観光立国推進基本法2023年改正とオーバーツーリズム対策の全知識【2026年最新】旅行業者・旅行業務取扱管理者が押さえるべき法改正ポイントと実務への影響を徹底解説

2023年(令和5年)6月、観光立国推進基本法が改正されました。新型コロナウイルス感染症からの観光回復に伴い深刻化したオーバーツーリズム(観光公害)への対策を法律の基本理念に明記した今回の改正は、旅行業者の実務と旅行業務取扱管理者試験にとっても見逃せない重要な変化です。本記事では、観光立国推進基本法2023年改正の内容・背景・旅行業法との連動関係、そして旅行業者と旅行業務取扱管理者が知るべき実務への影響を2026年最新情報をもとに体系的に解説します。

目次

観光立国推進基本法とは何か

観光立国推進基本法(平成18年法律第117号)は、「観光立国」の実現に向けた基本理念・国の責務・施策の基本事項を定めた法律です。旅行業務取扱管理者試験「旅行業法・観光立国推進基本法等」科目の出題対象であり、特に総合旅行業務取扱管理者試験では観光政策の大枠として押さえるべき法令です。

制定の経緯

日本の観光振興を国の基本政策として位置づけるために2006年(平成18年)12月に制定されました。制定当初は、国際競争力ある観光地の形成・観光産業の振興・観光旅行の促進を三本柱として掲げていました。その後、訪日外国人旅行者数の拡大に伴いインバウンド観光推進の方向性が強化され、2023年改正では持続可能性という新たな視点が加わりました。

旅行業法との関係

観光立国推進基本法は旅行業法(昭和27年法律第239号)の上位に位置する基本法です。旅行業法が旅行業者の登録・業務規制・消費者保護といった個別制度を規定するのに対し、観光立国推進基本法は観光政策全体の方向性・目標・国と地方自治体の責務を定める性格を持ちます。旅行業法の改正はしばしば観光立国推進基本計画の目標達成に向けた手段として実施されており、両法は密接に連動しています。

2023年改正の背景:オーバーツーリズムの深刻化

2023年改正を理解するうえで、その背景となったオーバーツーリズム問題を把握しておくことが重要です。

コロナ禍からの急速な観光回復と問題の顕在化

新型コロナウイルス感染症により一時的に停止していた訪日外国人旅行者が2022年後半から急回復し、2023年・2024年には過去最高水準を更新しました。この急速な回復は、同時にオーバーツーリズムと呼ばれる過度の観光集中問題を各地で顕在化させました。

  • 交通機関の混雑:富士山麓周辺の路線バス・祇園周辺の路地など、観光客と地域住民の共存が難しくなる場所が全国に出現
  • マナー問題:撮影目的の私有地侵入・ゴミの不法投棄・騒音など観光客のマナー違反が地域住民の生活を圧迫
  • 景観・自然環境の劣化:人気の自然スポットにおける植生破壊・水質汚染が各地で進行
  • 住民生活への影響:民泊の増加・観光客向け飲食店集中による地域商業の変容と生活環境の悪化

政府の対応と改正の方向性

観光庁は2022年以降、オーバーツーリズムの未然防止と対応を重要政策課題として位置づけ、全国の観光地・旅行業者・交通機関と連携した総合的な対策を推進してきました。2023年改正では、これらの対策を法律の基本理念に明文化し、国・地方自治体・観光事業者が共同で持続可能な観光を実現する責務を明確化しました。

2023年改正の主な内容

2023年6月に公布・施行された改正観光立国推進基本法の主な改正点は以下のとおりです。

①「持続可能な観光」の基本理念への明記

改正前の基本理念では「国際競争力の高い観光地の形成」と「国民の観光旅行の促進」を中心に掲げていましたが、改正後は「持続可能な形での観光立国の実現」が基本理念の冒頭に位置づけられました。

持続可能な観光(サステナブルツーリズム)とは、地域の自然・文化・歴史・住民生活への負荷を最小化しながら、観光経済の恩恵を長期にわたって享受できる仕組みを整えることを指します。世界観光機関(UNWTO)が提唱する概念であり、国際的には2010年代から主要な観光政策の指針となっています。

②オーバーツーリズム対策の明文化

改正法は、国・都道府県・市町村・観光事業者がオーバーツーリズムの未然防止および対応に取り組むことを法律上の責務として規定しました。具体的な取り組みとして想定されているのは以下の内容です。

  • 観光客の分散化:混雑ピーク時間帯・シーズンのコントロール、オフシーズンへの誘客促進
  • 地域のキャパシティ管理:入域制限・有料化・予約制の導入支援
  • マナー啓発:旅行業者を通じた旅行前の情報提供・マナー説明の推奨
  • デジタル活用:リアルタイム混雑情報の提供・オンライン予約による分散誘導

③観光地域づくりにおける旅行業者の役割の明確化

改正法は観光地域づくり法人(DMO)との連携強化を明記し、旅行業者が地域の受け入れ環境整備・コンテンツ開発・マーケティングに能動的に参加することを求める方向性を示しています。旅行業者は単なる旅行商品の販売者ではなく、観光地の持続可能性を共同で担うパートナーとして位置づけられることとなりました。

④デジタル技術を活用した観光DXの推進

改正法では観光DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進も明記され、国・地方自治体・旅行業者が情報技術を活用して観光の質を向上させることが促されています。具体的には、多言語AI案内・MaaSとの連携・非接触型サービス導入・データ連携による需要予測などが想定されています。

改正法が旅行業者の実務に与える影響

観光立国推進基本法の改正は、旅行業者の日常業務にも直接・間接の変化をもたらします。以下に旅行業者が対応を求められる主な事項を整理します。

旅行商品設計への影響

混雑ピーク時間帯に人気スポットへ集中するツアー構成は、オーバーツーリズム対策の観点から見直しが求められるようになっています。観光庁やDMOが提供する混雑データを活用して、以下のような商品設計が旅行業界のスタンダードになりつつあります。

  • オフピーク旅行の積極的な促進:閑散期・平日・早朝・夜間の観光スポット訪問を組み込んだツアー設計
  • 穴場スポット・地方誘客の強化:広域分散型ルートで地域経済への恩恵を最大化するツアー構成
  • 体験・文化プログラムの充実:「モノ消費」から「コト消費」へのシフトによる長期滞在・高付加価値化
  • 受入上限のある観光地への事前予約制対応:富士山・屋久島・白川郷など入域制限や有料入山制を導入する観光地では事前予約への対応が必須

顧客への情報提供の強化

旅行業法第12条の5(旅程管理措置義務)および標準旅行業約款に基づく旅行者への情報提供義務は従来から存在しますが、観光立国推進基本法改正後はオーバーツーリズム対策情報の提供も事実上の業界標準として期待されています。具体的には出発前のマナー説明・現地ルール周知・混雑回避策の案内などが含まれます。

DMOとの連携拡大

観光地域づくり法人(DMO)は全国に300以上存在し、旅行商品の仕入れ先・連携先として旅行業者との取引が増えています。DMOが発行する「持続可能な観光認証」や環境配慮型施設の認定を取り込んだ商品開発が、企業の社会的責任(CSR)および差別化戦略として有効性を増しています。

旅行業登録・更新への間接的影響

旅行業の第1種~第3種・地域限定の登録区分、および5年ごとの登録更新審査において、業者の社会的行動指針に変化が生じる可能性があります。観光庁は旅行業者向けのガイドラインにオーバーツーリズム対策への協力要請を盛り込んでおり、今後の法令改正や登録審査要件にも影響が及ぶ可能性があります。

旅行業務取扱管理者試験への影響

観光立国推進基本法2023年改正は、旅行業務取扱管理者試験(総合・国内)の出題にも影響を与えます。

「観光立国推進基本法等」科目の出題強化

旅行業務取扱管理者試験の法令科目は、旅行業法のほかに「観光立国推進基本法等」として観光政策関連法規を含む構成です。2023年改正により追加された「持続可能な観光」「オーバーツーリズム対策」の理念規定は今後の試験で問われる可能性があります。

試験対策として把握しておくべき改正内容は以下のとおりです。

  • 改正の施行年:2023年(令和5年)6月公布・同日施行
  • 追加された基本理念:「持続可能な形での観光立国の実現」
  • オーバーツーリズムの定義:過度な観光集中による住民生活・自然環境への悪影響
  • 国・地方自治体・事業者の責務:連携してオーバーツーリズムを防止・対応する義務
  • 観光DXとの関連:デジタル技術を活用した観光の質の向上

実務科目との連動

国内旅行実務・海外旅行実務の科目においても、オーバーツーリズム関連の知識が背景理解として有効です。例えば、富士山の有料通行制度・屋久島の入島税・国立公園での利用ルール変更などは、観光地理の知識と法令改正の両面から整理しておくと得点源となります。

各地のオーバーツーリズム対策事例と旅行業者への示唆

国内外のオーバーツーリズム対策事例を知ることは、旅行業者が持続可能な商品開発を行う際の具体的な参考になります。

富士山:入山規制と通行料の導入

2024年に山梨県側の吉田ルートで本格実施された登山者数制限(1日4,000人上限)および通行料2,000円の導入は、観光資源の持続可能な管理のモデルケースです。旅行業者は事前に予約枠を確保し、顧客への通行料説明・申し込み手続き案内が必要となります。なお実施内容は年度により変更される場合があるため、観光庁・山梨県の最新情報を随時確認してください。

京都:混雑エリアでの観光客行動指針

京都市は祇園・嵐山・金閣寺周辺などの混雑エリアでのマナー啓発・立入制限・撮影禁止エリアの設定を実施しています。旅行業者は旅程設計の段階でこれらのルールを織り込み、旅行前に顧客へ説明することが実務上のスタンダードとなっています。

屋久島:入島税・縄文杉登山の規制強化

屋久島では入島税の活用による環境保全と、縄文杉登山ルートの登山者数制限が段階的に強化されています。旅行業者は予約枠の早期確保と旅行者へのルール説明が求められます。

海外先行事例が示す今後の動向

ベルギー・ブルッヘやスペイン・バルセロナではオーバーツーリズム対策として観光税の引き上げ・クルーズ船の入港制限・新規ホテル建設規制などが先行して導入されています。日本の観光地も同様の規制強化が進む可能性があり、旅行業者は海外先行事例から商品設計への示唆を積極的に得ることが有益です。

持続可能な観光商品の開発:旅行業者の実践ポイント

2023年改正を踏まえて旅行業者が実践できる持続可能な観光商品開発の方向性を整理します。

小人数・高品質ツアーへの転換

大人数バスツアーから少人数のプレミアム体験ツアーへの転換は、観光地への環境負荷を下げながら一人あたりの利益を高める戦略です。工芸体験・農業体験・民家宿泊・地域食材の食事など、地域経済に直接貢献するプログラムを組み込むことが差別化にもつながります。

カーボン・オフセット旅行の提供

旅行に伴うCO₂排出量を算出し、環境保全活動への寄付や植林プログラムへの参加でオフセットする商品の提供が国際的に広まっています。ESG投資・サステナビリティ意識の高い法人顧客や若年層向けの訴求ポイントとして有効です。

地域資源を活かした着地型観光の強化

地方の旅行業者・地域限定旅行業者が着地型観光商品を企画・販売することは、訪問先での消費を地域に循環させる持続可能な観光の代表的な手法です。DMOや地方自治体との連携により、認知度向上・集客支援・補助金活用の可能性も広がります。

よくある質問(FAQ)

観光立国推進基本法の2023年改正は旅行業務取扱管理者試験に出ますか

可能性があります。旅行業務取扱管理者試験(総合・国内)では「観光立国推進基本法等」科目として観光政策に関する設問が出題されます。2023年改正で追加された「持続可能な観光」「オーバーツーリズム対策」の基本理念は試験範囲に含まれうるため、施行年・改正趣旨・主要条文の概要は押さえておきましょう。

オーバーツーリズムとは何ですか

観光客の集中が地域の受け入れ可能な水準(キャパシティ)を超え、地域住民の生活・自然環境・歴史的景観に悪影響を及ぼす状態を指します。日本語では「観光公害」とも呼ばれます。2023年の観光立国推進基本法改正により、オーバーツーリズム対策が国と旅行業者の責務として明文化されました。

旅行業者はオーバーツーリズム対策として具体的に何をすればよいですか

主な対応として、①混雑ピーク時間帯を避けた旅程設計、②旅行者へのマナー・現地ルールの事前説明、③入域制限・予約制が導入されている観光地への対応(通行料・予約枠確保)、④少人数・体験型商品の強化、⑤DMO・地方自治体との連携強化、が挙げられます。

富士山の通行規制への対応は旅行業者に求められますか

求められます。山梨県側の吉田ルートでは1日あたりの登山者数制限と通行料(2,000円)が設けられています。富士山を行程に含む旅行商品を販売する旅行業者は、通行料の費用説明・ゲート開放時間の旅程への組み込みが必要です。実施内容は年度により変更される場合があるため、観光庁・山梨県の最新情報を随時確認してください。

地域限定旅行業者もオーバーツーリズム対策に関与しますか

関与します。地域限定旅行業者は着地型観光を中心とする事業者として、地域のオーバーツーリズム防止に最も身近な立場にあります。DMOや観光協会との連携により、観光客の分散誘導・地域マナールールの周知・持続可能な体験商品の開発においてキーパーソンの役割を担うことが期待されています。

まとめ:観光立国推進基本法2023年改正を旅行業実務に活かす

観光立国推進基本法の2023年改正は、「量から質へ」という日本の観光政策の大きな転換を法律で確立したものです。旅行業者にとっては義務の拡大ではなく、持続可能な観光商品の開発・地域との連携強化・高付加価値化という新たなビジネスチャンスとして捉えることができます。旅行業務取扱管理者試験の受験者にとっても、改正の趣旨・基本理念・オーバーツーリズム対策の概要は試験準備として押さえておくべき知識です。法改正の背景を理解したうえで旅行業法・観光政策を体系的に学ぶことが、試験合格と実務活用の両面に役立ちます。

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旅行業務取扱管理者試験の学習をより体系的に進めたい方は、旅行業務取扱管理者通信講座のすすめを参考に、自分に合った学習スタイルを検討してみてください。


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