昇給評価の根拠になります。
- 旅行に関する計画の作成に関する事項
- 旅行業務の取扱いの料金の掲示に関する事項
- 旅行者に交付すべき書面の作成に関する事項
- 旅行者に対する旅行地における安全確保に関する事項
- 旅行者からの苦情の処理に関する事項
- 契約の締結に際しての取引条件の説明に関する事項
- その他旅行業務の適切な運営を確保するために必要な事項
資格区分・試験制度の比較表
| 資格区分 | 試験方式 | 令和8年度試験日 | 受験手数料(令和8年度) | 向いている女性のキャリア場面 |
|---|---|---|---|---|
| 国内旅行業務取扱管理者 | CBT方式(全国テストセンター) | 令和8年9月3日(木)~25日(金)から選択 | 8,000円(非課税)+利用料660円(税込) | 国内専業の窓口スタッフ・育休復帰後の第一歩・地域旅行会社での選任管理者 |
| 総合旅行業務取扱管理者 | マークシート(指定会場) | 令和8年10月25日(日) | 13,000円(非課税)+利用料660円(税込) | 海外旅行を扱う窓口・企画職・大手旅行会社の管理職候補・ステップアップ受験 |
| 地域限定旅行業務取扱管理者 | マークシート(会場筆記) | 令和8年9月27日(日) 13:30~15:30 | 5,500円(収入印紙で納付) | 着地型観光・地域DMO・インバウンドガイド・地方での旅行業開業 |
※試験日・受験手数料は令和8年度の観光庁・日本旅行業協会(JATA)・全国旅行業協会(ANTA)公式情報に基づきます。最新情報は各試験実施機関の公式案内でご確認ください。
通信講座を活用した資格取得戦略
育児中でも続けられる講座の選び方
育児中の女性受験者にとって、通学が不要でスマートフォン・タブレットで完結する通信講座は大きな強みです。映像講義の倍速再生・ダウンロード視聴・スキマ時間に解ける問題集など、隙間時間を最大限に活用できる機能を持つ講座を選ぶことが合格率向上の鍵になります。代表的な講座としてユーキャン・フォーサイト・スタディング・TACなどがあり、それぞれ費用・サポート体制・教材の質が異なります。資料請求や無料体験講義を活用して、自分の学習スタイルに合うものを選ぶことをおすすめします。
令和8年度国内試験に向けた学習スケジュール例
国内旅行業務取扱管理者試験(令和8年9月3日~25日のCBT期間)を目標にする場合、逆算すると7月末までに主要4科目の一通りの学習を終え、8月を過去問・模擬試験の演習に充てるスケジュールが理想的です。通信講座の標準学習期間は4~6か月程度のものが多く、学習開始を3月~4月にすれば余裕を持って本番を迎えられます。育休中や産前休暇中から学習を開始することで、復職後に試験を迎えるパターンも実現しやすくなります。
旅行業界で長く活躍するためのキャリア設計
スキルの掛け合わせでキャリアを広げる
旅行業務取扱管理者資格に、英語・中国語などの語学スキルや、デジタルマーケティング・SNS運用のスキルを組み合わせることで、インバウンド対応やOTA(オンライン旅行代理店)のコンテンツ制作など、近年需要が高まる職種へのキャリアシフトが可能になります。特に中小規模の旅行会社でマルチタスクが求められる場面では、旅行実務の知識とデジタルスキルを両方持つ人材は希少価値が高く、採用・昇格で有利に働きます。
独立・開業という選択肢
旅行業の登録を受けて独立開業する場合、各登録種別の要件を満たす必要があります。第3種旅行業の場合、営業保証金の最低額は300万円(前事業年度の取引額400万円未満の場合・旅行業法施行規則別表第一)です。旅行業協会に加入する場合は弁済業務保証金分担金60万円(営業保証金÷5)の納付で代替できます。基準資産額は施行規則第3条により300万円です。育児中の個人事業として地域限定旅行業(営業保証金最低額15万円・基準資産額100万円)から始め、規模を拡大していく段階的な独立も現実的な選択肢のひとつです。
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よくある質問(FAQ)
旅行会社で働く女性の資格・キャリアに関するよくある疑問
- Q1. 旅行業務取扱管理者試験に受験資格はありますか?年齢制限はありますか?
- 旅行業務取扱管理者試験(総合・国内・地域限定)には、学歴・実務経験・年齢の受験資格制限はありません。誰でも申込時点で受験できます。育休中の方や旅行業界未経験の方でも受験が可能です。受験申込はインターネットで行います(国内はインターネットのみ、書面申請不可)。
- Q2. 育休中に合格した資格は復職後にすぐ使えますか?
- 旅行業務取扱管理者資格に有効期限はなく、更新手続きも不要です(2026年9月時点)。育休中に取得した資格は復職後もそのまま有効で、会社から選任管理者として登録されれば即日その立場で業務を担うことができます。
- Q3. 国内から総合へのステップアップ受験では、何科目が免除されますか?
- 国内旅行業務取扱管理者の合格者が翌年以降に総合を受験する場合、「国内旅行実務」が科目免除になります。総合試験は「旅行業法」「旅行業約款・運送約款・宿泊約款」「海外旅行実務」「国内旅行実務」の4科目ですが、国内合格者は3科目の受験となります。免除を受けるには申込時に科目免除の申請を行い、合格証書の写し等を提出する必要があります。
- Q4. 時短勤務のまま営業所の選任管理者になることはできますか?
- 旅行業法には選任管理者の勤務形態を制限する規定はありません。ただし選任管理者は当該営業所での管理・監督業務を行う立場であるため、営業所の業務時間帯に実態として在籍できることが実務上求められます。詳細は登録行政庁(観光庁または都道府県)への事前相談をおすすめします。
- Q5. 旅行業の資格なしでも旅行会社に転職できますか?
- 旅行業法には無資格者個人の業務を禁じる規定は存在しません。選任義務の名宛人はあくまで事業者です。そのため資格がなくても旅行会社でのカウンター業務等に就くことは可能です。ただし、採用後に資格取得を会社から求められるケースは多く、とくに管理職候補としての昇格要件に資格保有が入っている会社は少なくありません。未経験での転職活動においても、資格を保有していると書類選考・面接での評価が上がる傾向があります。
- Q6. 地方在住でも国内旅行業務取扱管理者試験を受験できますか?
- 国内旅行業務取扱管理者試験はCBT方式(コンピュータ試験)で、全国47都道府県のテストセンターから受験会場・日時を選択できます。育児の都合で遠方に出向くことが難しい方でも、近隣のテストセンターで受験できる点はCBT化以前のマークシート試験と比べて大きなメリットです。
- Q7. 旅行会社以外でも旅行業務取扱管理者資格は活かせますか?
- 旅行業務取扱管理者資格は、旅行業者に選任されることで法的な管理者の立場になれるほか、ホテル・宿泊施設、航空会社、観光行政・DMO、テーマパーク・レジャー施設など旅行関連業での就職・転職でも評価されます。また、旅行業を営む法人・個人事業主の開業時に選任管理者を社外から確保する場合にも、有資格者の市場価値は高くなっています。

