旅行業務取扱管理者には総合・国内・地域限定の3区分があり、そのなかで「地域限定旅行業務取扱管理者試験」は観光庁が直接実施する唯一の区分です。受験手数料が5,500円と他の2区分より低く、試験科目も絞り込まれた構成になっています。本記事では令和8年度(2026年度)の確定情報をもとに、試験制度の概要から申込方法・科目内容・合格後の活用法まで体系的に解説します。

地域限定旅行業務取扱管理者試験とは
試験の位置づけと創設の経緯
旅行業務取扱管理者は、旅行業者等が営業所ごとに1名以上の選任を義務付けられた資格です(旅行業法第11条の2第1項)。試験の実施主体は観光庁長官であり(法第11条の3第1項)、現在は総合・国内・地域限定の3区分が設けられています。
地域限定旅行業務取扱管理者試験は、平成29年法律第50号(通称「2018年改正」、2018年1月4日施行)によって新たに加わった区分です。改正前は総合と国内の2区分のみで試験が実施されていました。なお、地域限定旅行業という登録の種別自体は改正前から旅行業法施行規則に存在していましたが、これに対応する管理者試験区分がこの改正で整備されました。
旅行業務取扱管理者の選任義務の名宛人は旅行業者等(事業者)です。旅行業法には、資格を持たない個人の業務を直接禁じる規定や処罰する規定は存在しません。違反時のペナルティとして登録拒否(法第6条第1項第9号)、新たに選任するまでの旅行者との契約締結禁止(法第11条の2第2項)、30万円以下の罰金(法第79条第3号・第4号)が設けられており、いずれも名宛人は事業者です。
観光庁が直接実施する唯一の区分
総合旅行業務取扱管理者試験は日本旅行業協会(JATA)が、国内旅行業務取扱管理者試験は全国旅行業協会(ANTA)が、それぞれ観光庁長官の委任を受けて試験事務を行っています(法第69条第1項)。JATAとANTAが試験事務を担うのは、旅行業協会が観光庁長官への申請によって試験事務を行わせてもらっているからです。
一方、地域限定旅行業務取扱管理者試験は観光庁が直接実施しており、JATA・ANTAは関与していません。このため受験案内の入手先・申込窓口・問い合わせ先はすべて観光庁となり、JATAやANTAとは別の手続きが必要です。受験を検討する際は総合・国内試験の案内と混同しないよう注意してください。
令和8年度の試験概要
受験手数料・システム利用料(令和8年度)
令和8年度(2026年度)の受験手数料は5,500円(非課税)です。支払い方法は収入印紙を出願書類に貼付する形式で行います。総合試験(13,000円)・国内試験(8,000円)と比べると最も低い設定であり、郵送申込に対応した収入印紙納付方式は他の2区分にはない特徴です(2026年8月時点の確定値。最新の受験案内は観光庁公式ページでご確認ください)。
総合・国内試験ではインターネット申込時に660円(税込)のシステム利用料が別途かかります。地域限定試験はシステム利用料がなく、初期費用として必要な手数料は5,500円のみです。
試験日程・会場・試験形式(令和8年度実績)
令和8年度の試験は2026年9月27日(日)13:30~15:30に実施されました。試験方式は会場における筆記試験(マークシート方式)であり、全国の指定会場で一斉に行われます。
試験方式の違いは受験準備においても重要です。国内試験はCBT方式(テストセンターでPC操作)であるのに対し、地域限定試験は会場でマークシートに記入する方式です。総合試験も会場のマークシート方式ですが、総合試験は10月下旬の実施であり、地域限定試験とは試験日が約1か月異なります(令和8年度の総合試験は10月25日)。試験会場・受験日程の最新情報は、毎年観光庁が公表する受験案内でご確認ください。
受験申込の手続きと注意点
地域限定試験の受験申込は郵送による書面申請です。5,500円分の収入印紙を出願書類に貼付して観光庁宛てに送付します。総合・国内試験はインターネット申込(書面申請不可)であるのに対し、地域限定試験は書面申請のみという点が大きく異なります。
申込期間・提出先住所・必要書類の詳細は、毎年観光庁が公表する受験案内に記載されます。書類の不備や収入印紙の金額ミスがあると申込が受理されない場合があります。受験案内を早めに入手して、提出期限に余裕を持って準備を進めることが重要です。
以下は受験申込前に確認しておきたい主なポイントです。
- 観光庁の最新受験案内をダウンロードまたは入手する
- 5,500円分の収入印紙を郵便局等で購入する
- 出願書類に収入印紙を貼付し、指定の送付先に郵送する
- 申込期間内に送付できるよう日程を逆算して準備する
- 合格後の免除申請に備えて合格証書を安全に保管する
試験科目と出題の特徴
地域限定試験の3科目
地域限定旅行業務取扱管理者試験は3科目で構成されています。施行規則第12条および観光庁の公表情報によれば、国内旅行業務取扱管理者試験の科目構成から特定の項目を除いた内容となっています。
- 法及びこれに基づく命令(旅行業法・施行令・施行規則)
- 旅行業約款、運送約款及び宿泊約款(航空運送約款を除く)
- 国内旅行実務(全国地理及び航空運送関係を除く)
国内試験の約款科目には航空運送約款が含まれますが、地域限定試験では除かれています。また、国内旅行実務から全国地理および航空運送関係が除外されています。これらの除外項目は地域限定旅行業の業務範囲(拠点区域内の本邦内旅行)と対応しており、試験範囲が業務の実態に即した構成になっています。
法令科目の重要論点
「法及びこれに基づく命令」科目は、旅行業法本体・施行令・施行規則の条文理解が問われます。この科目の出題範囲と水準は総合・国内試験とほぼ共通しており、登録制度・財産的基礎・営業保証金・旅程管理・標準旅行業約款の認可・外務員制度・罰則など旅行業法の主要制度が対象です。
法令科目で特に押さえるべき点は、権限を持つ行政庁の正確な把握です。旅行業の登録は観光庁長官の権限(法第3条)であり、旅行業協会の指定も観光庁長官が行います(法第41条第1項)。旅程管理主任者を認定・登録するのも観光庁長官の登録を受けた登録研修機関です(法第12条の11第1項)。旅行業法の現行条文に「国土交通大臣」は登場しません。行政庁の誤認は典型的な失点パターンです。
また、旅行業法には「業務独占」や「名称独占」の規定は存在しません(条文全文で0件)。管理者資格は事業者の選任義務(法第11条の2第1項)として定められており、「無資格者が旅行業務を行うことを禁じる規定」ではない点を正確に理解しておくことが重要です。
約款科目と実務科目の特徴
旅行業約款・運送約款・宿泊約款の科目は、旅行業務取扱管理者試験のすべての区分・すべての受験区分(科目合格制を含む)で免除のない必須科目です。地域限定試験では航空運送約款が除かれていますが、標準旅行業約款(募集型・受注型・手配旅行契約の約款)・JR旅客営業規則・旅館ホテル標準営業約款は確実な学習が必要です。
国内旅行実務科目は、地域限定試験では全国地理と航空運送関係が除外されています。出題は主に国内のJR運賃・料金計算、宿泊料金の計算、バス・フェリーの運賃算定など地域内の旅行手配に関連する内容が中心となります。計算問題は繰り返し演習して手順を定着させることが得点につながります。
総合・国内試験との比較
3区分の主要項目比較
| 項目 | 総合 | 国内 | 地域限定 |
|---|---|---|---|
| 試験実施 | JATA(観光庁長官から委任) | ANTA(観光庁長官から委任) | 観光庁(直接実施) |
| 試験方式 | マークシート(指定会場) | CBT方式(全国テストセンター) | マークシート(指定会場) |
| 令和8年度試験日 | 2026年10月25日(日) | 2026年9月3日(木)~25日(金)から選択 | 2026年9月27日(日)13:30 |
| 受験手数料 | 13,000円(非課税) | 8,000円(非課税) | 5,500円(非課税・収入印紙) |
| システム利用料 | 660円(税込) | 660円(税込) | なし |
| 申込方法 | インターネット | インターネット(書面不可) | 郵送(書面) |
| 科目数 | 4科目 | 3科目 | 3科目 |
| 選任できる営業所の条件 | 取り扱う旅行の範囲を問わず全営業所 | 本邦内の旅行のみの営業所(拠点区域を超える場合も可) | 拠点区域内の本邦内旅行のみの営業所に限る |
※令和8年度の数値(2026年8月時点確定値)。最新情報は観光庁・JATA・ANTAの公式受験案内でご確認ください。選任できる営業所の条件は旅行業法第11条の2第6項の規定(取扱旅行の範囲による)。登録種別(第1種・第2種等)による区分ではありません。
難易度・学習範囲の違い
出題科目の数・範囲という点では、地域限定試験が最も絞り込まれた構成です。航空運送関連の知識(航空運送約款・航空運賃の計算・全国地理の全国版)が不要なため、学習を法令・約款・地域内の旅行実務に集中させられます。総合試験は4科目(海外旅行実務を含む)と最も広い範囲をカバーするため、学習量も多くなります。
各区分の合格率については、令和7年度は総合が26.1%(受験者4,519名・合格者1,179名)、国内が34.1%(全科目受験者9,759名・合格者3,330名)でした(一次ソース: JATA・ANTA令和7年度実施状況)。地域限定試験の令和7年度の合格率・受験者数は、観光庁の公式発表でご確認ください。
科目免除制度の活用
地域限定合格後に受けられる免除
地域限定旅行業務取扱管理者試験の合格者は、総合・国内試験ともに「法及びこれに基づく命令」(法令科目)の免除を申請できます(施行規則第20条第2号)。1つの試験に合格することで他の2区分の法令科目を免除できるのは、地域限定試験が法令科目を出題範囲・水準ともに総合・国内試験と共通して設定しているためです。
地域限定試験をファーストステップとして活用し、法令科目を免除しながら総合・国内試験の上乗せ科目(国内の約款・実務、さらに総合の海外旅行実務)に集中する学習計画を立てることも可能です。
免除申請は必ず行う必要がある
免除は申請しなければ受けられません(施行規則第13条第2項)。試験の申込時に合格証書(合格番号)の提出・入力が必要であり、申請を怠ると全科目受験になります。地域限定試験に合格した後、次の試験の申込時に免除申請の手続きを行うかどうかを忘れずに確認してください。
また、科目合格(ある試験年度で1つの科目に合格した場合)による翌年度の同一試験区分内での免除(施行規則第20条第3号~第6号)は、試験区分をまたいで持ち越すことはできません。地域限定試験の科目合格は総合・国内の科目合格には転用できません。地域限定合格(区分合格)による法令免除と、科目合格による翌年度免除は別の制度です。
約款科目は免除されない
旅行業約款・運送約款・宿泊約款の科目は、どの区分のどの免除制度でも免除の対象になりません。地域限定・国内・総合のすべての区分において、すべての受験者が必ず受験する科目です。試験勉強では約款科目を「必ず解かなければならない科目」として優先的に対策してください。
合格後の活用場面とキャリア
選任できる営業所の条件(法第11条の2第6項)
旅行業務取扱管理者の選任基準は、旅行業の登録種別(第1種・第2種・第3種・地域限定)ではなく、その営業所が取り扱う旅行の範囲によって決まります(法第11条の2第6項の3区分)。地域限定旅行業務取扱管理者は、同条第6項第1号「拠点区域内の本邦内旅行のみ」を取り扱う営業所(ただし「当該営業所の所在する地域に係るものに限る」)に選任できます。
拠点区域とは、その営業所が存する市町村の区域・これに隣接する市町村の区域および観光庁長官が定める区域を指します(施行規則第1条の3第1項第3号・第10条の5)。営業所の拠点区域を超えた旅行を取り扱う場合は、地域限定管理者を選任することはできません。その場合は国内または総合の管理者が必要です。
なお、第1種旅行業者であっても、ある営業所が拠点区域内の本邦内旅行のみを取り扱うのであれば、地域限定管理者を選任することも認められます。逆に地域限定旅行業者であっても、拠点区域を超える旅行を扱う営業所があれば国内または総合管理者の選任が必要です。選任の判断基準はあくまで「営業所ごとの取扱旅行の範囲」であることを正確に理解しておく必要があります。
着地型観光・地域観光事業での活躍
近年は地域の観光資源を活かした着地型旅行商品(旅行者が現地で参加する体験・ツアー)の需要が高まっています。地域限定旅行業はこうしたビジネスに適した登録種別であり、比較的低い参入コスト(営業保証金最低15万円・基準資産額100万円)で旅行業の事業者として登録できます。
地域の観光協会、農泊や体験型観光を運営するNPO・法人、地方移住後に小規模な旅行事業を始めたい個人など、地域限定の枠組みが活用される場面は広がっています。地域限定旅行業務取扱管理者の資格は、こうした事業を法令に則って運営する際に直接求められる資格です。
地域限定旅行業の登録要件
営業保証金と基準資産額(確定値)
地域限定旅行業として登録するには、旅行業法が定める財産的基礎の要件を満たす必要があります。登録申請先は主たる営業所の所在する都道府県知事です(施行規則第1条の2・法第67条・施行令第5条第1項)。
旅行業法施行規則別表第一が定める地域限定旅行業の営業保証金の最低額は15万円(前事業年度の旅行者との取引額が400万円未満の場合)です。取引額が増えると逓増する仕組みになっており、400万円以上5,000万円未満では100万円、5,000万円以上2億円未満では300万円に増額されます(2026年9月時点確定値。根拠: 旅行業法施行規則別表第一)。
基準資産額は旅行業法施行規則第3条が規定しており、地域限定旅行業は100万円です。基準資産額と営業保証金は別の概念であり混同しないことが重要です。地域限定旅行業の「100万円」は基準資産額であって、営業保証金の最低額は15万円です(取引額400万円未満の場合)。
旅行業協会への加入と弁済業務保証金分担金
旅行業協会(ANTAまたはJATA)に加入することで、法務局への営業保証金の供託に代えて弁済業務保証金分担金を協会に納付する方法を選べます。分担金の額は弁済業務規約が定める額であり、観光庁の資料では「本来の営業保証金の5分の1に当たる額」と説明されています。地域限定旅行業で取引額400万円未満の場合、15万円の5分の1にあたる3万円が目安となります。
旅行業協会への加入は分担金の軽減以外にも、消費者との苦情解決制度(法第45条)・業界情報の提供・研修機会などのメリットがあります。地域限定旅行業の開業を計画する際には、協会加入の要件・費用も含めて情報収集してください。最新の加入要件・費用は各協会の公式情報をご確認ください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 地域限定旅行業務取扱管理者試験に受験資格はありますか?
受験資格(年齢・学歴・実務経験の制限)は設けられていません。どなたでも受験できます。受験にあたっては、観光庁が毎年公表する最新の受験案内を確認し、郵送による所定の出願手続きを行ってください。
Q2. 地域限定試験に合格すると、総合・国内試験でどの科目が免除されますか?
地域限定試験の合格者は、総合・国内試験ともに「法及びこれに基づく命令」(法令科目)の1科目が免除の対象となります(施行規則第20条第2号)。ただし免除は自動的には適用されず、試験申込時に合格証書等の提出(申請)が必要です(施行規則第13条第2項)。申請しなければ全科目受験になるため、合格後は証書を大切に保管し、次の受験申込時に手続きを忘れないようにしてください。
Q3. 地域限定旅行業務取扱管理者は、どのような営業所に選任できますか?
「拠点区域内の本邦内旅行のみ」を取り扱う営業所に限り選任できます(旅行業法第11条の2第6項第1号)。選任できる範囲の判断基準は旅行業の登録種別(第1種・第2種など)ではなく、その営業所が実際に取り扱う旅行の範囲です。海外旅行や拠点区域を超えた本邦内旅行を取り扱う場合は、国内または総合の管理者が必要です。
Q4. 受験手数料の支払いに収入印紙が必要なのはなぜですか?
地域限定試験は観光庁が直接実施しており、申込が郵送書面方式のため収入印紙を書類に貼付する形式が採用されています。総合・国内試験はインターネット申込でクレジットカード等の決済が可能ですが、地域限定試験は書面申込のみです。収入印紙は郵便局の窓口で購入できます。5,500円分を出願書類の所定欄に貼付して送付してください。
Q5. 地域限定旅行業を開業するには、試験合格以外に何が必要ですか?
旅行業法上は、主たる営業所の所在地の都道府県知事への登録申請(施行規則第1条の2)、財産的基礎の要件(基準資産額100万円・施行規則第3条)、営業保証金の供託(最低15万円・施行規則別表第一、2026年9月時点)または旅行業協会への加入と弁済業務保証金分担金の納付が必要です。また、登録申請書に管理者を確実に選任できることの確認書類も求められます。具体的な申請書類・手続きは都道府県の担当窓口または観光庁の公式情報でご確認ください。
旅行業務取扱管理者の通信講座については、以下のページでも詳しく解説しています。
旅行業務取扱管理者通信講座のすすめ

