旅行業を開業・起業する方法【2026年最新】第3種旅行業の登録手順・費用・必要書類から選任管理者確保まで徹底解説

旅行業を開業・起業するためには旅行業法に基づく登録が必要です。無許可で旅行業を営むことは違法であり、罰則の対象となります。旅行業務取扱管理者の国家資格を取得した人が増えている中、「自分で旅行会社を立ち上げたい」「着地型観光やインバウンド事業を事業化したい」というニーズも高まっています。本記事では旅行業の種別・登録要件・手続きの流れ・費用の目安を2026年最新の旅行業法に基づいて徹底解説します。

目次

旅行業の区分と業務範囲

旅行業の5つの区分

旅行業法では、旅行業を以下の5区分に分けて登録制度を設けています。どの区分を選ぶかによって、業務範囲・登録要件・必要資金が大きく異なります。

区分 取り扱える旅行の範囲 登録行政庁 営業保証金
第1種旅行業 国内・海外の企画旅行・手配旅行すべて 観光庁長官 7,000万円
第2種旅行業 国内のすべて+海外の手配旅行 都道府県知事 1,100万円
第3種旅行業 国内の受注型企画旅行・手配旅行、海外の手配旅行 都道府県知事 300万円
地域限定旅行業 一定の地域内に限定した旅行 都道府県知事 100万円
旅行業者代理業 所属旅行業者の業務を代理 都道府県知事 不要

営業保証金は法務局に供託する金額です。ただし、JATA(日本旅行業協会)や全旅連(全国旅行業協会)の保証社員となることで、供託額を大幅に圧縮できる弁済業務保証金分担金の制度が利用できます。

第3種旅行業が個人起業・スタートアップに適している理由

旅行業の新規開業では第3種旅行業が業務範囲と開業コストのバランスが最も取りやすい区分です。第3種旅行業で認められる主な業務は以下のとおりです。

  • 国内旅行の受注型企画旅行(法人・団体からの依頼で旅行を企画・実施)
  • 国内の手配旅行(宿泊・交通の手配業務)
  • 海外旅行の手配旅行(宿泊・航空チケット等の手配業務)

地域の着地型観光商品の造成・販売、法人向けの社員旅行・研修旅行の手配、インバウンド旅行者向けの手配業務などは第3種で対応できます。小規模な旅行事業の立ち上げには十分な業務範囲を備えています。

営業保証金300万円(JATA加盟なら弁済業務保証金分担金60万円)という水準は第1種・第2種と比較すると現実的な資金規模です。さらに少額でスタートしたい場合は地域限定旅行業(営業保証金100万円、全旅連分担金15万円)という選択肢もあります。

旅行業登録の要件

財産的基礎要件

旅行業登録を受けるためには財産的基礎の要件を満たす必要があります。旅行業者が倒産・廃業した場合に旅行者が被る損害を補償できるだけの財産的基盤があることが求められます。

  • 第3種旅行業の基準資産額:300万円以上(供託または分担金方式で充当)
  • 地域限定旅行業の基準資産額:100万円以上
  • 財産的基礎の審査は登録申請書に添付する財務書類(貸借対照表等)で確認されます

欠格事由(登録拒否事由)

以下のいずれかに該当する場合、旅行業の登録を受けることができません(旅行業法第6条)。

  • 旅行業法・刑法・破産法等に基づき罰金以上の刑に処せられ、執行終了から5年を経過していない
  • 旅行業の登録を取り消された日から5年を経過していない
  • 禁錮以上の刑に処せられ、執行終了から5年を経過していない
  • 成年被後見人または被保佐人(法定代理人が欠格事由に該当する場合を含む)
  • 旅行業法に基づく業務停止命令に違反した日から5年を経過していない
  • 法人の役員が上記のいずれかに該当する場合

旅行業務取扱管理者の選任要件

旅行業登録において最も重要な要件が、各営業所への旅行業務取扱管理者の選任です。旅行業法第11条の2では、旅行業者は各営業所に少なくとも1名の旅行業務取扱管理者を専任で置かなければならないと定めています。

  • 国内旅行のみを取り扱う第3種・地域限定旅行業:国内旅行業務取扱管理者または総合旅行業務取扱管理者のいずれかで可
  • 海外旅行も取り扱う場合:総合旅行業務取扱管理者が必要
  • 選任される管理者は当該営業所に専任(常時勤務・兼務不可)

旅行業務取扱管理者の資格を自分自身が保有していれば、開業者本人が選任管理者となれます。資格を持っていない場合は有資格者を社員として採用するか、有資格者とともに法人を設立する必要があります。開業のしやすさを考えると、起業者本人が先に旅行業務取扱管理者試験に合格しておくことが最善策です。

第3種旅行業の開業手順(ステップ別解説)

ステップ1:事業計画の策定と事務所の確保

旅行業の登録申請を行う前に、以下の準備を進めます。

  • 事業計画の策定:取り扱う旅行の種類(国内企画・手配、法人向け、インバウンドなど)と収益モデルを明確にします
  • 法人または個人事業主の選択:個人事業主でも旅行業登録は可能です。ただし法人化することで社会的信用力が上がり、法人旅行業務の受注に有利です
  • 事務所(営業所)の確保:旅行業務を行う営業所が必要です。自宅の一室を事務所とすることも可能ですが、専用の事務スペースがあることが審査上の前提となります

ステップ2:旅行業務取扱管理者資格の確保

登録の最重要要件が選任管理者の確保です。起業者本人が資格を持つか、有資格者を採用します。国内旅行業務取扱管理者試験は毎年9月下旬、総合旅行業務取扱管理者試験は10月上旬に実施されます。試験合格から登録まで余裕を持って計画する場合、試験の前年から学習を開始するスケジュールが一般的です。

ステップ3:旅行業約款の設定

旅行業を営むにあたっては、標準旅行業約款(観光庁告示)をそのまま使用するか、独自約款を国土交通大臣の認可を受けて使用するかを決めます。一般的には標準旅行業約款をそのまま使用(認可不要)する方がコスト・手間ともに少なく、開業時の選択としては標準約款がほとんどです。

ステップ4:必要書類の準備

都道府県知事(第3種の場合は主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事)への登録申請に必要な主な書類は以下のとおりです。

書類名 備考
旅行業登録申請書 所定の様式。各都道府県観光担当窓口で入手
定款(法人の場合) 旅行業の事業目的が記載されていること
登記事項証明書(法人の場合) 履歴事項全部証明書
役員全員の住民票・履歴書・誓約書 欠格事由に該当しないことの確認
財産的基礎を証明する書類 直近の貸借対照表・財務諸表等
旅行業務取扱管理者の資格証明書・誓約書 選任管理者全員分
事務所の使用権原を証明する書類 賃貸借契約書・不動産登記簿謄本等
旅行業約款 標準旅行業約款使用の場合は標準約款の写し
旅行業務取扱料金表 営業所に掲示する料金体系を事前に決定しておく

ステップ5:登録申請書の提出と審査

都道府県の観光担当窓口に書類を提出します。審査期間は都道府県によって異なりますが、概ね1か月~3か月程度かかります。審査中に書類の補正を求められることもあるため、担当窓口との連絡を密にしておきます。

ステップ6:営業保証金の供託または弁済業務保証金分担金の納付

登録が認められたあと、正式に旅行業登録証が交付される前に営業保証金の供託(または保証社員として弁済業務保証金分担金の支払い)が必要です。この供託が完了し、その旨を行政庁に届け出ることで旅行業の営業を開始できます。

  • 直接供託の場合:法務局(供託所)に現金または国債等を預け、供託証明書を行政庁に提出
  • 保証社員(JATA・全旅連加盟)の場合:各協会に弁済業務保証金分担金を納付し、加盟証明書を行政庁に提出

開業費用の目安

旅行業を開業するために必要な資金の概算(第3種旅行業の場合)は以下のとおりです。費用は都道府県・法人形態・協会加盟の有無によって変動するため、事前に管轄窓口への確認を推奨します。

費目 直接供託の場合 JATA加盟(分担金)の場合
登録申請手数料 約40,000円 約40,000円
営業保証金(供託) 3,000,000円 不要
弁済業務保証金分担金 不要 600,000円
JATA入会金・年会費 不要 別途発生(規模による)
事務所の初期費用・設備 家賃・保証金・PC・通信費等(規模による)
旅行業務取扱管理者試験の受験費用 国内:5,800円、総合:6,500円

JATA(日本旅行業協会)の保証社員になることで直接供託と比べて必要資金を大幅に抑えられます。JATA加盟では弁済業務保証金分担金60万円に加え入会金・年会費が発生しますが、300万円の現金を長期間供託し続けるコストと比較すると、多くのケースで加盟のほうが資金効率は高いとされています。

地域限定旅行業の場合は供託額が100万円(全旅連分担金15万円)とさらに小さいため、先に地域限定旅行業として開業・実績を積んだのちに第3種へ種別変更するルートも選択肢の一つです。

開業後に押さえるべき実務ポイント

旅行業務取扱料金の掲示義務

旅行業者は旅行業務取扱料金を各営業所に掲示し、旅行者から見やすい状態にしておかなければなりません(旅行業法第12条)。掲示事項は旅行業務を取り扱う各業務の手数料・取扱料金の上限または一覧です。開業時に事前に料金体系を決定し、営業所内に掲示します。

標準旅行業約款の掲示・交付

旅行業約款は営業所内に掲示するとともに、旅行者から求められた場合は交付しなければなりません。電子的な方法(Webサイト掲載等)での代替も認められています。標準旅行業約款は観光庁のWebサイトから入手できます。

旅行業登録証の有効期間と更新

旅行業の登録には5年ごとの更新があります。有効期間満了の日前に更新登録申請をしなければ登録の効力を失います(旅行業法第6条の2)。更新申請は有効期間満了の日の2か月前から受付されるため、失念しないよう社内でリマインド管理することが重要です。

禁止行為と広告規制の遵守

旅行業法では旅行業者に対し、誇大広告の禁止・不当な取引誘引の禁止・旅行者に不利益となる旅行条件の変更への罰則など複数の行為規制があります。特にWebサイトやSNSで集客を行う場合は表示内容が誇大広告にならないよう確認が必要です。旅行業務取扱管理者の管理業務には旅行者への適切な情報提供が含まれており、管理者として法令コンプライアンスの確保に責任を持ちます。

旅行業務取扱管理者資格が開業の鍵になる理由

旅行業の開業において旅行業務取扱管理者資格は「必要条件」です。資格なしでは選任管理者を立てられず、旅行業登録そのものを受けることができません。一方で資格さえあれば、個人事業主としても法人の代表としても旅行業を合法的に開業できます。

また、旅行業務取扱管理者の学習過程で旅行業法・標準旅行業約款・旅行業務の実務知識を体系的に習得できます。開業後に必要となる法令遵守・約款管理・顧客対応の基礎力が試験対策を通じて身につく点でも、資格取得には実務的な意義があります。

国内旅行業務取扱管理者であれば受注型国内企画旅行・国内手配旅行を取り扱える第3種旅行業の選任管理者となれます。海外旅行の手配業務も将来的に拡大したい場合は、開業後に総合旅行業務取扱管理者試験の取得を目指すステップアップも有効な戦略です。

よくある質問

旅行業を個人事業主として開業できますか?

可能です。旅行業法上の旅行業登録は法人格がなくても申請できます。個人事業主として登録した場合、事業主本人が選任管理者となることが多く、自分自身の旅行業務取扱管理者資格を直接活用できます。ただし法人と比較して社会的信用力が低いと見られるケースがあり、法人旅行(BtoB)を中心に事業展開する場合は法人化が有利です。

第3種旅行業で海外旅行の業務はできますか?

海外旅行の手配旅行(宿泊・航空チケット等の手配業務)は第3種旅行業でも可能です。ただし、海外の「募集型企画旅行」(ツアーパッケージを企画し不特定多数に販売する業務)は第1種のみに認められているため、第3種では行えません。海外への受注型企画旅行も第3種では制限があります。

選任管理者は複数の営業所を掛け持ちできますか?

原則としてできません。旅行業法では旅行業務取扱管理者は各営業所に「専任」で置くことが義務づけられています。複数の営業所を開設する場合は各営業所に1名以上の選任管理者が必要です。社内に有資格者が1名しかいない場合、新営業所の開設は有資格者を追加で確保してからとなります。

登録から実際の営業開始まで何か月かかりますか?

申請書類の準備から営業開始まで概ね3か月~6か月が目安です。書類準備に1か月前後、行政の審査に1か月~3か月、営業保証金の供託・届出に1か月程度が加わります。都道府県によって審査期間は異なるため、管轄の担当窓口に事前相談しておくと正確なスケジュールを把握できます。


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