旅行業務取扱管理者試験は「総合」「国内」「地域限定」の3区分に分かれており、区分ごとに出題科目・試験形式・合格基準が異なります。旅行会社への就職や旅行業の開業を目指す場合は、受験する区分を明確にしたうえで各科目の出題範囲と難易度のバランスを理解することが合格への近道です。本記事では3区分の試験構成を横断的に比較しながら、科目別の学習配分と合格に向けた受験戦略をわかりやすく整理します。

旅行業務取扱管理者試験の3区分と概要
試験を実施する3つの機関
旅行業務取扱管理者試験は区分によって実施機関が異なります。総合旅行業務取扱管理者試験は日本旅行業協会(JATA)が、国内旅行業務取扱管理者試験は全国旅行業協会(ANTA)が、地域限定旅行業務取扱管理者試験は観光庁が実施します。
受験申込の手続き・要綱・試験日程はそれぞれの機関が個別に公表しており、申込期間や受験手数料も異なります。受験を決める前に、取得を目指す区分の実施機関の公式サイトで最新の受験案内を確認することが重要です。
各機関の受験案内には出題科目・出題数・合格基準・科目免除の手続きなど試験に関する確定情報が記載されています。本記事の記載内容も、最終的には各機関が公表する受験案内でご確認ください。
3区分の主な違いを一覧で確認する
3区分は業務範囲・難易度・試験形式の点で大きく異なります。取り扱える旅行商品の範囲が広いほど試験科目が増え、難易度も高くなります。下表で3区分の主要事項を整理します。
| 項目 | 総合 | 国内 | 地域限定 |
|---|---|---|---|
| 実施機関 | 日本旅行業協会(JATA) | 全国旅行業協会(ANTA) | 観光庁 |
| 受験手数料(2026年8月時点) | 13,000円(非課税)+システム利用料660円 | 8,000円(非課税)+システム利用料660円 | 5,500円(収入印紙で納付) |
| 試験形式 | マークシート・指定会場 | CBT方式・全国テストセンター | 会場筆記(マークシート) |
| 出題科目数 | 4科目 | 3科目 | 3科目 |
| 令和8年度試験日 | 10月25日(日) | 9月3日(木)~25日(金)から選択 | 9月27日(日)13:30~15:30 |
| 令和7年度合格率 | 26.1%(4,519名受験・1,179名合格) | 34.1%(全科目受験者9,759名・合格者3,330名) | — |
国内試験がCBT方式に移行したことで、全国47都道府県のテストセンターで期間中の好きな日時に受験できるようになりました。総合と地域限定は引き続き会場で一斉に受験するマークシート方式です。
総合旅行業務取扱管理者試験の出題科目
総合旅行業務取扱管理者は国内外の旅行商品を幅広く取り扱える最上位の資格です。試験は4科目で構成されており、海外旅行実務が含まれる点が他の区分との最大の違いです。
科目1:旅行業法及びこれに基づく命令
旅行業法の規定・旅行業登録制度・旅行業者の義務・旅程管理業務・行政処分の種類などが出題されます。法令そのものの条文理解が問われるため、条文を素直に読み込む学習が有効です。
旅行業法は試験全体の基礎となる科目であり、他の科目との関連も深い内容です。法律の構造を理解してから、旅行業者の登録要件・営業保証金・弁済業務保証金の仕組み・行政処分の種類といった頻出論点を体系的に押さえると、得点の安定につながります。
この科目は出題パターンが比較的定型化されており、過去問の反復練習で得点力を高めやすい科目です。条文の穴埋めや数字の正誤問題が中心のため、数値を含む条文は正確に覚えることが求められます。
科目2:旅行業約款・運送約款・宿泊約款
標準旅行業約款(募集型企画旅行・受注型企画旅行・手配旅行の各約款)・国内外の運送機関の約款・宿泊施設の約款が出題範囲です。取消料の金額・日数・変更補償金・特別補償の条件などが頻繁に問われます。
約款の条文は細かい数字が多く、「何日前から何パーセント」という形式の取消料規定は正確に覚える必要があります。各約款の規定を表形式で比較しながら暗記する学習法が効果的です。
航空運送約款・鉄道運送約款・フェリー約款・宿泊約款も出題対象です。それぞれ責任制限の考え方が異なるため、混同しないよう体系的に整理することが重要です。
科目3:国内旅行実務
国内の交通機関(JR・バス・フェリーなど)の運賃計算・旅行代金の計算・国内観光地理が出題範囲です。JR運賃の計算ルールは複雑で、特定区間の割引・学割・グループ割引の適用条件なども出題されます。
国内観光地理では、主要な観光スポット・世界遺産・特別名勝・国立公園などが問われます。地図と組み合わせながら地名と観光資源を結びつける学習が効果的です。暗記量は多い反面、一度覚えれば得点を安定させやすい分野でもあります。
国内旅行実務の計算問題は公式ルールを正確に理解したうえで練習問題を繰り返すことで対応できます。試験本番では計算機の持ち込みができないため、計算の流れを素早く確認できる訓練を積む必要があります。
科目4:海外旅行実務(総合のみ)
国際航空運賃の計算(国際線の運賃ルール・スペシャルファア)・出入国手続き・検疫・外国の観光地理・外国語(英語)が出題範囲です。総合試験特有の科目であり、4科目の中で難易度が最も高い傾向にあります。
国際航空運賃の計算ではIATAの運賃ルール・マイレージ計算・経路の制限など専門的な知識が求められます。実務経験がない受験者にとっては概念の理解から始める必要があるため、十分な学習時間の確保が重要です。
外国語(英語)の問題は航空券・ホテルの書類・案内文を読んで設問に答える形式が多く、旅行実務の文脈で使われる英語表現を中心に学習するのが効率的です。外国観光地理ではユネスコ世界遺産や主要観光スポットが頻出です。
国内旅行業務取扱管理者試験の出題科目
国内旅行業務取扱管理者は国内旅行に特化した資格で、令和4年度から試験形式がCBT方式に変わりました。全国47都道府県のテストセンターで期間中の好きな日時を選んで受験できます。3科目構成で、海外旅行実務が含まれない分、総合と比べて取り組みやすい区分です。
科目1:旅行業法及びこれに基づく命令
総合試験と同じ旅行業法の範囲が出題されます。旅行業者の登録要件・義務・旅程管理・行政処分の仕組みは総合と共通のため、総合受験経験者や国内→総合のステップアップを考える受験者にとっては学習内容が大きく重なる科目です。
旅行業法は改正が少なく条文が安定しているため、過去問の再現率が比較的高い科目です。最新の条文との相違がないか、受験年度の受験案内またはe-Gov法令検索で確認してから学習に入ることをお勧めします。
科目2:旅行業約款・国内運送約款・宿泊約款
総合試験の約款科目と共通の論点が多い科目ですが、国内試験では国内運送約款(JR・バス・フェリー等)と宿泊約款が中心となり、国際航空運送約款は出題範囲外です。標準旅行業約款の取消料・変更補償金・特別補償の規定は重要な出題論点です。
宿泊約款では旅館・ホテルの予約から解除・違約金の仕組みが問われます。「宿泊申込の承諾」「解除に伴う取消料の計算」「連帯責任の範囲」といった条文を中心に整理するのが効果的です。
科目3:国内旅行実務(CBT方式)
JRの運賃・料金計算・国内観光地理・旅行代金の計算が主な出題範囲です。総合試験の国内旅行実務と同等の内容で、CBT方式のためパソコン画面で問題と選択肢を表示しながら回答する形式ですが、出題内容そのものは会場方式と大差ありません。
国内観光地理は暗記が中心のため、地図や写真を活用した学習が効果的です。通信講座では観光地理の暗記をサポートするフラッシュカードや地図付き問題集を提供しているケースもあります。
地域限定旅行業務取扱管理者試験の出題科目
地域限定試験の位置づけと出題範囲
地域限定旅行業務取扱管理者は、特定の地域に限定した旅行商品のみを取り扱える資格です。着地型観光ビジネスや地域振興を目的とした旅行業に参入したい事業者・個人を対象としており、試験の難易度は総合・国内と比べて低い傾向があります。
出題科目は国内試験と同様の3科目構成ですが、旅行実務の範囲が取り扱い可能な地域に限定されるため、全国対象の国内試験より学習量は少なくなります。旅行業の規制・約款の基本的な仕組みは他の区分と共通しています。
試験形式と申込方法の特徴
地域限定試験は観光庁が実施し、申込は郵送で行います(受験手数料は収入印紙で納付)。令和8年度の試験日は9月27日(日)13:30~15:30で、会場での筆記試験(マークシート形式)です。
CBT方式の国内試験と異なり試験日時は固定されています。試験会場・申込期間の詳細は観光庁が公表する令和8年度受験案内でご確認ください。地域限定資格の取得後に業務範囲を拡大したい場合は、国内または総合試験への追加受験が必要になります。
合格基準と令和7年度合格率の実績
各試験の合格基準(得点率)
3区分いずれも、各科目で一定の得点率を満たすことに加えて、全科目の総合得点についても基準を超える必要があります。各科目の合格基準の目安は6割(60%)以上の得点とされており、1科目でも基準に届かない場合は不合格となります。
1科目で足切りになると総合得点が高くても不合格になるため、得意科目だけに集中して苦手科目を捨てる学習法は危険です。すべての科目を一定水準まで引き上げることが合格の基本戦略です。正確な合格基準は各実施機関が公表する受験案内でご確認ください。
令和7年度実績:総合26.1%・国内34.1%
令和7年度の結果は、総合試験の合格率が26.1%(受験者4,519名・合格者1,179名)、国内試験の合格率が34.1%(全科目受験者9,759名・合格者3,330名)でした(出典:日本旅行業協会・全国旅行業協会 令和7年度実施結果)。
総合試験の合格率は、海外旅行実務を含む4科目を通過する必要があることを踏まえると、計画的な学習が不可欠であることがわかります。国内試験はCBT化以降、全国どこでも受験しやすくなったことから受験者数が多く、3科目構成であることもあって合格率は総合より高めに推移しています。
合格率は年度によって変動するため、「例年◯%程度」という断定的な見方は正確でありません。最新の実績は各実施機関の公式サイトで確認することをお勧めします。
科目別の難易度と学習配分の目安
最難関の海外旅行実務に最大の学習時間を投下する
総合試験を受験する場合、海外旅行実務は4科目の中で最も広い出題範囲を持ちます。国際航空運賃の計算・出入国手続き・外国観光地理・外国語と多岐にわたる内容を習得する必要があるため、学習スケジュールのうえで最大の時間を確保すべき科目です。
海外旅行実務の計算問題はルールを正確に理解していれば解ける問題が多い反面、ルールの理解が曖昧なまま進むと得点が伸び悩みます。通信講座や参考書で基本ルールを体系的に習得してから演習を繰り返す方法が効果的です。
旅行業法は短期間で得点を固められる科目
旅行業法は条文の量が限られており、法律の全体構造を理解してから頻出論点を暗記することで比較的短期間で得点源にできる科目です。旅行業の登録要件・書面交付義務・行政処分の種類が頻出論点として挙げられます。
旅行業法の問題は条文に沿った正誤問題が多いため、条文を読んだうえで過去問に取り組む学習サイクルを確立することがポイントです。法改正があった箇所は特に注意が必要で、最新の条文で確認する習慣を持つことが重要です。
約款・旅行実務は過去問の反復で定着させる
旅行業約款と旅行実務は出題形式が比較的定型化されている科目です。約款の取消料計算・特別補償の条件・JRの運賃計算ルールは、過去問を繰り返し解くことで解法のパターンを習得する学習が効率的です。
通信講座では計算問題に特化した演習コンテンツを提供していることが多く、問題集を通じて実際に計算練習をすることで試験本番での処理速度と正確性が上がります。計算ミスを減らすために、日頃から計算の手順を紙に書いて確認する習慣をつけることが重要です。
科目免除制度を活用した受験戦略
国内合格者が総合を受験する際の科目免除
国内旅行業務取扱管理者試験の合格者が総合試験を受験する場合、一定の科目について免除が認められています。免除される科目・申請の条件は日本旅行業協会(JATA)が公表する受験案内に詳細が記載されており、申請手続きが必要です。
国内→総合のステップアップルートを選ぶ場合は、免除の申請を忘れると科目免除なしで受験することになります。受験申込時に免除申請の手続きを確認し、必要書類(国内試験の合格証明書等)を事前に準備しておくことが重要です。
科目免除申請の事前確認チェックリスト
国内→総合のステップアップで科目免除を申請する場合は、出願前に以下の項目を確認しておくことをお勧めします。
- 国内試験の合格証明書(原本または写し)を手元に保管してある
- JATAが公表する令和8年度受験案内で最新の免除条件を確認した
- 申込期間内に免除申請書類を準備・提出できるようスケジュールを立てた
- 免除科目以外(主に海外旅行実務)の学習スケジュールを組んだ
- 海外旅行実務の学習時間を最大限確保できるカリキュラムを選んだ

よくある質問(FAQ)
Q1. 3区分のうち、最初に受けるならどの試験がよいですか?
旅行業への就職・開業を目指す場合は「国内旅行業務取扱管理者試験」からスタートするのが一般的です。3科目構成で学習量を絞りやすく、令和7年度合格率は34.1%(全科目受験者)を記録しています。国内合格後に科目免除を活用して総合を目指すステップアップルートは多くの受験者が選んでいます。
Q2. 各科目の合格基準は何点ですか?
各科目の合格の目安は6割(60%)以上の得点とされていますが、詳細は受験年度の公式受験案内でご確認ください。1科目でも足切りになると全体得点に関わらず不合格となるため、苦手科目を捨てる戦略は危険です。
Q3. 国内試験のCBT方式とはどういうことですか?
CBT(Computer Based Testing)方式とは、全国47都道府県のテストセンターにあるPCを使って受験する方式です。令和8年度の国内試験は2026年9月3日(木)から25日(金)の期間内で、受験者が自分の都合に合わせて日時を選んで受験します。マークシートを使った会場一斉受験ではなく、期間中の好きなタイミングで受験できる点が大きな特徴です。
Q4. 海外旅行実務の英語問題に英語が苦手でも対応できますか?
外国語の問題は旅行業の文脈で使われる定型英語表現(航空券・ホテルの書類・案内文など)が中心です。日常会話の英語とは異なり、旅行実務で頻出するフレーズや文書形式のパターンを覚えることで対応できます。通信講座では外国語問題に特化した教材を提供しているところもあります。
Q5. 科目免除申請は自分で手続きできますか?
科目免除の申請は受験申込と合わせて自分で手続きできます。申請には国内試験合格証明書などの書類が必要になるため、事前に準備しておくことが重要です。手続きの詳細は日本旅行業協会(JATA)が公表する受験案内でご確認ください。
Q6. 地域限定を取得した後に国内試験を受けることはできますか?
地域限定の資格取得後に国内または総合の試験を受験することは可能です。業務範囲を全国に拡大したい場合や旅行会社への就職を目指す場合は、国内または総合の取得を検討することをお勧めします。地域限定合格による科目免除の有無は受験年度の受験案内でご確認ください。
Q7. 独学と通信講座はどちらがよいですか?
独学での合格は可能ですが、3科目(国内)または4科目(総合)にわたる出題範囲を自分でテキストを選び学習計画を立てる必要があります。総合試験は特に海外旅行実務の範囲が広く、学習の優先順位がつけにくいという声もあります。通信講座を利用することで、出題傾向に合わせた教材と学習スケジュールのサポートを受けられます。
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