国内旅行業務取扱管理者試験に合格した方の次のステップとして、総合旅行業務取扱管理者試験への挑戦を検討している方は多いです。国内合格者には「旅行業法及びこれに基づく命令(法令科目)」と「国内旅行実務」の2科目が免除される制度があり、残り2科目に集中することで合格ラインを狙いやすくなります。本記事では、科目免除の仕組みと申請手順、免除にならない2科目の攻略法、受験手数料や試験日程の違いから通信講座の活用方法まで詳しく解説します。

国内合格後に総合試験を目指す3つのメリット
取り扱える旅行の範囲が大幅に広がる
旅行業法第11条の2第1項は、旅行業者等に対して営業所ごとに旅行業務取扱管理者を1人以上選任することを義務づけています。その選任基準は旅行業者の登録種別(第1種・第2種など)ではなく、その営業所が実際に取り扱う旅行の範囲によって決まります(同条第6項)。具体的には、海外を含む旅行を取り扱う営業所には総合旅行業務取扱管理者の選任が必要となります。
国内資格だけでは、拠点区域を超える本邦内旅行のみを扱う営業所の管理者にはなれますが、海外旅行を含む営業所の管理者として選任される資格は得られません。総合資格を取得することで、海外旅行を含むあらゆる旅行を取り扱う営業所の管理者候補となれます。旅行業界でのキャリアの幅が大きく広がることは、総合試験に挑戦する最大の理由の一つです。
なお、旅行業法に「業務独占」「名称独占」の規定は存在しません(条文全文で0件)。資格保有者が対外的に業務を独占する制度ではなく、旅行業者等(事業者)が営業所ごとに管理者を選任する義務を負う制度です(法第11条の2第1項・第79条第3号)。
科目免除で受験負担を大幅に軽減できる
総合試験は「旅行業法及びこれに基づく命令」「旅行業約款・運送約款・宿泊約款」「国内旅行実務」「海外旅行実務」の4科目で構成されています(旅行業法施行規則第12条第1項)。国内試験の合格者は、このうち「法令科目」と「国内旅行実務」の2科目が免除される制度があります(施行規則第20条第1号)。
受験する科目が4科目から2科目に絞られるため、学習に集中できる範囲が大幅に狭まります。国内試験の勉強で習得した法令知識や国内旅行実務の知識は、そのまま実務と試験の両面で活きる財産となります。この免除制度を最大限に活用することが、国内合格者が総合試験を効率よく攻略するための核心です。
旅行業界での採用・昇進に有利になる
旅行業界では、総合旅行業務取扱管理者資格を持つ人材を求める求人が多く見られます。特に海外旅行を扱う部門や外資系旅行会社では、総合資格の保有が採用条件や昇進要件として重視される傾向があります。国内合格をベースに総合まで取得することで、キャリアの選択肢が大きく広がります。
すでに旅行会社に在籍している方にとっては、総合管理者として選任されることで会社への貢献度が高まり、社内評価に直結することもあります。科目免除による受験負担の軽減と取得後の実務的な価値を合わせて考えると、国内合格者が総合試験に挑戦するメリットは非常に大きいといえます。
科目免除制度の仕組みと申請手順【申請なしでは適用されない】
国内合格者が総合試験で免除される2科目
旅行業法施行規則第20条第1号の規定により、国内旅行業務取扱管理者試験の合格者が総合旅行業務取扱管理者試験を受験する際には、次の2科目が免除されます。
- 旅行業法及びこれに基づく命令(法令科目)
- 国内旅行実務
一方、「旅行業約款・運送約款・宿泊約款」はどの試験区分においても、またいかなる免除資格を持っていても免除されません。国内・総合・地域限定のすべての試験で、約款科目は全受験者が受験する必須科目です。「国内合格者は約款も免除される」という誤解は多いですが、これは誤りです。約款は合格への山場の一つとして必ず対策してください。
科目免除の申請手順
科目免除は申請なしでは自動的に適用されません。旅行業法施行規則第13条第2項の規定により、受験申込の際に資格を証する書類を添付する必要があります。日本旅行業協会(JATA)の総合試験申込では、申込フォームに合格証書の番号を入力し、合格証書の画像をアップロードする手続きが求められます。
この手続きを怠ると、免除資格があっても全4科目を受験することになります。国内合格証書は試験申込が完了するまで大切に保管してください。申込期間が終了した後から免除申請を追加することはできないため、申込時点での確認が重要です。受験手続きの詳細な手順は、日本旅行業協会(JATA)が発行する当年度の受験案内で必ず確認してください。
地域限定合格者との免除範囲の違い
地域限定旅行業務取扱管理者試験の合格者が総合試験または国内試験を受験する場合は、「法令科目のみ」が免除されます(施行規則第20条第2号)。国内合格者(法令+国内旅行実務の2科目免除)とは免除の範囲が異なります。地域限定の合格証書では国内旅行実務の免除は受けられません。複数の資格証書を持つ場合、どの免除が適用されるかを申込前に受験案内で確認することをおすすめします。
国内試験と総合試験の制度比較
試験方式・試験日・受験手数料の比較
国内試験と総合試験は、試験方式・試験日・受験手数料のいずれも大きく異なります。下表で令和8年度の制度を確認してください(受験手数料は2026年8月時点の一次ソース確認値)。
| 項目 | 国内旅行業務取扱管理者試験 | 総合旅行業務取扱管理者試験 |
|---|---|---|
| 試験方式 | CBT方式(テストセンターでPC受験) | マークシート方式(指定会場) |
| 令和8年度試験日 | 9月3日(木)~25日(金)から受験者が日時を選択 | 10月25日(日)10:30 |
| 受験手数料 | 8,000円(非課税) | 13,000円(非課税) |
| システム利用料 | 660円(税込) | 660円(税込) |
| 試験科目(全科目) | 3科目 | 4科目 |
| 試験事務を行う機関 | 全国旅行業協会(ANTA) | 日本旅行業協会(JATA) |
| 令和7年度合格率 | 34.1%(全科目受験者) | 26.1% |
国内試験はCBT方式で全国47都道府県のテストセンターで受験できますが、「国内試験もマークシート方式」「国内試験は会場で受験する」という誤解が広まっています。CBT化されているのは国内試験のみで、総合試験と地域限定試験はマークシート方式(指定会場)です。令和8年度受験案内(全国旅行業協会・日本旅行業協会)に基づく情報です。
国内合格者の受験科目と合格基準
国内合格者が科目免除申請をした場合、総合試験で実際に受験する科目は「旅行業約款・運送約款・宿泊約款」と「海外旅行実務」の2科目です。科目数は3科目から受験していた国内試験より1科目少なくなりますが、海外旅行実務の出題範囲は国際航空運賃計算・出入国法規・時差・海外観光地理など非常に広く、科目数が少ない分の難易度は決して低くありません。残り2科目それぞれにしっかりした対策が必要です。
合格基準は総合試験の場合、各科目で一定の得点率以上を満たすことが条件となります。免除科目は合格判定の対象外となるため、受験する2科目のどちらかで基準を下回ると不合格となります。2科目ともに安定した得点を確保する学習計画が求められます。
免除にならない2科目の攻略ポイント
旅行業約款・運送約款・宿泊約款
約款科目は国内試験でも学んだ科目です。標準旅行業約款(募集型企画旅行・受注型企画旅行・手配旅行の各契約)、旅客鉄道(JR)の旅客営業規則、宿泊約款などは国内試験でも出題されており、国内受験で積み上げた知識をそのまま活用できます。取消料の計算条件・特別補償の支払要件・変更補償金の基準など、具体的な数字と条件を正確に覚えることが得点の核心です。
総合試験では、これらに加えて国際航空運送約款(国際線のバゲージルール・遅延・紛失・乗継に関する規定)が出題範囲に加わります。IATA(国際航空運送協会)の約款に基づく国際線特有のルールは国内試験には登場しないため、新たに習得が必要な領域です。国内試験で培った約款科目の学習姿勢を維持しながら、国際航空運送約款を上乗せする形で学習を進めると効率的です。
約款科目は暗記の比重が高い科目です。「数字と条件のセット」を正確に覚えることが鍵で、過去問を繰り返し解いて出題パターンをつかむことが合格への最短ルートになります。免除があっても油断せず、必ず十分な演習を重ねてください。
海外旅行実務
海外旅行実務は総合試験のみに存在する科目で、受験者が最も学習負荷を感じる科目です。出題範囲は「国際航空運賃計算」「出入国手続き(旅券・査証・検疫・税関)」「時差計算」「海外観光地理」「外国語(英語)」の大きく5つに分かれます。それぞれが独立した専門知識の領域であり、総合的な学習量は他の科目と比べて多くなります。
特に国際航空運賃計算は、NUC(中立換算運賃)・MPM(最大許容マイレージ)・TPM(区間マイレージ)・ROE(換算率)などの概念を理解したうえで実際に運賃を計算する問題が出題されます。計算ロジックが複雑なため、文章だけでの独習では理解しにくく、映像講義など視覚的な解説がある教材を活用すると理解の効率が大幅に上がります。
海外観光地理では、ヨーロッパ・アジア・アメリカ・オセアニア・中東・アフリカの主要な観光地・世界遺産・気候・交通経路などが問われます。範囲が広いため、過去問を参照して出題頻度の高いスポットから優先的に学習することが効率的です。時差計算は公式を正確に覚えれば確実に得点できる領域なので、早期に固めておくと精神的に余裕が生まれます。
合格を見据えた学習計画の立て方
国内合格直後から取り組む準備
国内試験の合格証書は、総合試験の科目免除申請に使用する重要な書類です。合格発表後は丁寧に保管してください。証書を紛失した場合は再交付制度がある場合もありますが、手続きに時間がかかることがあるため、予め安全な場所での保管をおすすめします。また、合格証書に記載された合格番号はJATAの申込フォームで入力が必要になるため、番号をメモしておくと申込時にスムーズです。
令和8年度の総合試験(10月25日)は国内試験の申込期間とほぼ重なるため、国内試験の結果を待ってから総合試験を申し込もうとすると申込期間を逃す可能性があります。令和9年度の受験を目指す場合は、今のうちに総合試験の出題範囲全体を確認し、海外旅行実務の中でどの領域が最も学習負荷になりそうかを把握しておくと、学習スタート時に迷わずに進められます。
国内合格から総合試験受験に向けた準備として、以下のチェックリストを確認してください。
- 国内合格証書を紛失しないよう安全な場所に保管した
- 合格証書に記載された合格番号をメモ・写真で記録しておいた
- 日本旅行業協会(JATA)のウェブサイトで翌年度の受験案内の公開を確認する予定を立てた
- 総合試験の4科目構成(法令・約款・国内旅行実務・海外旅行実務)を把握した
- 海外旅行実務の出題範囲(国際航空運賃計算・出入国法規・時差・海外地理)を一通り確認した
- 通信講座の資料請求や体験受講で教材の学習スタイルを確認した
通信講座でステップアップする方法
総合試験の学習、特に海外旅行実務の国際航空運賃計算については、映像講義による視覚的な解説が有効です。NUCやMPMの計算ロジックは文章のみでは理解しにくく、プロの講師が手順を追って解説する動画教材があると理解が深まります。通信講座各社のサンプル講義動画で「国際航空運賃計算の単元」がどのように解説されているかを比較検討してから申し込む方法もあります。
また、通信講座の中には「国内合格者向けコース」や「2科目特化コース」として受講料を抑えたプランを提供しているものもあります。フルコースと比較して費用が低くなる場合があるため、コース内容と価格を事前に確認することをおすすめします。科目免除を活かした集中学習に対応した教材構成かどうかも、講座選びの重要なポイントです。
通信講座を選ぶ際には、受講開始から修了までのサポート期間も確認しておきましょう。国内試験の合格発表から次の総合試験本番まで、約1年間の準備期間を想定した場合、長期サポートが付く講座を選ぶと途中で疑問点が生じても対応してもらいやすくなります。また、学習が停滞したときにモチベーションを保てるサポート体制があるかどうかも、通信講座選びの重要な観点です。
科目合格の有効期間と翌年度受験計画の注意点
科目合格は同一試験・翌年度のみ有効
旅行業法施行規則第20条第3号から第6号では、総合試験または国内試験において「国内旅行実務」「海外旅行実務」に科目合格した場合、次回の同じ試験でその科目が免除されます。ただし、この科目合格の持ち越しは「同じ試験(総合→総合、または国内→国内)」の翌年度のみ有効です。
重要な点として、国内試験の科目合格は総合試験に持ち越せません。たとえば、国内試験で「国内旅行実務」に科目合格しても、翌年度の総合試験ではその科目合格は免除として使用できません(JATA令和8年度受験要項)。国内試験と総合試験はそれぞれ独立した別々の試験であり、科目合格の扱いも独立しています。
令和9年度総合試験に向けたスタートガイド
総合試験は例年10月下旬に実施される傾向がありますが、正確な試験日は年度ごとに確定します。令和8年度は10月25日(日)でした。令和9年度の日程は確定次第、日本旅行業協会(JATA)の公式サイトおよび受験案内で発表されます。
学習開始から試験本番まで十分な準備期間を確保するため、受験を決めたら早めに学習をスタートすることが重要です。特に海外旅行実務は習得すべき内容が多く、余裕を持ったスケジュールで計画的に進めることをおすすめします。試験日程・申込期間・受験手数料などの最新情報は、必ず日本旅行業協会(JATA)の受験案内でご確認ください。
PR
2026年度試験 観光・旅行教科書 旅行業務取扱管理者【総合・国内】テキスト&問題集 第6版
総合・国内の両試験に対応した網羅的なテキスト。国内合格者が総合を目指す際に、海外旅行実務や約款科目を体系的に学ぶ一冊として最適です。
PR
ユーキャンの総合旅行業務取扱管理者 過去問題集 2026年版
総合試験に特化した過去問集。科目免除を申請して受験する2科目(約款・海外旅行実務)の出題傾向を効率よく把握し、合格ラインを安定させるための演習に役立ちます。

よくある質問(FAQ)
Q. 国内合格者が総合試験で免除されるのは何科目ですか?
「旅行業法及びこれに基づく命令(法令科目)」と「国内旅行実務」の2科目です(旅行業法施行規則第20条第1号)。約款科目(旅行業約款・運送約款・宿泊約款)はどの試験区分でも免除されず、全受験者が受験する必要があります。
Q. 科目免除は自動的に適用されますか?
自動では適用されません。受験申込の際に合格証書番号の入力と証書画像のアップロードなど、資格を証する書類の提出が必要です(旅行業法施行規則第13条第2項)。申請しなければ全4科目を受験することになります。申込完了後に追加申請はできないため、申込時点での手続きが重要です。
Q. 国内試験の科目合格を総合試験に持ち込めますか?
持ち込めません。国内試験で「国内旅行実務」に科目合格しても、翌年度の総合試験には免除として持ち越せません(JATA令和8年度受験要項)。国内合格者が総合試験で免除を受けられるのは、国内試験に「合格(全科目合格)」した場合のみです。
Q. 総合試験の試験方式は国内試験と同じCBT方式ですか?
異なります。令和8年度の国内試験はCBT方式(全国47都道府県のテストセンターで日程を選択)ですが、総合試験はマークシート方式で指定会場での受験です(令和8年度は10月25日(日)10:30)。持ち物や当日の流れも異なるため、事前に受験案内で確認が必要です。
Q. 国内から総合に挑戦する場合、最も力を入れるべき科目はどれですか?
「海外旅行実務」です。約款科目は国内試験でも学習しているため基礎知識を活かせますが、海外旅行実務は総合試験のみの科目で国際航空運賃計算・出入国法規・時差・海外観光地理など専門的な知識が幅広く問われます。計算ロジックの習得に時間がかかるため、早期から着手することをおすすめします。
Q. 受験手数料は国内試験と総合試験でいくら違いますか?
国内試験は8,000円(非課税)+システム利用料660円(合計8,660円)、総合試験は13,000円(非課税)+システム利用料660円(合計13,660円)です(2026年8月時点)。最新の金額は全国旅行業協会(ANTA・国内試験)および日本旅行業協会(JATA・総合試験)の受験案内でご確認ください。
Q. 国内合格者が総合試験を受ける場合の申込先はどこですか?
総合旅行業務取扱管理者試験の申込先は日本旅行業協会(JATA)です。国内試験を扱う全国旅行業協会(ANTA)とは異なります。両試験の実施は、観光庁長官の申請に基づき各旅行業協会が試験事務を行っています(旅行業法第69条第1項)。試験日程・申込期間・最新の受験手数料は必ず日本旅行業協会の受験案内でご確認ください。

