旅行業界で使われるGDS(グローバル流通システム)完全解説【2026年最新】アマデウス・セーバー・ワールドスパンの役割と旅行業務取扱管理者が知るべき予約システムの基礎

旅行会社のカウンターやオンライン予約サイトで航空券・ホテル・レンタカーが数秒で検索・予約できるのは、裏側でGDS(Global Distribution System:グローバル流通システム)と呼ばれる巨大なITインフラが動いているからです。旅行業界の根幹を支えるGDSは航空会社・ホテル・旅行会社を結ぶ情報流通の基盤であり、旅行業界で働く人なら必ず知っておくべき仕組みです。本記事ではGDSの基本概念・主要3社の特徴・旅行会社での活用方法・OTAやNDCとの関係・旅行業務取扱管理者試験との接点まで体系的に解説します。

目次

GDS(グローバル流通システム)とは何か

GDSの定義と役割

GDS(Global Distribution System)は、航空会社・ホテル・レンタカー会社・鉄道会社などのサプライヤーと、世界中の旅行代理店・OTA(オンライン旅行代理店)を結ぶリアルタイム予約・情報流通プラットフォームです。一つのGDSに接続することで旅行代理店は数百社の航空会社・数十万軒のホテルの在庫・料金をリアルタイムで照会し、予約・発券・変更・取消を一元的に処理できます。旅行業界では「予約システム」「CRS接続端末」と呼ばれることもありますが、現代のGDSはただの予約ツールにとどまらず、運賃計算・旅程管理・BSP精算まで旅行実務全般を支えるシステムです。

CRSからGDSへの歴史的経緯

GDSの前身はCRS(Computer Reservation System:コンピュータ予約システム)です。1960年代にアメリカン航空が自社の座席管理を電算化したことが起源で、当初は各航空会社が独自のCRSを構築していました。1970年代以降に旅行代理店向けに開放され、複数の航空会社の在庫を一括検索できるようになったことで「グローバル」な流通システムへと進化しました。1990年代以降は航空券だけでなくホテル・レンタカー・クルーズ・鉄道まで予約対象を拡大し、現在のGDSとしての形態が確立されました。日本では全日空系のANASEATECや日本航空系のJALRSなど独自システムもありましたが、現在はグローバル大手3社への統合が進んでいます。

主要GDS3社の特徴と市場シェア

Amadeus(アマデウス)

スペイン・マドリードに本社を置くAmadeusは、世界最大の市場シェアを持つGDSです。1987年にエールフランス・イベリア航空・ルフトハンザ・SASが共同設立し、ヨーロッパを拠点に世界展開しました。全世界の航空会社500社以上・ホテル90万軒以上の在庫に接続しており、旅行代理店・航空会社・ホテルのIT管理システムまで手がける総合旅行ITソリューション企業です。日本では大手旅行会社・航空会社のチェックインシステムにもAmadeusが採用されており、国内の旅行業務においても接触頻度が高いシステムです。

Sabre(セーバー)

アメリカ・テキサス州に本社を置くSabreは、アメリカン航空が1960年代に構築したCRSを母体とするGDSです。北米市場に強みを持ち、特に北米発着の旅行予約・航空会社のPSS(旅客サービスシステム)分野で高いシェアを誇ります。旅行代理店向けの予約端末「Sabre Red 360」は世界中の旅行代理店に普及しており、北米を中心とするビジネストラベル分野での存在感が大きいシステムです。

Travelport(トラベルポート)・Galileo・Worldspan

Travelportは、Galileo(ガリレオ)・Worldspan(ワールドスパン)・Apollo(アポロ)という3つのGDSブランドを統合した企業です。Galileoはユナイテッド航空が母体でヨーロッパ・アジア太平洋に強く、Worldspanはデルタ航空・ノースウエスト航空が母体でOTAとの接続に強みを持ちます。日本ではTravelport Galileoが旅行会社向けに提供されており、中堅・中小の旅行代理店を中心に使われています。

GDS名 本社 強み 日本での主な利用者
Amadeus(アマデウス) スペイン ヨーロッパ・アジア・総合ITソリューション 大手旅行会社・航空会社チェックインシステム
Sabre(セーバー) 米国(テキサス) 北米・ビジネストラベル・航空PSS 北米路線を扱う旅行会社・法人旅行部門
Travelport(Galileo・Worldspan) 英国 OTA接続・中堅旅行代理店 中堅・中小旅行代理店

GDSの仕組みと旅行予約の流れ

旅行代理店がGDSを使った予約処理の手順

旅行代理店がGDSを使って航空券を予約する手順は以下のとおりです。まず担当者がGDS端末(PCソフトウエア)で出発地・目的地・日程・クラスを入力して空席照会をします。GDSは接続する航空会社のシステムにリアルタイムでアクセスし、利用可能なフライト・座席クラス・運賃オプションを一覧表示します。担当者が最適な選択肢を選んで仮予約(PNR:旅客名簿記録)を作成し、旅行者情報・連絡先・支払い方法を入力します。発券期限内にチケットを発券すると、BSP(銀行決済システム)を通じて航空会社への精算処理が自動的に記録されます。この一連のプロセスがGDS上でシームレスに完結するため、担当者は複数の航空会社に個別に問い合わせる必要がなく、業務効率が大幅に向上します。

BSP(銀行決済システム)との連携

BSP(Billing and Settlement Plan)はIATAが運営する航空会社と旅行代理店間の一元決済システムで、GDSと密接に連携しています。旅行代理店はBSPに加盟することで複数の航空会社に個別に口座を開設することなく、BSPへの一括送金で複数社分の航空券代金を精算できます。日本のBSPはIATA日本支部が管理しており、GDS端末から発券した航空券はBSPの精算データに自動的に連携されます。旅行業務取扱管理者試験ではBSPが直接出題されることは少ないですが、国際航空運賃の実務知識としてGDSとBSPの関係を理解しておくことは総合旅行業務取扱管理者試験対策にも役立ちます。

旅行会社のGDS活用実態

GDS端末を使う業務の種類

旅行会社がGDSを活用する主な業務は航空券の予約・発券にとどまりません。ホテルの空室照会・予約・確認書発行、レンタカーの予約、旅程表(Itinerary)の自動生成、座席指定・特別ミール申請などのSSR(特別サービスリクエスト)入力、予約変更・取消処理まで、旅行実務の大部分をGDS上で完結できます。大手旅行会社では社内システムとGDSを連携させてパッケージ旅行の在庫管理・料金計算まで自動化しており、担当者が旅程設計に集中できる環境が整っています。

GDSのコストと旅行代理店のビジネスへの影響

旅行代理店がGDSを利用する際、原則としてGDS会社に対してセグメントフィー(予約1件あたりの手数料)が発生します。一方でGDS会社は旅行代理店に対してインセンティブ(リベート)を支払う仕組みもあり、実質的な負担はGDS利用量と交渉力によって異なります。航空会社はGDS参加費として接続料を支払っていますが、近年はNDC(後述)の普及によりGDS経由のコストを削減しようとする航空会社も増えています。旅行代理店経営においてGDS費用は主要コストの一つであり、GDSの選択と利用効率は収益性に直接影響します。

NDC(新流通規格)とGDSの共存

NDCとは何か

NDC(New Distribution Capability:新流通規格)はIATAが2012年に推進を開始した航空業界の新しいデータ通信規格です。従来のGDSでは航空会社が提供できる情報が画一的で、付帯サービス(手荷物・座席指定・食事オプションなど)の個別販売や旅行者の好みに合わせたパーソナライズが困難でした。NDCは航空会社と旅行代理店・OTA間のAPIベースの直接接続を可能にし、航空会社が独自の付帯サービスをリアルタイムで提供できる仕組みを実現します。NDCの普及により、GDS経由に限定されていた旅行代理店の予約チャネルが多様化し、航空会社・旅行代理店・旅行者それぞれのビジネス環境が変化しています。

NDCがGDSと旅行業界に与える影響

NDCの普及は旅行業界で「GDS離れ」とも表現される変化を引き起こしています。ルフトハンザグループやブリティッシュ・エアウェイズなど欧州大手航空会社はGDS経由の予約に追加手数料を課す方針を取り、NDC接続や自社直販を促す戦略を進めています。一方でAmadeus・Sabre・Travelportの大手GDS3社もNDCコンテンツの取り込みを進めており、GDS自体がNDCアグリゲーターとして機能するモデルへの移行が進んでいます。旅行代理店の立場からは、GDS一本に依存した予約業務からNDC接続・GDS・OTA API等を組み合わせたマルチチャネルへの対応が今後の課題となっています。

旅行業務取扱管理者試験とGDSの関連性

試験の直接出題範囲ではないが実務知識として重要

旅行業務取扱管理者試験(国内・総合・地域限定)の出題科目にGDS・CRSという用語が直接出題されることはほとんどありません。試験の出題範囲は旅行業法・標準旅行業約款・国内旅行実務・海外旅行実務(総合のみ)に絞られており、予約システムの固有名称が問われることは稀です。しかし国際航空運賃計算(IATA運賃ルール・NUC・MPM・TPM)やBSP精算の仕組み・タリフの読み方など、GDSが担う業務と重なる実務知識は総合試験の「海外旅行実務」科目で頻出します。GDSを通じた航空券手配の流れを理解していると、航空運賃計算問題や予約・発券に関する設問への理解が深まります。

合格後の実務でGDSが必須スキルになる理由

旅行業務取扱管理者試験に合格して旅行会社に就職・転職した場合、GDS操作スキルは入社後の研修で習得する最重要項目の一つです。多くの旅行会社では新入社員研修でGDS端末の基本操作(空席照会・PNR作成・発券・変更・取消)を集中的にトレーニングします。GDS操作の習得スピードが業務デビューの早さに直結するため、業界入門前にGDSの仕組みを理解しておくことは就職後の適応を有利にします。旅行業務取扱管理者の資格を持ちつつGDSの基礎知識も備えていると、採用面接での差別化にもなります。

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よくある質問

Q1. GDSと旅行予約サイト(OTA)の違いは何ですか

GDSは旅行代理店や航空会社など業界関係者向けのB2B(企業間)予約プラットフォームです。一方のOTA(楽天トラベル・Expediaなど)は一般消費者向けのB2C(企業消費者間)予約サービスです。多くのOTAはGDSに接続して在庫・料金情報を取得し、消費者向けに加工・提供しています。GDSはOTAの「情報源・バックボーン」として機能していることが多く、両者は対立ではなく補完関係にあります。

Q2. 旅行業務取扱管理者試験でGDSの知識は必要ですか

GDS自体は試験の直接出題範囲ではありませんが、GDSが担う航空券発券・BSP精算・国際航空運賃計算の関連知識は総合旅行業務取扱管理者試験の「海外旅行実務」科目で重要です。試験合格後に旅行会社で実務を行う際にはGDS操作スキルが必須になるため、業界入門前に仕組みを理解しておくことを推奨します。

Q3. 日本の旅行会社ではどのGDSが最もよく使われていますか

大手旅行会社ではAmadeusの利用が多く、中堅・中小ではTravelport(旧Galileo)も普及しています。Sabreは北米路線を中心に扱う旅行会社での利用が比較的多いとされています。企業によって複数のGDSを目的別に使い分けているケースもあり、近年はNDC接続の拡大に伴いGDS一本ではなく複数チャネルを併用する旅行会社が増えています。

Q4. NDCが普及するとGDSはなくなりますか

現時点では「GDSがなくなる」という状況には至っておらず、当面はGDSとNDCが共存する形が続くとみられています。GDS大手3社もNDCコンテンツの取り込みを進めており、GDSがNDCのアグリゲーターとして機能するモデルが成立しています。旅行代理店にとってGDSは依然として最も幅広い在庫にアクセスできる環境であり、完全な移行には時間がかかると予想されます。

Q5. 旅行業務取扱管理者の資格取得後にGDS操作は学べますか

はい、ほとんどの旅行会社では入社後の研修でGDS操作を習得する機会が設けられています。旅行業務取扱管理者の資格は業界知識・法令理解の証明として機能し、GDS操作は入社後のOJT(実務訓練)で習得するという分業が一般的です。旅行会社に入社する前にGDSの仕組みを理解しておくことは研修の吸収を速める効果があります。

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