旅行業務取扱管理者試験の法令科目では、旅行業法の条文知識に加えて、過去の主要改正がどのように現行制度に反映されているかを理解することが合格への近道だ。特に2018年(平成30年)1月4日に施行された大改正は試験制度そのものに影響を与えた転換点であり、令和8年度(2026年度)受験者は必ず押さえておく必要がある。本記事では、令和8年度試験に直結する法改正ポイントを体系的に整理し、試験直前チェックリストを用いて最終確認できる構成とした。

令和8年度試験で問われる法改正の全体像
法令科目の出題範囲と法改正の位置づけ
旅行業務取扱管理者試験の法令科目の出題範囲は、「旅行業法及びこれに基づく命令」(施行規則第12条第1項第1号)と定められている。「これに基づく命令」には旅行業法施行令・旅行業法施行規則が含まれており、これらに生じた改正は試験範囲に直接影響する。
試験に採用される法令の基準日は毎年の受験案内(日本旅行業協会・全国旅行業協会・観光庁)に明記されている。基準日以降に施行された改正は原則として出題対象外とされるため、最新の受験案内で必ず確認してから学習に入ることが重要だ。
令和8年度で特に意識すべき3種類の改正
令和8年度受験者が特に意識すべき改正は3種類に整理できる。①2018年1月4日施行の大改正(平成29年法律第50号)、②2025年6月1日施行の「拘禁刑」への文言変更、③旅行業者の書面交付義務のデジタル化(電子交付)に関する改正だ。
このうち①は試験制度・選任基準・登録制度を根本から変えた大改正であり、毎年出題が続いている。②は条文の文言自体が変わっており、古いテキストと現行条文が食い違うため注意が必要だ。いずれも現行の条文に照らして正確に理解しておくことが得点につながる。
2018年大改正(平成29年法律第50号)の概要と背景
改正の正式名称・施行日と改正動機
2018年の改正の正式名称は「通訳案内士法及び旅行業法の一部を改正する法律」(平成29年法律第50号)であり、2018年(平成30年)1月4日に施行された。旅行業法だけでなく通訳案内士法も同時に改正されており、インバウンド観光の急拡大に対応した法整備という文脈に位置づけられる。
改正の大きなきっかけのひとつは、旅行業者から委託を受けて宿泊施設や輸送機関の手配を担う事業者(いわゆるランドオペレーター)の管理問題だ。登録義務がなかったために質の担保が難しく、旅行サービス手配業の登録制度の新設へとつながった。
試験で繰り返し出題される主な改正内容
2018年大改正のうち試験で頻出となる改正事項を整理すると、以下のとおりだ。
| 改正事項 | 改正前 | 改正後(現行) | 根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 管理者試験の区分 | 総合・国内の2区分 | 総合・国内・地域限定の3区分 | 法第11条の3第2項 |
| 旅行サービス手配業 | 登録義務なし | 観光庁等への登録義務化 | 法第2条第6項 |
| 管理者選任基準 | 明文規定なし(実務上の解釈) | 取り扱う旅行の範囲で3区分を明文化 | 法第11条の2第6項 |
| 近接営業所の兼務 | 1名・1営業所に限定 | 近接する営業所で兼務可 | 法第11条の2第5項 |
| 定期研修の義務化 | 義務なし(任意) | 選任管理者に定期研修が義務化 | 法第11条の2第7項 |
| 登録拒否事由の追加 | 暴力団員等の明文規定なし | 暴力団員等を明文で追加 | 法第6条第1項第3号・第8号 |
これらの改正事項は単独で問われることも、「2018年改正で追加された制度はどれか」という形で複数の選択肢の組み合わせとして問われることもある。改正前の状態と改正後の状態を対比して整理しておくことが試験対策で有効だ。
地域限定旅行業務取扱管理者試験の創設
試験区分の変化と令和8年度の実施概要
2018年改正以前、旅行業務取扱管理者試験は「総合」と「国内」の2区分だった。改正により「地域限定」が加わり、3区分体制となった(法第11条の3第2項)。地域限定試験は地域に根ざした旅行業への参入を後押しするための制度として新設されたもので、試験科目の出題範囲は国内試験より絞られている。
令和8年度の地域限定旅行業務取扱管理者試験は2026年9月27日(日)13時30分~15時30分に実施され、試験方式は会場筆記だ(2026年8月時点)。受験手数料は5,500円(収入印紙で納付)であり、国内・総合試験で発生するシステム利用料660円は地域限定には存在しない。
地域限定合格者の科目免除と申請の注意点
地域限定旅行業務取扱管理者の合格者が総合試験または国内試験を受験する場合、「法令」科目の免除を受けられる(施行規則第20条第2号)。この免除は2018年改正で地域限定試験が創設されたことに伴って設けられたものだ。
ただし、免除を受けるには申請と資格を証する書類の添付が必要であり(施行規則第13条第2項)、申請しなければ全科目受験となる。また「約款」科目は地域限定合格者を含むすべての試験区分でいかなる場合も免除されない。この2点は試験で誤解を突いた設問として出題されやすい。
旅行サービス手配業(ランドオペレーター)登録制度の創設
旅行業との本質的な違いと登録義務の趣旨
旅行サービス手配業とは、旅行業者から委託を受けて宿泊施設・輸送機関などの手配を業として行う事業をいう(旅行業法第2条第6項)。旅行者と直接契約を結んで旅行を企画・販売する旅行業とは異なり、旅行業者が取引の相手方となるB2B的な業態だ。
2018年改正前は登録義務がなく法的な管理の枠外に置かれていたが、改正後は観光庁等への登録が義務化された。旅行業務管理者の選任や禁止行為(不当な勧誘・不正な手段による費用徴収など)に関して旅行業に準じた規制が設けられている。
試験で出題されやすい「混同しやすい論点」
旅行サービス手配業について試験で頻出なのは、旅行業との業務範囲の違いだ。旅行サービス手配業者は旅行者と直接取引する企画旅行・手配旅行の契約を結ぶことができず、これを行えば旅行業の無登録営業にあたる。この境界線を正確に理解することが選択肢の正誤を見分けるカギだ。
旅行業者代理業との違いも出題されやすい論点だ。旅行業者代理業は所属旅行業者のために旅行者と契約を結ぶ役割を担うのに対し、旅行サービス手配業者は委託を受けた手配のみを担い、旅行者との直接契約は行わない。この相違点は選択肢問題のひっかけとして使われやすい。
管理者選任基準の3区分化(法第11条の2第6項)
3区分の内容と根拠条文
2018年改正により、旅行業法第11条の2第6項に管理者選任基準の3区分が明文化された。区分の基準は「営業所が取り扱う旅行の範囲」であり、旅行業者の登録種別(第1種・第2種・第3種・地域限定)は選任基準に含まれない点が重要だ。
| 号 | その営業所が取り扱う旅行 | 選任できる管理者 |
|---|---|---|
| 第1号 | 拠点区域内の本邦内旅行のみ | 地域限定・国内・総合のいずれでも可 |
| 第2号 | 本邦内の旅行のみ(拠点区域を超える) | 国内または総合 |
| 第3号 | それ以外(海外旅行を含む) | 総合のみ |
「拠点区域」は施行規則第10条の5で定められており、「自らの営業所の存する市町村の区域、これに隣接する市町村の区域及び観光庁長官の定める区域」が該当する(施行規則第1条の3第1項第3号)。
「登録種別≠選任基準」が頻出の理由と注意点
一般的なつまずきとして、登録種別(第1種・第2種・第3種・地域限定)を基準に選任できる管理者を判断してしまうケースがある。しかし法第11条の2第6項に登録種別は一度も現れない。実際に問われるのはあくまで「その営業所が何を取り扱うか」であり、登録種別と選任基準は別次元の分類だ。
選任義務の名宛人は旅行業者等(事業者)であり(法第11条の2第1項)、選任義務を怠った場合の効果は、登録拒否(法第6条第1項第9号)・新たに選任するまでの契約締結禁止(法第11条の2第2項)・30万円以下の罰金(法第79条第3号・第4号)が事業者に科される。無資格者個人を処罰する規定は旅行業法に存在しない。
2025年6月施行「拘禁刑」改正の旅行業法への影響
「懲役」から「拘禁刑」への条文変更の内容
2025年6月1日、刑法等の一部改正によって刑事罰の「懲役」と「禁錮」が「拘禁刑」に一本化された。この改正に連動して旅行業法の罰則条文でも「懲役」の文言が「拘禁刑」に改められた(2026年8月時点の現行条文)。
旅行業法の登録拒否事由では、法第6条第1項第2号に「拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者」という要件が定められている。旧テキストや参考書に「懲役」と記載されたものが残っている場合は、現行条文で必ず確認し直す必要がある。
令和8年度試験での出題可能性と対策
刑事罰の文言変更は旅行業法の実質的な規制内容を変えるものではなく、要件の趣旨は従前と同じだ。しかし試験では「拘禁刑以上」という現行の表現を知っているかどうかが問われるため、出題の可能性を念頭に置いて準備しておくことが望ましい。
旅行業法の主な罰則は第74条(無登録営業等:1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金または併科)、第79条(選任義務違反等:30万円以下の罰金)などだ。罰則の全体は第74条から第83条(本則)に定められており、条番号とセットで整理しておくと試験での即答につながる。
法改正対策の学習ロードマップと試験直前チェックリスト
効率的な法改正対策の進め方
法改正対策で効率的なのは、まず現行制度を正確に把握したうえで、「改正前はどうだったか」を対比して覚える方法だ。2018年大改正は6項目以上を同時に変えているため、改正前の状態を一覧表にまとめて変化点をセットで記憶すると定着しやすい。
テキストと条文が食い違う場合は条文を優先する。観光庁の公式サイトやe-Gov法令検索(旅行業法 LawId: 327AC0100000239)では現行の条文全文を確認できる。試験本番では施行規則の条番号(第20条など)を直接問う設問も出るため、条番号とセットで覚えることも意識しよう。
試験直前 法改正チェックリスト
以下のチェックリストで、主要改正点の理解を最終確認しよう。
- 2018年改正の正式名称(通訳案内士法及び旅行業法の一部を改正する法律)と施行日(2018年1月4日)を言える
- 地域限定試験の創設根拠は法第11条の3第2項と答えられる
- 旅行サービス手配業の定義は法第2条第6項と答えられる
- 管理者選任基準の3区分は「登録種別ではなく、取り扱う旅行の範囲」が基準と説明できる
- 第1号(拠点区域内)・第2号(本邦内超)・第3号(海外含む)の対応管理者を即答できる
- 近接営業所の兼務根拠は法第11条の2第5項と答えられる
- 定期研修義務の根拠は法第11条の2第7項と答えられる
- 登録拒否事由への暴力団員等追加の根拠は法第6条第1項第3号・第8号と答えられる
- 拘禁刑改正の施行日(2025年6月1日)と変更点(懲役→拘禁刑)を説明できる
- 登録拒否事由の第2号は「拘禁刑以上・執行後5年未満」という現行表現で覚えた
- 地域限定合格者の免除科目は「法令のみ」で、約款は免除されないと答えられる
- 科目免除には申請と書類添付が必要で、申請なしでは全科目受験になることを確認した
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よくある質問(FAQ)
2018年改正以前の旧制度は令和8年度試験でも出題されますか?
旅行業法の試験は現行法(最新の施行済み条文)に基づき出題されます。2018年改正前の旧制度(総合・国内の2区分のみ、旅行サービス手配業の登録義務なしなど)は現行法では存在しないため、旧制度として何があったかを問う問題は一般的に出題されません。ただし、改正の経緯を踏まえた設問が出ることもあるため、改正前後の対比を理解しておくことは無駄にはなりません。
地域限定合格者が国内試験を受ける場合の免除科目はどれですか?
地域限定旅行業務取扱管理者の合格者が国内試験を受験する場合、「法令」科目のみが免除されます(施行規則第20条第2号)。「約款」は免除されず、「国内旅行実務」も免除の対象ではありません。免除を受けるには申請と資格を証する書類の添付が必要です(施行規則第13条第2項)。
「拘禁刑」という言葉は旅行業法の条文に登場しますか?
はい、登場します。2025年6月1日施行の刑法等の一部改正に連動して旅行業法の条文も改正され、旧来の「懲役」が「拘禁刑」に改められました(2026年8月時点)。登録拒否事由(法第6条第1項第2号)や罰則条文(第74条など)で「拘禁刑」という文言が使われています。
旅行サービス手配業者は旅行業者ではないのですか?
旅行サービス手配業者は旅行業者ではありません。旅行業は旅行者と直接契約を結んで旅行を企画・販売する事業であり、旅行業法第3条による登録が必要です。旅行サービス手配業者は旅行業者からの委託を受けて手配を担う事業者であり、別の登録制度の下に置かれています(法第2条第6項)。旅行者と直接契約する企画旅行・手配旅行を行った場合は旅行業の無登録営業にあたります。
管理者の選任基準で「拠点区域」とはどの範囲ですか?
拠点区域とは、旅行業法施行規則第10条の5・第1条の3第1項第3号で定められた区域であり、「自らの営業所の存する市町村の区域、これに隣接する市町村の区域及び観光庁長官の定める区域」が該当します。地域限定旅行業務取扱管理者は、この拠点区域内の本邦内旅行を取り扱う営業所に限り選任できます(法第11条の2第6項第1号)。
令和8年度の各試験の受験手数料を教えてください。
令和8年度の受験手数料は、総合試験が13,000円(非課税)+システム利用料660円(税込)、国内試験が8,000円(非課税)+システム利用料660円(税込)、地域限定試験が5,500円(収入印紙で納付。システム利用料なし)です(2026年8月時点。一次ソース:日本旅行業協会・全国旅行業協会・観光庁の各受験案内)。
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