旅行業法では、旅行業者や旅行業務取扱管理者が法令に違反した場合に備えて、行政処分と刑事罰の2段階の制裁が用意されています。旅行業務取扱管理者試験では罰則の種類・対象行為・刑の重さが頻出論点として繰り返し問われており、「どの違反行為に何の処分・罰則が科されるか」を正確に把握しているかどうかが得点を左右します。本記事では2026年時点の旅行業法(2018年大改正後の最新内容)をもとに、是正指示・業務停止・登録取消の行政処分から刑事罰の体系まで、試験で問われる論点を体系的に解説します。
旅行業法の処分・罰則体系の全体像
行政処分と刑事罰の2本柱
旅行業法における制裁は大きく「行政処分」と「刑事罰」に分かれます。行政処分は国土交通大臣または都道府県知事という行政機関が旅行業者・旅行業者代理業者・旅行業務取扱管理者に対して行う処分で、違反の軽重に応じて「是正指示→業務停止→登録取消」という段階があります。刑事罰は裁判所が下す懲役刑・罰金刑であり、違反行為の悪質さに応じて3段階(3年以下・1年以下・30万円以下)の罰則が定められています。また、法人が絡む場合には両罰規定も適用されます。試験対策上は「行政処分の発動要件」と「刑事罰の対象行為と刑の種類・金額」を正確に覚えることが最優先です。
処分権者は登録機関が原則
旅行業者への行政処分は、その旅行業者を登録した行政庁(国土交通大臣または都道府県知事)が行います。第1種旅行業者は国土交通大臣登録のため、処分権者は国土交通大臣です。第2種・第3種・地域限定旅行業者および旅行業者代理業者は都道府県知事登録のため、処分権者は都道府県知事となります。旅行業者代理業者の処分にあたっては、所属旅行業者の登録機関にも通知されます。試験では「どの行政庁が処分権者か」よりも「処分の種類と要件」が問われることが多いですが、登録機関と処分権者が一致することも整理しておきましょう。
行政処分①:是正指示(旅行業法第18条)
是正指示の意義
是正指示は、旅行業者または旅行業者代理業者が旅行業法やその命令に違反し、旅行者の利益を害するおそれがあると認めるとき、登録行政庁が是正措置を取るよう指示する処分です。業務停止や登録取消よりも軽い段階の処分であり、「違反は認められるが直ちに業務を止めるほどではない場合」に発動されます。是正指示に従わない場合は、次の段階である業務停止命令の発動要件になります。
是正指示の主な対象となる違反行為
是正指示の対象となる主な違反行為は以下のとおりです。旅行業約款(登録約款または標準旅行業約款)を遵守しない行為、取引条件の説明義務に違反する行為、書面(取引条件説明書・契約書面)の交付義務に違反する行為、旅行業務取扱料金表の掲示義務に違反する行為、旅程管理に関する義務を果たさない行為などが含まれます。これらは旅行者保護を目的とした旅行業法の基本的な義務であり、違反した場合にまず是正指示が行われます。試験では「是正指示の対象となる行為」として選択肢に含まれることがあります。
行政処分②:業務停止命令・登録取消(旅行業法第19条)
業務停止命令の要件
業務停止命令は、一定の違反行為があった場合に6か月以内の期間を定めて旅行業務の全部または一部の停止を命じる処分です。業務停止命令が発動される主な要件は次のとおりです。
| 業務停止命令の主な発動要件 | 根拠条文 |
|---|---|
| 是正指示に従わないとき | 第19条第1項第1号 |
| 旅行業法または命令・処分に違反したとき | 第19条第1項第2号 |
| 不正の手段で登録を受けたことが判明したとき | 第19条第1項第3号 |
| 欠格事由(第6条各号)に該当するに至ったとき | 第19条第1項第4号 |
| 旅行業者代理業者との契約を適切に管理していないとき(旅行業者のみ) | 第19条第1項第5号 |
登録取消の要件
登録取消は旅行業者としての登録そのものを取り消す最も重い行政処分です。業務停止命令とほぼ同じ要件の下で発動されますが、違反の悪質性・継続性・業務停止命令に違反した場合などにより選択されます。登録を取り消された旅行業者は、取消しから5年間(欠格事由として禁錮以上の刑に処せられた場合等は刑の執行終了後5年間)は旅行業の新規登録ができません。また、業務停止命令に違反して業務を継続した場合は後述の刑事罰の対象にもなります。試験では「登録取消後に再登録できるまでの期間は何年か」として5年という数字が問われることがあります。
任意的取消と必要的取消
旅行業法第19条の規定では「取り消すことができる(任意的取消)」と「取り消さなければならない(必要的取消)」の2種類があります。任意的取消は行政庁の裁量による取消であり、必要的取消は欠格事由に該当した場合など、要件を満たした場合に行政庁が必ず取り消す義務を負う取消です。欠格事由に該当する場合(禁錮以上の刑に処せられた等)は必要的取消となる点を押さえておきましょう。
旅行業務取扱管理者への処分(旅行業法第19条の2)
管理業務一時停止と資格取消
旅行業者に対する処分とは別に、旅行業務取扱管理者個人に対する処分も旅行業法で定められています。旅行業務取扱管理者が旅行業法やその命令に違反したとき、または旅行業者が受けた処分の原因となる行為をしたときは、国土交通大臣または都道府県知事が当該管理者に対して次の処分を下すことができます。
| 処分の種類 | 内容 |
|---|---|
| 管理業務の一時停止 | 1年以内の期間を定めて旅行業務取扱管理者としての業務を停止する |
| 資格の取消 | 旅行業務取扱管理者試験の合格に基づく資格そのものを取り消す |
資格取消後の再試験
資格を取り消された旅行業務取扱管理者は、取消しの日から2年間は旅行業務取扱管理者試験を受験できません。この「2年間の受験禁止」は試験頻出の数字です。旅行業者の登録取消における再登録禁止期間(5年)と混同しないよう注意が必要です。「管理者への処分=2年」「業者の登録取消=5年」という対比で整理しておきましょう。
刑事罰の体系(旅行業法第23条~第26条)
第23条:最も重い罰則(3年以下の懲役・300万円以下の罰金)
旅行業法における最重の刑事罰は第23条に規定されており、以下の行為が対象です。行為の態様によっては懲役刑と罰金刑が併科される場合もあります。
| 対象行為 | 罰則 |
|---|---|
| 無登録で旅行業を営んだ者(無登録営業) | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(または併科) |
| 名義貸し(自己の名義を使用して他者に旅行業を営ませた者) | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(または併科) |
無登録営業は旅行業法の根幹に関わる重大違反であるため、最も重い罰則が科されます。旅行業務取扱管理者試験では「無登録営業の罰則」として頻出です。「3年・300万円」という数字を確実に覚えておきましょう。
第24条:中程度の罰則(1年以下の懲役・100万円以下の罰金)
第24条は業務停止命令に違反した場合などに適用される中程度の刑事罰です。
| 対象行為 | 罰則 |
|---|---|
| 業務停止命令に違反して旅行業務を行った者 | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金(または併科) |
| 登録取消後も旅行業務を継続した者 | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金(または併科) |
業務停止命令という行政処分を受けた後にそれを無視して業務を続けることは、法秩序を直接侵害する行為として重く扱われます。「1年・100万円」という数字も試験頻出です。第23条の「3年・300万円」と第24条の「1年・100万円」の差を整理しておくことが重要です。
第25条:軽微な違反の罰則(30万円以下の罰金)
第25条では比較的軽微な義務違反に対して30万円以下の罰金が科されます。対象となる行為は以下のとおりです。
| 対象行為(例) | 罰則 |
|---|---|
| 登録事項の変更を届け出なかった者 | 30万円以下の罰金 |
| 旅行業務取扱料金表の掲示義務に違反した者 | 30万円以下の罰金 |
| 旅行業務取扱管理者の選任義務に違反した者(管理者不選任) | 30万円以下の罰金 |
| 標識(旅行業者・旅行業者代理業者の標識)の掲示義務に違反した者 | 30万円以下の罰金 |
| 書面交付義務(取引条件説明書・契約書面)に違反した者 | 30万円以下の罰金 |
| 報告を行わないまたは虚偽の報告をした者 | 30万円以下の罰金 |
第25条の対象行為は多岐にわたりますが、罰金額はすべて30万円以下で統一されています。試験では「旅行業務取扱管理者を選任しない場合の罰則は何か」「標識を掲示しない場合の罰則は何か」といった形で問われます。「第25条=30万円以下の罰金」と覚えておくと対応しやすくなります。
第26条:両罰規定
旅行業法第26条では両罰規定が定められています。旅行業者(法人)の代表者・代理人・使用人などが旅行業法違反行為を犯した場合、行為者個人だけでなく法人に対しても各条の罰金刑が科されます。例えば旅行会社の営業担当者が無登録営業を行った場合、その担当者に3年以下の懲役・300万円以下の罰金が科される可能性があるとともに、法人(旅行会社)に対しても300万円以下の罰金が科される可能性があります。両罰規定は「企業ぐるみの違反」に対する抑止力として機能します。
試験で頻出する罰則論点まとめ
数字の整理:3年・1年・30万円の使い分け
旅行業務取扱管理者試験の罰則問題では、「どの行為に何の刑が科されるか」が選択肢の形で問われます。以下の表で数字を整理しておきましょう。
| 違反行為の代表例 | 懲役 | 罰金 |
|---|---|---|
| 無登録営業・名義貸し | 3年以下 | 300万円以下(または併科) |
| 業務停止命令違反・登録取消後の業務継続 | 1年以下 | 100万円以下(または併科) |
| 変更届出不履行・料金掲示義務違反・管理者不選任・標識掲示違反・書面交付義務違反など | なし | 30万円以下 |
旅行業務取扱管理者への処分と刑事罰の区別
旅行業務取扱管理者個人に対する処分(第19条の2)は行政処分であり、刑事罰ではありません。管理業務の一時停止(1年以内)・資格取消という行政上の処分と、懲役・罰金の刑事罰は別の制度です。試験では「旅行業務取扱管理者に対してどのような処分があるか」という形で混同を誘う出題があることがあります。管理者個人に対する直接の行政処分は「管理業務一時停止(1年以内)」と「資格取消(2年間受験禁止)」であることを確認しておきましょう。
旅行業者代理業者に対する罰則の特殊性
旅行業者代理業者は旅行業登録を持たず、所属旅行業者の代理として旅行業務を行う立場です。旅行業者代理業者が所属旅行業者の承認なく独立して旅行商品を販売した場合、これは旅行業登録なしで旅行業を営む「無登録営業」に該当し、第23条の3年以下の懲役または300万円以下の罰金(または併科)の対象となります。旅行業者代理業者固有の論点として試験に出ることがあるため、この判断基準を押さえておきましょう。
旅行業法違反の具体的なケース例
ケース①:旅行業務取扱料金表を営業所に掲示していなかった
旅行業者は旅行業務取扱料金表を各営業所の見やすい場所に掲示しなければなりません(旅行業法第12条の2)。この掲示義務に違反した場合は是正指示の対象となります。さらに放置した場合は第25条の30万円以下の罰金が科される可能性があります。試験では「料金掲示義務違反の罰則額」が問われることがあります。
ケース②:業務停止命令を受けた旅行業者が旅行商品の販売を続けた
業務停止命令を受けた旅行業者は、命令された期間中に旅行業務を行うことが禁止されます。これに違反して業務を続けた場合は第24条の1年以下の懲役または100万円以下の罰金(または併科)の対象になります。試験では「業務停止命令後の違反行為の罰則」として問われます。業務停止という行政処分を受けた後の行為は刑事罰として扱われる点に注意が必要です。
ケース③:旅行業者が旅行業務取扱管理者を欠員のまま放置した
各営業所には旅行業法上、旅行業務取扱管理者を1名以上選任することが義務付けられています。旅行業務取扱管理者が退職・死亡等で欠員となった場合、旅行業者は速やかに後任を選任しなければなりません。これを怠った場合は是正指示の対象となり、さらに改善しない場合は第25条の30万円以下の罰金に加えて、第19条の業務停止命令にまで発展する可能性があります。
まとめ:罰則体系を「段階」と「数字」で整理する
旅行業法の罰則・行政処分は、行政処分(是正指示→業務停止→登録取消)と刑事罰(3年・300万円、1年・100万円、30万円以下)の2本柱で構成されています。試験対策では「無登録営業は3年・300万円」「業務停止命令違反は1年・100万円」「掲示義務・選任義務違反は30万円以下」という対応関係を確実に覚え、旅行業務取扱管理者への行政処分(管理業務一時停止1年以内・資格取消と2年間の受験禁止)との区別を整理しておくことが重要です。条文の条番号(第19条・第19条の2・第23条・第24条・第25条・第26条)と合わせて体系的に押さえると、類似の設問にも対応しやすくなります。罰則論点は旅行業法の出題比率の中でも正答率の差がつきやすい分野ですので、繰り返し過去問を解いて確実な得点源にしましょう。
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