旅行業を営むためには、登録時に営業保証金の供託または日本旅行業協会への弁済業務保証金分担金の納付が義務付けられています。第三種旅行業者の最低営業保証金は300万円、弁済業務保証金分担金は60万円であり、弁済を受けられるのは旅行者に限られます。これらの数字と対象範囲を押さえておくことが得点につながります。本記事では、旅行業務取扱管理者試験の重要論点である営業保証金・弁済業務保証金制度の現行の仕組みを、条文の根拠とともに体系的に解説します。(2026年8月時点)
営業保証金・弁済業務保証金制度の基礎知識
営業保証金制度の目的と仕組み
旅行業の営業保証金制度は、旅行者の保護を目的として旅行業法第7条で定められた制度です。旅行会社が登録を受けて事業を開始する際、業務範囲や規模に応じた一定額の現金または有価証券を供託所へ預けることが義務付けられています。万が一旅行会社が倒産したり債務を履行できなくなった場合、旅行者はこの供託金から優先的に弁済を受けられる仕組みです。
供託先は主たる営業所の最寄りの供託所となり、現金以外に国債証券や地方債証券での代用も認められています。営業保証金は事業継続中、常時供託しておく必要があり、不足が生じた際は速やかに追加供託しなければなりません。供託の状況は、毎年の事業報告書を通じて行政庁へ報告される仕組みとなっています。
弁済業務保証金制度の意義
弁済業務保証金制度は、日本旅行業協会(JATA)や全国旅行業協会(ANTA)といった観光庁長官指定の旅行業協会が運営する代替制度です。協会の保証社員となった旅行会社は、営業保証金の5分の1に相当する分担金を協会へ納付することで、本来必要な営業保証金の供託義務を免除されます。
協会はその分担金をプールし、弁済業務保証金として一括で供託所に預ける形式を取ります。これにより、加盟旅行会社は資金繰りの負担を軽減できる一方、協会による業務指導や苦情処理のサポートも受けられるため、業界の健全な発展に寄与する仕組みとして広く活用されています。
旅行業法における両制度の位置付け
旅行業法は、旅行者の利益保護と取引の公正確保を目的に制定されており、営業保証金制度はその中核を担う仕組みです。旅行業者は登録制となっており、観光庁長官または都道府県知事の登録を受けない限り旅行業を営むことはできません。登録の有効期間は5年間で、更新時にも保証金の維持が確認されます。
弁済業務保証金制度は、こうした登録要件を満たすための代替手段として旅行業法第49条以下に規定されています。旅行業協会への加入は任意ですが、加入することで弁済業務保証金分担金による代替が可能となり、多くの中小旅行会社が利用しています。試験対策上は、両制度の関係を整理して理解することが重要です。
制度の要点と押さえどころ
営業保証金の額は取引額に応じて変わる
営業保証金の額は旅行業法第8条で「前事業年度における旅行者との取引の額に応じ、業務の範囲の別ごとに国土交通省令で定めるところにより算定した額」と定められており、具体的な金額は旅行業法施行規則の別表第一に置かれています。したがって「第三種は300万円」といった金額は、取引額が一定規模までの場合の額です。たとえば地域限定旅行業は取引額400万円未満なら15万円ですが、400万円以上5,000万円未満では100万円、5,000万円以上2億円未満では300万円と段階的に上がります。第三種旅行業は取引額2億円未満まで300万円で据え置かれ、2億円以上4億円未満で450万円となります。試験では最低額が問われることが多いものの、「取引額に応じて増える」という仕組み自体も出題対象です。(2026年8月時点)
保証社員になれば供託が免除される
旅行業協会に加入して保証社員となった旅行業者は、旅行業法第53条により営業保証金を供託する必要がなくなります。代わりに同法第49条に基づき弁済業務保証金分担金を協会へ納付します。分担金の額は法律で直接定められているわけではなく、同条が「弁済業務規約で定める額」と協会の規約に委ねている点に注意してください。実務上は営業保証金の5分の1に相当する額とされており、第一種で1,400万円、第二種で220万円、第三種で60万円、地域限定で3万円が目安です。供託額の5分の1で足りることが、協会加入の実質的なメリットになっています。(2026年8月時点)
弁済を受けられるのは旅行者に限られる
弁済業務保証金から弁済を受ける権利を持つのは、旅行業法第48条第1項により「保証社員又は当該保証社員を所属旅行業者とする旅行業者代理業者と旅行業務に関し取引をした旅行者」と定められています。つまり対象は旅行者であり、運送機関や宿泊機関といった取引先の事業者は含まれません。事業者間の未払い債権は商取引上の通常のリスクとして扱われ、この制度の保護対象外です。権利を行使するには同条第2項により旅行業協会の認証を受ける必要があり、弁済限度額は同条第5項によって、その保証社員が供託すべきこととなる営業保証金の額を下回ることはできないとされています。試験ではこの「対象は旅行者に限られる」という点と認証手続きの要否が頻出します。(2026年8月時点)
旅行業区分別の保証金額一覧
第一種・第二種旅行業の保証金額
第一種旅行業者は、海外を含むすべての旅行を取り扱える最上位の登録区分で、最低営業保証金は7,000万円と最も高額に設定されています。これは大規模な海外パッケージツアーを取り扱う際の旅行者保護を担保するためです。年間取扱額が増加すると、追加供託の義務も発生する仕組みとなっています。
第二種旅行業者は、国内の募集型企画旅行と、国内・海外の受注型企画旅行および手配旅行を取り扱える区分で、最低営業保証金は1,100万円です。海外の募集型企画旅行を扱えない点が第一種との大きな違いです。中堅旅行会社や地域の老舗旅行店が選択することの多い区分となっています。
第三種・地域限定旅行業の保証金額
第三種旅行業者は、改正後の最低営業保証金が300万円となり、国内の受注型企画旅行・手配旅行に加え、隣接市町村等の限定エリアで国内の募集型企画旅行も取り扱えます。地域密着型の小規模旅行会社が選択することが多い区分で、事業者数も多いカテゴリとなっています。
地域限定旅行業は、平成25年に新設された区分で、自社の営業所が所在する市町村と隣接する市町村等に限定された旅行のみ取り扱えます。最低営業保証金は15万円と最も低く、観光地での着地型旅行の振興を目的に創設されました。最低限の保証金で参入できる一方、取扱範囲は厳しく限定されています。
区分別保証金額の比較表
各区分の最低営業保証金額と弁済業務保証金分担金額、登録行政庁、業務範囲を一覧表に整理しました。試験対策ではこの数値を正確に暗記することが重要です。
| 旅行業区分 | 最低営業保証金 | 最低分担金 | 登録行政庁 | 主な業務範囲 |
|---|---|---|---|---|
| 第一種旅行業 | 7,000万円 | 1,400万円 | 観光庁長官 | 海外含む全旅行業務 |
| 第二種旅行業 | 1,100万円 | 220万円 | 都道府県知事 | 国内募集型企画旅行等 |
| 第三種旅行業 | 300万円 | 60万円 | 都道府県知事 | 国内手配・限定企画 |
| 地域限定旅行業 | 15万円 | 3万円 | 都道府県知事 | 近隣市町村限定 |
表に示したとおり、旅行業の区分により保証金額は大きく異なります。試験では、各区分の最低金額と取扱可能業務の組み合わせを問う問題が頻出するため、表の数字を正確に暗記することが合格への近道です。なお、年間取扱額が一定基準を超えると追加供託が必要となる点にも注意が必要です。
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弁済業務保証金制度の運用と還付手続き
日本旅行業協会(JATA)の役割
日本旅行業協会(JATA)は、観光庁長官が指定する旅行業協会のひとつで、主に第一種・第二種旅行業者を中心とした全国規模の業界団体です。保証社員となった旅行会社から分担金を受け取り、弁済業務保証金として供託所に一括供託する役割を担っています。
JATAはこのほかにも、苦情処理、研修事業、業界調査、海外旅行の安全対策など多岐にわたる業務を行っています。保証社員には業務改善のための指導や情報提供が提供され、業界の質的向上に貢献しています。試験では、JATAの法的位置付けと役割を整理して理解することが求められます。
全国旅行業協会(ANTA)との違い
全国旅行業協会(ANTA)は、JATAと並ぶ観光庁長官指定の旅行業協会で、主に第三種・第二種旅行業者など中小の旅行会社を中心に組織されています。基本的な機能はJATAと同様ですが、地域に根ざした旅行会社の支援に重点を置いている点が特徴です。
両協会とも弁済業務保証金制度を運営しており、保証社員となった旅行会社は分担金納付により営業保証金の供託を免除されます。旅行会社はいずれかの協会を選択して加入することが多く、二重加入は認められていません。協会別の特徴を理解しておくと試験対策に有利です。
還付請求の流れと注意点
旅行者が旅行会社の債務不履行等により還付を受けたい場合、まず旅行業協会へ還付請求の申出を行います。協会は事実関係を調査し、債権の存在と金額を認定したうえで、観光庁長官または都道府県知事に対し還付額を通知する手続きを取ります。
還付限度額は、当該旅行会社が弁済業務保証金分担金として納付した額に対応する弁済業務保証金の額が上限となります。請求から弁済までには数か月を要する場合があり、旅行者は必要書類(契約書、振込控、領収書等)を整えて速やかに請求することが重要です。改正により対象が旅行者に限定された点も併せて押さえておきましょう。
登録行政庁と登録手続き
観光庁長官と都道府県知事の役割分担
旅行業の登録は、旅行業法第3条により観光庁長官が行うと定められています。旅行業法の条文に「観光庁長官」という語は用いられていないため、試験で選択肢に登場した場合は注意が必要です。第一種旅行業の登録は観光庁長官が直接行い、海外を含む大規模な旅行業務を取り扱う事業者を管轄します。
一方、第二種・第三種・地域限定旅行業の登録は、主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事が行います。これは旅行業法第67条(都道府県が処理する事務)が「観光庁長官の権限に属する事務の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事が行うこととすることができる」と定めていることに基づく仕組みです。原則は観光庁長官の権限であり、その一部が政令によって都道府県知事に委ねられている、という構造で理解してください。(2026年8月時点)
登録申請に必要な書類と要件
登録申請には、登録申請書、定款または寄附行為の写し、登記事項証明書、貸借対照表、損益計算書、財産に関する調書、組織図、事業計画書、宣誓書、旅行業務取扱管理者の選任を証する書類など多数の書類が必要です。中でも財産要件は厳格に審査されます。
主たる営業所には旅行業務取扱管理者を1名以上選任することが義務付けられており、複数営業所を有する場合は各営業所ごとに選任が必要です。資格者の選任義務違反は登録取消事由となるため、有資格者の確保は事業継続の生命線となります。試験合格者の社会的価値はこの点からも高いと言えます。
登録後の継続義務と更新手続き
登録後は、毎事業年度終了後100日以内に事業報告書を提出する義務があります。事業報告書には営業実績、保証金の供託状況、事故発生状況などを記載し、行政庁による事後監督の基礎資料となります。報告書未提出は行政処分の対象となるため、確実な提出が求められます。
旅行業登録の有効期間は5年間で、更新申請は有効期間満了日の2か月前から30日前までに行う必要があります。更新時には新規登録と同様の審査が行われ、財産要件や有資格者の選任状況が確認されます。期限切れとなった場合は新規登録の手続きが必要となり、その間は旅行業を営めません。
試験での出題傾向と学習対策
過去問に見る頻出ポイント
旅行業務取扱管理者試験における営業保証金・弁済業務保証金関連の出題は、毎年1~3問程度の割合で出題される頻出論点です。特に各区分の最低保証金額、弁済業務保証金分担金との関係、還付請求の対象範囲など、数字や条文に基づく正確な知識が問われます。
選択肢形式の問題では、金額や対象範囲を1桁ずらしたり、区分を入れ替えたりする誤答パターンが多く見られます。たとえば「第三種旅行業の最低営業保証金は250万円である」という選択肢は誤りで、正しくは300万円です。最新の改正内容を確実に押さえておくことが正答への近道です。
効率的な数字の暗記方法
保証金額は語呂合わせや表で覚えると効率的です。第一種7,000万円、第二種1,100万円、第三種300万円、地域限定15万円という階段状の構造を視覚化し、弁済業務保証金分担金は常に営業保証金の5分の1という関係性で記憶すると、応用問題にも対応できます。
数字暗記の際は、関連する他の数字(年間取扱額の基準、追加供託額の計算式など)も一緒に整理しておくと知識の体系化が進みます。試験直前期には、保証金関連の数字を一覧表にまとめて反復学習する方法が有効です。学習時間としては合計200~300時間が目安とされています。
学習チェックリストと対策ポイント
営業保証金・弁済業務保証金制度の学習が一通り終わったら、以下のチェックリストで理解度を確認してください。すべての項目に自信を持って答えられる状態が、試験対策の到達目標となります。
- 営業保証金制度の目的と仕組みを説明できる
- 各区分の最低営業保証金額(7,000万/1,100万/300万/15万)を暗記している
- 弁済業務保証金分担金は営業保証金の5分の1という関係性を理解している
- 第三種旅行業の営業保証金300万円・分担金60万円を覚えている
- 還付請求の対象が旅行者に限定された改正点を説明できる
- 登録行政庁の区分(第一種=観光庁長官、その他=都道府県知事)を把握している
- JATAとANTAの役割と違いを整理している
- 事業報告書の提出期限(事業年度終了後100日以内)を覚えている
チェックリストの項目は、いずれも本試験で実際に問われる重要論点ばかりです。一つでも不安な項目があれば、テキストや過去問に戻って確認することをおすすめします。特に区分ごとの金額は、営業保証金と分担金(5分の1)をセットで整理しておくと、ひっかけ問題にも対応しやすくなります。
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試験概要と合格後のキャリア
旅行業務取扱管理者試験の基本情報
旅行業務取扱管理者試験には、総合・国内・地域限定の3種類があります。国内旅行業務取扱管理者試験の受験料は8,000円、総合旅行業務取扱管理者試験の受験料は13,000円です。試験は年1回実施され、国内は9月3日から9月25日までの期間内(CBT方式で受験者が日時を選択)、総合は10月25日が例年の試験日となっています。
※試験日は令和8年度の実績です(国内=9月3日から9月25日までの期間内でCBT方式・受験者が日時を選択/総合=10月25日/地域限定=9月27日)。日程は年度ごとに変わるため、最新の日程は公式の受験案内(国内=全国旅行業協会、総合=日本旅行業協会、地域限定=観光庁)でご確認ください。(2026年8月時点)
なお、受験手数料とは別にシステム利用料660円(税込)がかかります(総合・国内のみ。地域限定は収入印紙5,500円のみでシステム利用料はありません)。金額は改定される場合があるため、最新額は公式の受験案内(総合=日本旅行業協会、国内=全国旅行業協会、地域限定=観光庁)で必ずご確認ください。(2026年8月時点)
近年の合格率は、国内旅行業務取扱管理者試験が35~40%程度、総合旅行業務取扱管理者試験が26.1%で推移しています。総合の難易度が高い理由は、海外旅行実務(英語・地理・時差等)が試験科目に含まれるためです。受験資格に制限はなく、誰でも受験できる開かれた資格となっています。
※合格率は令和7年度の実績です(国内35.6%・受験10,329名/総合26.1%・受験4,519名/地域限定49.0%・受験643名)。年度により変動するため、最新の実績は各実施団体(国内=全国旅行業協会、総合=日本旅行業協会、地域限定=観光庁)の公表資料でご確認ください。(2026年8月時点)
合格後のキャリアと通信講座の活用
合格後のキャリアは多岐にわたり、旅行会社の店舗スタッフ、企画部門、添乗員(ツアコン)、訪日インバウンド事業、観光協会職員、地域DMO(観光地域づくり法人)など、観光関連のあらゆる職場で活躍の機会があります。資格手当を支給する企業も多く、キャリアアップに直結する国家資格として高く評価されています。
学習方法は独学・通学・通信講座から選べますが、働きながら合格を目指す方には通信講座の活用が現実的です。通信講座では、最新の改正情報を反映したテキスト、過去問解説、模擬試験、質問サポートなどが受けられ、効率的な学習が可能です。詳しい選び方は旅行業務取扱管理者通信講座のすすめを参照してください。

