旅行業務取扱管理者試験には「総合」「国内」「地域限定」の3種類があります。それぞれ科目構成・受験手数料・試験方式が異なり、取得後に担える業務範囲も変わります。本記事では2026年8月時点の最新情報をもとに総合と国内の違いを徹底比較し、どちらを受けるべきかの判断基準と科目ごとの学習ポイントを具体的に解説します。

旅行業務取扱管理者試験「総合」「国内」「地域限定」の基本的な違い
3種類の試験が存在する理由
旅行業務取扱管理者試験が3種類に分かれているのは、営業所が取り扱う旅行の範囲に応じて必要な資格が定められているためです。海外旅行を取り扱う営業所には「総合」の資格保持者を選任しなければなりません。拠点区域を超える本邦内の旅行のみを取り扱う営業所では「国内」の資格保持者を、拠点区域内の旅行のみを取り扱う営業所では「地域限定」の資格保持者を選任できます。基準になるのは登録種別ではなく営業所の取扱範囲であり、第1種旅行業者でも本邦内専業の営業所なら「国内」で足り、第2種・第3種旅行業者でも海外旅行を扱う営業所には「総合」が必要です(2026年8月時点・旅行業法第11条の2第6項)。
「地域限定」は特定地域内に限定した旅行手配を行う地域限定旅行業者向けの資格です。地域資源を活かした着地型観光や地域密着型の旅行業開業を目指す人が対象となります。試験の難易度・科目数・受験手数料はいずれも「地域限定」が最も低く設定されており、地域での旅行ビジネス参入を促進するための制度設計となっています。
取得後にできることの違い
「総合」の資格を取得すると、海外旅行・国内旅行のいずれを扱う営業所でも旅行業務取扱管理者として選任されることができます。第1種旅行業者の本支店すべての営業所で活用でき、旅行会社への就職・転職において最も汎用性の高い資格です。海外旅行を扱う旅行会社や訪日インバウンドに力を入れる旅行業者への就職では、採用要件・歓迎要件として総合が記載されるケースがあります。
「国内」の資格を取得すると、国内旅行のみを扱う営業所の旅行業務取扱管理者として選任されることができます。第2種・第3種旅行業者の営業所や、国内旅行を中心とした旅行業者で実務を担う場合に有効です。海外旅行も扱う営業所では「国内」の資格では管理者として選任できないため、業務範囲を広げることを検討している場合は「総合」の取得を視野に入れてください。
科目構成と出題範囲の比較
総合試験の4科目構成
総合旅行業務取扱管理者試験は「旅行業法及びこれに基づく命令」「旅行業約款、運送約款及び宿泊約款」「国内旅行実務」「海外旅行実務」の4科目で構成されています。各科目に合格基準点が設けられており、全科目で基準を上回ることが合格の条件です。特定の科目だけ突出して得点しても、他科目の基準を下回れば不合格となる仕組みです。
海外旅行実務は総合試験独自の科目で、国際航空運賃計算(IATA規則)・出入国手続・ビザ・検疫・関税・海外旅行地理などが出題範囲です。国際航空運賃計算は計算ステップが複数にわたり、独学での習得難易度が高い論点として知られています。総合試験が国内試験より難しいとされる主な理由は、この海外旅行実務科目の存在にあります。
国内試験の3科目構成
国内旅行業務取扱管理者試験は「旅行業法及びこれに基づく命令」「旅行業約款、運送約款及び宿泊約款」「国内旅行実務」の3科目で構成されています。総合試験と比べて海外旅行実務が含まれない点が最大の違いです。国内旅行実務はJR運賃・料金計算・国内観光地理・宿泊施設・国内旅客輸送に関する知識が出題の中心です。
旅行業法・旅行業約款の2科目は総合・国内で共通して出題されます。この2科目で積み上げた知識は、国内試験合格後に総合を目指す際にも継続して活かせます。総合へのステップアップを視野に入れる場合でも、まず共通科目を徹底的に固めておくことが効率的な学習の基盤になります。
3試験の科目・受験情報の比較表
| 項目 | 総合 | 国内 | 地域限定 |
|---|---|---|---|
| 科目数 | 4科目 | 3科目 | 旅行業法・約款・国内実務(一部) |
| 受験手数料 | 13,000円(非課税) | 8,000円(非課税) | 5,500円(収入印紙で納付) |
| システム利用料 | 660円(税込) | 660円(税込) | なし |
| 令和8年度試験日 | 10月25日(日)10:30 | 9月3日(木)~25日(金)から選択 | 9月27日(土)13:30~15:30 |
| 試験方式 | マークシート・指定会場 | CBT方式・テストセンター | 会場筆記 |
| 申込方法 | インターネット | インターネットのみ(書面不可) | 郵送(収入印紙貼付) |
| 令和7年度受験者数 | 4,519名 | 9,759名(全科目) | — |
| 令和7年度合格率 | 26.1% | 34.1%(全科目) | — |
| 実施機関 | 日本旅行業協会(JATA) | 全国旅行業協会(ANTA) | 観光庁 |
※2026年8月時点の情報です。最新の受験手数料・試験日程は各実施機関の公式受験案内でご確認ください。
合格率・受験者数から見た難易度比較
令和7年度の実績データ
令和7年度の試験実績を見ると、国内旅行業務取扱管理者試験の受験者数は9,759名(全科目)、合格者は3,330名(全科目)、合格率は34.1%でした(全国旅行業協会公表)。総合旅行業務取扱管理者試験は受験者数4,519名、合格者1,179名、合格率26.1%でした(日本旅行業協会公表)。国内試験の受験者数が総合より多いのは、国内のみを扱う旅行業者のニーズが広いことや、段階的に取得を目指す受験者が多いことが背景にあります。
合格率の差(約8ポイント)は主に科目数の違い、特に総合の海外旅行実務科目の難易度が反映されています。旅行業法・約款・国内実務の3科目は両試験で共通して出題されるため、この部分の難易度は大きく変わりません。総合試験ではさらに海外旅行実務で基準を超えることが必要なため、合格のハードルが一段上がります。
科目免除制度と合格率への影響
国内旅行業務取扱管理者試験の合格者が総合試験を受験する際、一定の条件のもとで科目免除が認められる制度があります。免除対象・条件・手続きの詳細は日本旅行業協会が発表する受験案内(毎年更新)で必ず確認してください。免除を活用して海外旅行実務1科目に集中した受験者が合格率の統計に含まれるため、総合の合格率は試験全体の条件を踏まえた上で参考にしてください。
最初から総合を受験する場合は4科目すべてに対応した準備が必要です。合格率26.1%という数字は、4科目すべてを受験した層と科目免除を利用した層が混在した結果であることを踏まえた上で参考にしてください。自分がどちらの条件で受験するかによって、必要な学習の総量は変わります。
どちらを受けるべきか—目的・状況別の判断基準
就職・転職を目的とする場合
海外旅行を扱う大手旅行会社・外資系旅行会社・OTA(オンライン旅行代理店)への就職・転職を目指す場合は、「総合」の取得を目標にすることをすすめます。海外旅行を扱う営業所では総合の管理者が必要なため、採用ニーズが高く就職活動での優位性が生まれます。求人票で「旅行業務取扱管理者(総合)保有者歓迎」と記載されているケースがあります。
国内旅行専門の旅行会社・バスツアー会社・地元密着型の旅行業者への就職を目指す場合は「国内」でも選任管理者の要件を満たせます。就職活動のスケジュールを逆算し、入社前に国内を取得してから就職後に総合を目指すという計画も現実的です。既に旅行業者に勤務しており管理者昇格・他営業所への異動を検討している場合は、科目免除制度を活用した受験が効率的です。
旅行業の開業・独立を目的とする場合
旅行会社の開業を考えている場合、どの登録区分で事業を行うかによって必要な資格が決まります。海外旅行を企画・販売する第1種旅行業者として登録する営業所には「総合」の選任管理者が必要です。国内旅行のみを扱う第2種・第3種旅行業者として登録する場合は「国内」の資格保持者を管理者に選任できます。
旅行業登録に必要な要件(登録区分・営業保証金・選任管理者の配置)は旅行業法と各都道府県の観光担当窓口で事前に確認してください。特に開業時点でどの旅行を扱うかによって、必要な試験区分が変わるため、事業計画と資格取得の計画を同時に進めることが重要です。
判断チェックリスト:どちらを受けるべきか
以下のチェックリストを参考に、自分の目的と状況に合った試験区分を選んでください。
- 海外旅行を扱う旅行会社への就職・転職を考えている → 総合を受験する
- 大手旅行会社・外資系旅行会社での勤務を目指している → 総合を受験する
- 国内旅行専門の旅行会社・バスツアー会社で働きたい → 国内から始めてもよい
- 海外旅行実務が初学で学習負担が大きいと感じる → 国内で合格してから総合を目指す
- 試験まで時間が少なく最短で資格を取りたい → 国内から受験することを検討する
- 地域限定の旅行業で開業を検討している → 地域限定試験の要件を確認する
- 既に国内試験に合格しており総合を目指している → 科目免除制度を受験案内で確認してから受験する
試験方式の違いから見る受験戦略
国内試験はCBT方式の特性を活かす
令和8年度の国内試験はCBT方式(テストセンターでのPC受験)で実施されます。全国47都道府県のテストセンターで、令和8年度の試験期間(9月3日(木)~25日(金))内の自分の都合に合った日時を選んで受験できます(2026年8月時点・全国旅行業協会公表)。試験日が固定されていないため、学習の進捗状況に合わせて受験日を調整できる点がCBT方式の大きなメリットです。
CBT方式では試験会場での操作確認が本番前に設けられているため、PC操作に不安がある場合でも落ち着いて対応できます。問題の解答順序を自由に変えられるため、得意科目から解答して時間配分を最適化する戦略が立てやすくなっています。受験日を自分でコントロールできる利点を活かし、模擬試験での正答率が安定してから本番の予約を入れる計画が効果的です。
総合試験はマークシートの特性を踏まえた準備を
総合試験は令和8年度10月25日(日)10:30に全国の指定会場でマークシート方式により実施されます(2026年8月時点・日本旅行業協会公表)。試験日が1日のみのため、当日のコンディション管理が合否に影響します。試験会場は主要都市に設置されますが、居住地域によっては移動が伴う場合があるため、事前に会場・交通手段を確認しておくことをすすめます。
マークシート方式では解答の記載ミス(マークのズレ・塗りつぶし不足)に注意が必要です。試験時間内に見直しを行い、マーク漏れがないか確認する習慣を演習から身につけておいてください。4科目を1日で受験するため、時間配分の感覚を直前期の模擬試験で体で覚えておくことが安定した得点につながります。
通信講座を活用した学習計画の立て方
総合・国内それぞれに適した通信講座の選び方
市販の通信講座の多くは国内・総合の両方に対応したカリキュラムを持っています。国内試験のみを受験する場合は3科目対応コース、総合試験を受験する場合は海外旅行実務を含む4科目対応コースを選んでください。一部の講座では国内合格後に海外旅行実務の教材を追加受講できるステップアップ型のプランを用意しており、費用を抑えながら段階的に学習できます。
通信講座を選ぶ際は映像講義・テキスト・問題集の3点セットが揃っているかを確認してください。旅行業法・約款は条文の言い回しを正確に理解する必要があるため、講師による解説映像が学習効率を高めます。模擬試験・添削サポートの有無も、独学では気づきにくい弱点を特定する上で重要な要素です。資料請求で各社のカリキュラム・サポート体制を比較してから申し込むことをすすめます。
科目ごとの学習の優先順位と時間配分
国内試験を受験する場合、旅行業法・旅行業約款・国内旅行実務の3科目を均等に進める計画が基本です。旅行業法・約款は暗記の精度が得点に直結するため、早い段階から繰り返し学習する時間を確保してください。国内旅行実務のJR運賃計算は演習量が必要な論点のため、テキスト学習と問題演習を並行して進めることが効果的です。
総合試験を受験する場合、海外旅行実務に早期から着手することが合格への鍵です。国際航空運賃計算は計算ステップが複数あり、反復練習なしでは本番で時間不足になることがあります。国内3科目の土台を固めながら海外旅行実務の学習を並走させ、直前期には模擬試験で全4科目の総仕上げを行う計画を立ててください。学習時間の目安は個人差が大きいため、通信講座の標準カリキュラムを参考にしながら自分のペースで調整してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 国内と総合のどちらを先に受けるべきですか?
海外旅行を扱う旅行会社への就職・転職を目指している場合は最初から総合を受験することをすすめます。学習負担を段階的に上げたい場合や試験の流れを先に体験したい場合は国内から始めるルートも有効です。目的・学習時間の確保状況・試験日程との兼ね合いで判断してください。
Q2. 国内試験に合格すると総合試験で科目が免除されますか?
国内試験合格者が総合試験を受験する際に科目免除が認められる制度があります。免除の対象科目・条件・手続きの詳細は日本旅行業協会が毎年発表する受験案内で必ず確認してください。制度の要件は変更される可能性があるため、最新の公式情報を参照してください。
Q3. 令和8年度の受験手数料はいくらですか?
令和8年度の受験手数料は総合13,000円(非課税)・国内8,000円(非課税)・地域限定5,500円(収入印紙で納付)です(2026年8月時点)。総合と国内にはシステム利用料660円(税込)が別途かかります。最新情報は各実施機関(総合=日本旅行業協会、国内=全国旅行業協会、地域限定=観光庁)の受験案内でご確認ください。
Q4. 国内試験はどこで受験できますか?
国内旅行業務取扱管理者試験はCBT方式で全国47都道府県のテストセンターにて受験できます(2026年8月時点・全国旅行業協会公表)。令和8年度の試験期間は9月3日(木)~25日(金)で、受験者が受験日時を選択して申し込みます。申込はインターネットのみで書面申請はできません。テストセンターの一覧は全国旅行業協会の公式サイトでご確認ください。
Q5. 合格率は毎年変わりますか?
合格率は年度によって変動します。令和7年度は国内34.1%(全科目・全国旅行業協会公表)、総合26.1%(日本旅行業協会公表)でした。受験者層・問題難易度・科目免除活用率によって毎年異なるため、過去数年分の傾向を参考にしつつ、最新の実施結果は各実施機関の公式サイトで確認してください。
Q6. 地域限定試験は国内・総合とどう違いますか?
地域限定旅行業務取扱管理者試験は特定地域内の旅行のみを手配する「地域限定旅行業」の登録に必要な資格を取得するための試験です。受験手数料5,500円(収入印紙で納付)・システム利用料なしで、令和8年度は9月27日(土)13:30~15:30に実施されます(2026年8月時点・観光庁公表)。地域密着型の着地型観光や旅行業開業を目指す人が主な対象です。
Q7. 通信講座は総合・国内どちらでも使えますか?
多くの通信講座は総合・国内の両方に対応したカリキュラムを提供しています。国内のみを受験する場合は3科目対応コース、総合を受験する場合は4科目対応コースを選んでください。国内合格後に総合へのステップアップを支援するプランを持つ講座もあるため、資料請求で各社の対応状況を事前に確認することをすすめます。
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